ベトナム・サトウキビ畑の農地管理改善でカーボンクレジット創出 出光ら実証

出光興産(東京都千代田区)は12月23日、ベトナムの砂糖メーカーであるLam Son Sugar Cane(Lasuco)、環境系スタートアップのサグリ(兵庫県丹波市)と、ベトナム・タインホア省において、サトウキビ畑由来のカーボンクレジット創出プロジェクトを共同で実施すると発表した。2026年の事業化へ向けて、2025年より実証を開始する。

衛星データを活用し土壌改良へ

サグリは、衛星データとAIを活用し、農業の課題を解決するための事業を展開しており、衛星データを基に農地の土壌状態や作物の生育状況を把握する「衛星解析技術」などを有している。

今回の実証では、Lasucoの契約農家が耕作する約500ha(東京ドーム約110個分)のサトウキビ畑を対象に、サグリの衛星解析技術によるモニタリングを活用し、土壌の改善・再生を図り環境保護と食糧生産を両立する環境再生型農業を実践する。

衛星解析技術の活用により、施肥の種類・量・タイミングなどの最適化と作業効率化を実現することができ、その結果、GHG削減に役立てることが期待される。具体的には、衛星解析技術を活用した化学肥料の削減と有機肥料の適正使用を通じて、GHGの1種である一酸化二窒素の削減と土壌炭素貯留量の増加を図り、GHG削減・カーボンクレジット登録の検証を行う。

この実証を通してGHGの削減効果が十分に確認された場合、世界最大手のカーボンクレジット認証機関であるVerraが定める農地管理改善方法論(VM0042)を使用したカーボンクレジット認証手続きを行う。2026年以降に事業化を図り、対象農地を約8,000ha(東京ドーム約1,700個分)へと拡大する予定。この方法論を適用するカーボンクレジットがVerraにより認証されれば、ベトナム国内では初めてのVM0042によるクレジット登録となる。

他地域、他作物、近隣他国での展開を視野に

ベトナム政府は2050年までにGHG排出ゼロを目指しており、主要産業の一つである農業分野での脱炭素化も求められている。このプロジェクトは、ベトナム農業の脱炭素化に貢献するとともに、ベトナム国内の他地域、他作物、また近隣他国におけるカーボンクレジット創出プロジェクトの展開を視野に入れて検討を進めていく。

プロジェクトにおける3社の役割

3社調印式の様子(出所:出光興産)

3社調印式の様子(出所:出光興産)

このプロジェクトにおいて、出光興産はプロジェクトへの投資、ベトナム政府機関との折衝を担う。Lasucoは、プロジェクトの導入、農家と協力した環境再生型農業の実施を担う。サグリは、プロジェクト管理、衛星データ解析技術の提供、カーボンクレジット申請手続きを担う。

出光興産は、カーボンクレジットを活用したカーボンニュートラル海上輸送や、燃料油にカーボンクレジットを付与した「出光カーボンオフセットfuel」の販売など、低炭素化・脱炭素化に取り組む顧客ニーズに応える取り組みを推進している。これらで対象となるカーボンクレジットは、Verra等のプロジェクトから選定、調達している。また、出光興産は、ベトナムで、ベトナム政府と日本政府の協力のもと、環境省の2020年「二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業のうち設備補助事業」を実施している。

Lasucoは、製糖と電力生産業、ハイテク農産物(高級野菜、花卉、果実)の生産等を手がけている。ベトナムの研究機関や、イスラエル、日本、韓国など協力プロジェクトにも取り組んでいる。また、環境への取り組みにも力を入れており、同社の施設では、環境制御を促進し、廃水を徹底的に処理するとともに、サトウキビのバガスと葉をバイオ炭に適用し、肥料と燃料市場に役立つ高品質のペレット燃料生産を行うための設備を整備している。

サグリは8月、キリンホールディングス(東京都中野区)、ヤマトホールディングス(同・中央区)、島津製作所(京都府京都市)らが運営する各ファンドなどを引受先とした第三者割当増資により、約10億円を調達したことを発表している。また、キリンホールディングスは12月13日、サグリが提供する炭素貯留量予測サービスの利用を開始したことを発表している。

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/d1a5cad1-0e6f-4a07-9969-de0ce54ac82d

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