農水省、農林水産分野GHG排出削減技術を海外展開へ 基本的考え方を提示

農林水産省は4月15日、日本が有する食料安全保障にも資する温室効果ガス(GHG)排出削減技術の海外展開を後押しするため、今後、「農林水産分野GHG排出削減技術海外展開パッケージ(通称:MIDORI∞INFINITY)」として取りまとめる政策パッケージの「基本的考え方」を公表した。

COP30で政策パッケージ「MIDORI∞INFINITY」を発信へ

農林業分野は世界の主要なGHGの排出源であるが、国際的に十分な対策が講じられていない。一方、日本は「みどりの食料システム戦略」「農林水産省地球温暖化対策計画」等に基づき気候変動緩和策を推進している。また、GHG排出削減技術を有する日本の農業・食品分野の民間企業・スタートアップ等は、海外展開に関心を持っている。

そこで、農水省は、11月の国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)を見据え、「農林水産分野GHG排出削減技術海外展開パッケージ」として取りまとめる政策パッケージの検討を進めてきた。

今回公表した「基本的考え方」は、この政策パッケージの指針となるもので、今後、民間事業者との意見交換等を通じ具体化に取り組む。5月頃を目途に政策パッケージを完成させた後、COP30等の場で国内外に発信していく。

これにより、脱炭素投資の日本農業・食品分野への呼び込みや、気候変動ビジネスに取り組む日本農業・食品企業の市場拡大につなげる。また、日本のGHG排出削減技術の活用を通じて世界の食料安全保障、ひいては日本の食料安全保障の向上への貢献を目指す。

海外展開が可能な技術を選定・施策を取りまとめ

「基本的考え方」では、「農林水産省地球温暖化対策計画」(2025年4月15日改定)に掲載する日本のGHG排出削減技術のうち、海外展開が可能で食料安全保障に資する技術を選定し、それら技術の海外展開を促進する施策(二国間クレジット制度、技術・研究開発等)と、民間事業者が国内外で活用可能な支援策(他省庁、関係機関の事業を含む)をとりまとめている。

概要は以下の通り。

海外に展開可能なGHG排出削減に資する主な技術

GHG排出削減技術・取り組みとして、「水田メタン排出削減」「農地土壌の炭素貯留の拡大」「施肥に伴う一酸化二窒素(N2O)排出削減」「畜産由来のメタン・N2O排出削減」「森林減少・劣化由来のCO2排出削減(REED+)・森林吸収源の増大」に係る取り組みをあげている。森林減少・劣化の課題に対しては、適切な森林管理、代替生計手段の提供や植林を通じて森林由来のGHG排出削減や吸収を実現することができる。

また、GHG排出削減を支える基盤として、「測定・報告・検証(MRV)」と「環境負荷低減の取り組みの『見える化』」をあげている。MRVの例として、農水省は、海草・海藻藻場のCO2貯留量(ブルーカーボン)の算定手法を開発・公表している。「環境負荷低減の取り組みの『見える化』」では、生産段階のGHG削減貢献・生物多様性保全の度合いを星の数でラベル表示する取り組みを進めている。

(出所:農水省)

(出所:農林水産省)

技術の海外展開に利用可能なツール

技術の海外展開促進施策として、「二国間クレジット制度(JCM)枠組みの活用」「技術の海外展開のための環境整備」「国際協力枠組みの活用」をあげている。

また、民間事業者が国内外で活用できる支援策として、みどりの食料システム戦略実現技術開発・社 会実装促進事業(農林水産省)、グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(経済産業省)、脱炭素化支援機構(JICN)による投融資などをあげている。

(出所:農水省)

(出所:農林水産省)

「農林水産省地球温暖化対策計画」、4月15日に改定

政府は、世界全体での1.5℃目標と2050年ネット・ゼロの実現に向けた直線的な経路と整合的で野心的な目標として、2035年度、2040年度に、GHGを2013年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指し、「地球温暖化対策計画」を改定(2025年2月18日閣議決定)した。

農水省は、こうした取り組みに加え、4月11日に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」や「みどりの食料システム戦略」等を踏まえ、4月15日に「農林水産省地球温暖化対策計画」を改定した。

