竹中工務店(大阪府大阪市)は4月9日、建物の資材製造から解体に至るまでのライフサイクル全体を通じて排出されるCO2「ホールライフカーボン(建物生涯CO2)」を可視化し、評価につなげるプラットフォーム「Z-CARBO(ジカーボ)」を開発したと発表した。
同社の見積システムと連携し、AIが分析したデータを活用して、建物の設計から施工、竣工後までのCO2排出量を定量的に評価する体制を構築した。
スタートアップ・ゴーレムと共同開発
このプラットフォームは、AIを活用して「建物生涯CO2」排出量を算定するシステム「Gorlem CO2」を提供するスタートアップ・ゴーレム(東京都千代田区)と共同開発した。
今回共同開発したプラットフォームでは、竹中工務店の見積積算書から建築・設備などの項目・数量をAIが自動で判別し、項目別にCO2排出量を算出する。さらに整備したプロジェクトのデータベースに基づき、顧客へ脱炭素化の提案も可能だ。
なお、日本建築学会が定める「建物のLCA(Life Cycle Assessment)指針」や、各種団体が推進する算定ツールの計算手法に準拠している。

「Z-CARBO」のシステム概要(出所:竹中工務店)
企業の事業活動において、CO2排出量の削減は重要な経営課題となっており、建物から排出されるCO2は、ライフサイクル全体で評価することが求められている。
竹中工務店は、「Z-CARBO」とともに、業界トップクラスのZEB認証実績と脱炭素を実現する技術力を活かして、顧客の事業活動におけるCO2排出量の削減と情報開示を総合的にサポートしていく。
「Z-CARBO」による評価・運用の特長
「Z-CARBO」の特長として、AIによる自動計算での効率化、豊富なZEB実績データに基づく提案、計画から運用、解体に至るまで一貫した脱炭素サポートの3つをあげる。
1.AIによる自動計算で効率化を実現
AIが既存建物の見積データを学習し、計画建物の見積データとCO2排出原単位をAIが自動で連携する。これにより計画初期段階からCO2削減目標に合わせた建物計画の提案が可能となる。なお、CO2排出原単位とは、材料毎の数量あたりのCO2排出量を示し、このシステムでは業界内で整備したデータベースを利用している。

AIによるデータ紐づけイメージ(出所:竹中工務店)
2.豊富なZEB実績データに基づく提案が可能
竹中工務店は、BELS認証件数業界トップで業界トップクラスのZEB認証実績を活かした独自データベースを構築している。計画初期段階から「ホールライフカーボン」の予測ができ、実績に基づく具体的な削減方法の提案ができる。

データを活用した脱炭素提案のイメージ(出所:竹中工務店)
3.計画から運用、解体に至るまで一貫した脱炭素サポート体制
竹中工務店は、設計施工一貫方式の強みを活かしてデータの継続的な管理を行うことができる。設計段階から施工、運用、解体に至るまで、ライフサイクル全体でのCO2排出量の可視化と脱炭素化をサポートする。設計時から実運用のデータまでデジタルプラットフォームに収集・分析し、CO2をマネジメントする。

データを収集し情報提供するイメージ(出所:竹中工務店)
ゴーレムは清水建設、鹿島などとも連携、プラットフォームを構築
清水建設(東京都中央区)とゴーレムは2024年8月、土木工事において発生するCO2排出量を積算データから自動算出できるCO2排出量可視化プラットフォーム「Civil-CO2」を共同開発したことを発表している。
また、ゴーレムは2月、清水建設の見積積算システムとGorlem CO2が連携することで、精算見積データから自動算出できるCO2排出量算出プラットフォーム「SHIMZ Carbon Assessment Tool」の活用によりCO2排出量の算出時間3/4削減に成功した事例を公開している。
鹿島建設(東京都港区)は2024年8月、ゴーレムと共同で、AIを活用し建物のライフサイクル全体のCO2排出量を正確に算定するシステム「Carbon Foot Scope(カーボンフットスコープ)」を開発したと発表した。ゴーレムは1月、阪急阪神不動産(大阪府大阪市)とも、Gorlem CO2を活用し、阪急阪神不動産が手がける建物建設時のCO2排出量を自動で算定する取り組みなども開始している。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/b8a56f5b-e7cb-4d89-bb01-0505f6cb574b