経済産業省は10月23日、世界のGX実現や気候関連情報開示の在り方、トランジション・ファイナンスの推進について議論する国際会議「GGX(Global GX)Finance Summit」の開催結果を公開した。
トランジション・ファイナンスにおいて官・民・金の相互連携を推進し、各枠組みで排出削減と経済成長を両立するための国際的なルールメイクをリードする議論を行う国際会議で、10月15日に開催した。
4つのテーマでセッション
当日は、(1)GX市場の拡大に向けて(2)GXスタートアップエコシステムの構築(3)トランジション・ファイナンスの今後の展望(4)移行計画の策定、の4つのテーマでセッションが行われた。それぞれのテーマについて国内外の有識者から提言を得たほか、パネルディスカッションでGXの実現に向けて今後必要な取り組みについて議論を行った。
GX実現に向けた投資競争が加速する中で、日本では、GX推進法により、今後10年間で官民あわせて150兆円超のGX投資を進め、産業競争力強化と経済成長の同時実現を目指している。同法に基づく「GX実現に向けた基本方針」では、具体的な取り組みとして、GX推進戦略の策定・実行、GX経済移行債の発行、成長志向型カーボンプライシングの導入、GX推進機構の設立などをあげている。
セッションの内容は以下の通り。
セッション1「GX市場の拡大に向けて」
産業の脱炭素化に不可欠なGX市場の拡大のためには、製造過程での温暖化ガスの削減努力が製品価値に反映されることが重要である。どのような指標を用いて可視化するかなどについて議論が行われた。
議論の中で、排出削減が困難なセクターにおける脱炭素投資の促進には、製造過程での排出削減の可視化と評価が大切で、その共通ルールや算定方法の確立が求められていることが提起された。また、金融機関、供給側、需要側をつなぐ国際的なイニシアティブが果たす役割やインセンティブベースの評価手法の重要性が議論された。
セッション2「GXスタートアップエコシステムの構築」
菊川 人吾経済産業省イノベーション・環境局長とモナハン在京米国大使館首席公使の基調講演では、日本のGX政策と米国のインフレ削減法が果たしている役割やGX分野のスタートアップへの期待が述べられた。
日米のスタートアップやベンチャーキャピタルを招いたパネルディスカッションでは、GX分野のスタートアップがグローバルな事業展開を視野に入れることや、政府として脱炭素技術の需要を喚起することの重要性など、持続可能なGXスタートアップエコシステムの構築に向けて必要な要素について議論が行われた。
セッション3「トランジション・ファイナンスの今後の展望」
宮園 雅敬年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)理事長と福留 朗裕全国銀行協会会長の基調講演では、GX経済移行債の発行やGX推進機構の設立をはじめとした施策とステークホルダーの連携への期待が示された。
その後のパネルディスカッションでは、次のことが確認された。
- 日本政府のクライメート・トランジション・ボンドを大きな契機として国際的な理解は以前よりも深まっている。
- トランジション性の評価にあたっては投資家自身がしっかりと判断することが求められると同時に政府の支援やコミットメントも重要である。
- 新興国においては1.5℃目標とのパスウェイのギャップを信頼性のある形で埋める方策が重要である。
- 信頼性の向上に向けては開示とレポーティングが必要になる。
セッション4「移行計画の策定」
伊藤 邦雄一橋大学教授・TCFDコンソーシアム会長が基調講演を行い、気候変動関連情報開示の重要性と官民連携への期待を語った。
パネルディスカッションでは、トランジション・ファイナンス調達の根幹となる企業の移行計画策定について、具体的な事例やTCFDコンソーシアムが策定した移行計画ガイダンスを取り上げつつ、個社の取り組みだけではなく業界大の取り組みや国レベルの移行計画策定も重要であることが確認された。また、投資家などとの対話を通じた改善のプロセスが有用であることや、情報開示の枠組みの規則の整理・統一や相互運用性の確保が重要になること点などが確認された。
開会挨拶で日本のGX政策やGFANZの活動を紹介
開会挨拶では、龍崎 孝嗣経済産業省GXグループ長、小堀 明善日本経済団体連合会副会長、メアリー・シャピロGFANZ(Glasgow Financial Alliance for Net Zero)副議長の3名が登壇した。
龍崎経済産業省GXグループ長は、GX2040の策定やトランジション・ファイナンス、アジア・ゼロエミッション共同体構想の推進など日本のGX政策について説明した。小堀日本経済団体連合会副会長は、情報開示やトランジション・ファイナンスの必要性に加え、削減貢献量を含めバリューチェーン全体で評価されることが重要とのメッセージを発信した。メアリー・シャピロGFANZ副議長からは、融機関のグローバル連合であるグラスゴー金融同盟(GFANZ)の活動内容の紹介とともに、情報開示や移行計画の策定の重要性についてコメントがあった。
また、重竹 尚基GX推進機構COOが閉会挨拶を行い、この会合が国際的なGXに貢献することへの期待を述べた。
なお、この会合は、GXの実現に向けてエネルギー・環境関連の国際会議を集中的に開催する「東京GXウィーク」(10月6日~10月15日)と、海外投資家などとのコミュニケーションの強化に向けて様々なイベントを開催する「Japan Weeks」(コア期間:9月30日~10月4日)の一環として実施された。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/01f0d91d-3e5b-4f53-a7ac-80502e332977