この改定では、2040年度に向けて、既存の技術を最大限活用し、取り組みの拡大・普及を加速化させることを狙いとし、新たに畜産分野の削減目標、ブルーカーボンの吸収量目標、各分野における2040年度までの目標等を設定するとともに、森林吸収量算定方法の国際基準への切替え等を行った。

(出所:農水省)

(出所:農林水産省)

【参考】
農林水産省-「農林水産分野GHG排出削減技術海外展開パッケージ 基本的考え方」の公表について
農林水産省-「農林水産省地球温暖化対策計画」の改定について

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/66fd641a-7d32-41a1-bc5a-ade83ed160db

最新情報

最新情報
関連用語
関連動画
  1. グリーンカーボン、カンボジアで水田由来カーボンクレジット創出へ

  2. 恵那電力、カーボンオフセット「栗きんとん」開発 4万個で1tのCO2相殺

  3. カーボンニュートラルの必要性高まるも、実践者はわずか2割 電通最新調査

  4. SINGEI プロジェクトがスペインの養豚部門に炭素クレジットをもたらす

  5. 日本館排出のCO2からメタン製造 大阪ガスが万博会場で実証

  6. 阪神タイガース、夏の9試合をカーボン・オフセット 200tのCO2削減

  7. 未来へ挑戦する次世代コンビニ 万博会場に2店舗 セブン‐イレブン

  8. 日本製鉄、高炉水素還元でCO2削減43%達成 自社が持つ世界最高水準更新

  9. 再エネ導入により循環経済と脱炭素化を同時に実現へ 日立の新事業が本格始動

  10. KenGen、ケニアの炭素市場枠組みの開発を主導するよう任命

  11. 住友商事 再エネ分野に1.5兆円規模の投資計画

  12. DAC活用しCO2をコンクリに固定、J-クレジット創出へ バイウィルら

  1. 京都議定書|用語集・意味

  2. 持続可能な開発 (Sustainable Development)|用語集・意味

  3. 【脱炭素】ディズニーも施策を加速中

  4. 財務省は14日、脱炭素社会への移行を目的とした新たな国債「GX経済移行債」の入札を実施しました。政府による「移行債」の発行は世界で初めてです。

  5. “現代のゴールドラッシュ”とも言われる動きを取材しました。また、日本では、空気中の二酸化炭素を取り除く技術の開発が始まっています。

  6. 大阪ガス脱炭素社会の実現へ 研究拠点を大阪に開設 二酸化炭素の年間排出量1000万トン削減目標

  7. カーボンレジストリ (Carbon Registry)|用語集・意味

  8. 【超入門】世界の一流企業が本気で買い求める「カーボンクレジット」って何?(Apple/ディズニー/マイクロソフト/脱炭素/気候変動)

  9. 植林とは|用語集・意味

  10. カーボンニュートラルとは|用語集・意味

  11. ボランタリー市場(Voluntary Carbon Market, VCM)|用語集・意味

  12. トレーディングプラットフォーム (Trading Platform)|用語集・意味

  1. 削減プロジェクト (Reduction Project)|用語集・意味

  2. 脱炭素に向けて、二酸化炭素の排出量を売買できる「カーボン・クレジット市場」が11日、開設されました。

  3. 温室効果ガスとは|用語集・意味

  4. カーボンニュートラルとは|用語集・意味

  5. 炭素証書 (Carbon Certificate)|用語集・意味

  6. REDD+(Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation)|用語集・意味

  7. 再生可能エネルギー証書 (Renewable Energy Certificate, REC)|用語集・意味

  8. カーボンプライシング (Carbon Pricing)|用語集・意味

  9. 炭素市場インフラ (Carbon Market Infrastructure)|用語集・意味

  10. カーボンニュートラル (Carbon Neutral)|用語集・意味

  11. ボランタリー市場(Voluntary Carbon Market, VCM)|用語集・意味

  12. 大阪ガス脱炭素社会の実現へ 研究拠点を大阪に開設 二酸化炭素の年間排出量1000万トン削減目標