環境省は11月12日、ブラジル・ベレンで開催中の国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)のサイドイベントにて、「ビジネスのためのグローバル循環プロトコル(GCP)」の初版を公表したと明かした。GCPは、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)が主導するもので、循環性に関する企業パフォーマンスの測定・開示フレームワークやセクター共通の循環性指標を含む基本的な枠組みとなる。
国際的な枠組みとなるGCP初版を初公開
環境省は11月11日、WBCSD、国連環境計画(UNEP)ワン・プラネットネットワークとともに、COP30のジャパン・パビリオンにおいて、GCP初版を発表した。
このイベントでは、GCPを世界市場に向けて初公開するとともに、多様なパネラーによるディスカッションを通じて、ビジネスにおける循環性推進と商機拡大に向けたGCPへの期待と今後の方向性を探った。今後もGCPの開発は継続し、内容の拡充やさらなる改善が行われる見込みだ。

GCPの概要(出所:環境省)
環境省はGCPの開発に協力
循環経済(サーキュラーエコノミー)は、ネット・ゼロやネイチャーポジティブの達成、汚染の削減などの環境問題の解決に不可欠であるとともに、資源リスク対策や経済安全保障のためにも重要な取り組みとなっている。
一方、資源循環については、TCFD(気候変動)やTNFD(生物多様性)のように、指標を含めた評価手法や企業の非財務情報開示の枠組みは国際的に確立されていない。
こうしたなか、民間企業団体であるWBCSDは、資源不足への対応と気候変動と生物多様性への取り組みを前進させるため、循環経済の主流化に向けた国際的な枠組みとしてGCPを開発した。
WBCSDは、これまでにも環境分野における企業の非財務情報開示の枠組み構築の経験を有し、2022年に、循環性に関する企業パフォーマンス・アカウンタビリティ(説明責任)の評価手法、企業レベルでの循環性の開示を含む枠組みであるGCPを開発することを公表した。
環境省は2024年にWBCSDとGCPの開発に協力する文書に署名し、GCPの開発への参画や日本企業の動員、国際的なイベントの共催などを通じて開発に協力してきた。

循環性に関する国際的なルール形成について(出所:環境省)
循環経済の国際ルール形成に向けた取り組み
日本政府は2023年の札幌G7気候・エネルギー・環境大臣会合で、循環経済移行と資源効率性向上に向けた企業向けの行動指針「循環経済及び資源効率性原則(CEREP)」の策定・採択を主導し、同年のG7広島サミットで承認された。原則の一つに、循環性指標に基づくバリューチェーンレベル指標のモニタリングと企業レベルでの情報開示が明記されている。
環境省は、GCPの開発へのインプットを行うため、内閣府が実施する「研究開発とSociety 5.0との橋渡しプログラム」(BRIDGE)に採択された「企業情報開示スキーム及びバリューチェーン循環性指標の国際標準化事業」において、資源循環に関する企業レベルの情報開示スキームやバリューチェーンの循環性指標等の開発を進めてきた。
引き続き、今後のGCPの改善などに向け、この事業を通じて資源循環分野の国際ルール形成を主導し、循環経済への移行、日本企業の国際競争力の維持・強化を図ることとしている。

企業情報開示スキーム及びバリューチェーン循環性指標の国際標準化事業(出所:環境省)
【参考】
環境省―「ビジネスのためのグローバル循環プロトコル(GCP)」の初版の公表について
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/16eeb0c5-40ff-469c-9abf-974fe4470799