外務省は10月11日、第2回「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」首脳会合の結果を報告した。同会合は、ASEAN関連首脳会議の機会を捉え、石破 茂首相がラオスで開催したもの。AZECに参加するパートナー11カ国間で、今後10年のためのアクションプランを含むAZEC首脳共同声明を採択した。
アジアの脱炭素に向け11カ国で協力、多様かつ現実的なエネルギー移行へ
AZECは、アジアの脱炭素に向けて協力する仕組みとして、日本政府が立ち上げた。日本企業のアジアにおける脱炭素ビジネスを支援し、日本企業がアジアの国々とともに脱炭素プロジェクトを実施することで、アジアの脱炭素・経済成長、さらに日本の成長につなげるのを狙いとしている。
日本のほか、オーストラリア、ブルネイ・ダルサラーム、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの11カ国がAZECパートナー国として参加する。
今回の会合では、AZECパートナー国間で、今後10年のためのアクションプランを含むAZEC首脳共同声明が採択された。
共同声明では、各国の状況に応じ、多様かつ現実的な道筋を通じたエネルギー移行と脱炭素化を進める地域戦略の実施を加速することで、AZECパートナー国が、世界の脱炭素化に貢献することなどを確認している。
アクションプランは、アジアの脱炭素化に資する活動を促進するルール形成を含む「AZECソリューション」の推進、温室効果ガス排出量の多いセクターの脱炭素化と排出削減を促進するためのイニシアティブ始動、具体的なプロジェクトの推進、の3つを柱としている。
ASEAN電力グリッドのビジョン実現へ
各国の状況に応じて、ペロブスカイト太陽電池のような次世代技術の加速化を含む再生可能エネルギーの導入、先進的な地熱技術、洋上風力、送電網の強化、より広範なASEAN電力グリッド(APG)のビジョンの実現を目指す。
そのために、国境を越えた電力取引プロジェクトを促すイニシアティブ、省エネルギーが「第一の燃料」であるとの認識、ヒートポンプを含む省エネルギー技術の展開と普及、水素、アンモニア、二酸化炭素の回収・利用・貯留(CCUS)を用いたゼロエミッション火力発電の推進、電化・インフラ整備と持続可能な燃料の利用促進を通じた運輸部門の脱炭素化、生産性向上と環境負荷の低減とを両立させる技術を通じた農林分野における排出削減・吸収・除去、工業団地におけるカーボンニュートラル/ネット・ゼロ排出の追求を含め、これらの目的を達成するためのプロジェクトにおける協力を模索することとしている。
また、各国の事情により、パリ協定の目標を達成するための幅広い取り組みの一つとして、天然ガスやLNGが移行燃料として果たす重要な役割と、原子力エネルギーの安全な利用にする協力についても言及している。
ラオスにおけるオファー型協力も検討
この会議で、石破首相は、世界の成長エンジンとしてのアジアの経済成長の確保が必須であり、人類共通の喫緊の課題である気候変動への対処に取り組むことが重要である旨言及した。また、脱炭素化、経済成長、エネルギー安全保障を同時に実現するため、産業構造やエネルギー構成などの各国の事情を踏まえた多様な道筋の下で、ネット・ゼロを達成するAZEC原則の重要性を改めて発信した。
さらに、石破首相は、2023年12月の第1回首脳会合以降、日本とAZECパートナー国との間で、約120件のMOUなど協力案件が結ばれていることを紹介したほか、将来的には域内のクリーンエネルギーの供給基地として、地域の脱炭素化に貢献するため、ラオスにおけるオファー型協力を検討していきたい旨述べた。
会合には、武藤 容治経済産業大臣も出席し、8月に実施した第2回AZEC閣僚会合で合意した、温室効果ガス排出量の多いセクターの脱炭素化と排出削減を促進するためのイニシアティブや、アジア・ゼロエミッションセンターの始動について、報告した。
AZECパートナー国の首脳からは、AZECを主導してきた日本の取り組みに対する支持が表明されたことを報告している。また、今後もAZEC原則に従って、再生可能エネルギーの推進、火力発電のゼロエミッション化、炭素貯留技術などを活用した排出削減対策に加え、技術革新、エネルギー移行に向けたファイナンスを促進し、地域としてGHG排出削減を進めていくことの重要性が表明された。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/86c7836c-97aa-4846-aa30-c3c299a38047