東京都は5月1日、東京電力ホールディングス(東京電力HD/東京都千代田区)に対して、安定的な電力供給の確保、再生可能エネルギーの活用促進に向けた働きかけとして、株主提案を行ったと発表した。
東京電力HDの定款に、「電力価格の高騰抑制と安定供給の確保」についての新たな章を新設し、「電力価格の高騰抑制」と「電力需給の安定化」に向けて、最大限に努める取り組みを記した条文を追加することを提案している。
電力価格の高騰抑制に向けて
電力価格の高騰抑制に向けて、定款に第7章を新設し、第40条を追加することを求めた。

東京電力HDへの株主第1号議案(出所:東京都)
提案内容と提案理由は以下の通り。
(1)多様なコスト縮減を含めた不断の経営改革
電力エネルギーは国民生活と事業活動の基盤であり、日々利用する電気の安定供給を行うとともに、その価格の上昇を抑える努力は不可欠である。そのため、燃料価格の上昇などが電気料金に及ぼす影響を最小限に抑え、様々なコストの縮減を含めた不断の経営改革を引き続き進めていく必要がある。
(2)DXの活用による電力供給コスト低減
デジタル技術を導入して業務プロセスを効率化することで、電力供給にかかるコスト低減を図っていく必要がある。
(3)利用者負担軽減の促進
利用者負担の軽減に向け、住民や事業者などに対し、日頃から電力需給の状況を分かりやすく開示するとともに、省エネ・節電行動に、つながる情報発信や多様なメニューを提供することなどにより、省エネや効率的な電気の使用をさらに促進すべきである。
電力需給の安定化に向けて
また、電力需要の安定化に向けて、新設を提案した第7章に第41条を追加することを求めた。

東京電力HDへの株主第2号議案(出所:東京都)
第41条として提案した内容と提案理由は次の通り。
(1)迅速かつ経済的な再エネの導入拡大
電力需給の安定化に向けては、化石燃料への依存から脱却し、エネルギー安全保障の確立と脱炭素化を両立させることが重要であるため、太陽光や洋上風力など再エネ発電の導入拡大を最大限進めていく必要がある。
(2)再エネ電力の出力制御抑制
今後の再エネの電源と利用の最大化に向け、供給面の対策として、再エネの優先接続と優先給電による系統利用を関係機関などと連携し、徹底する必要がある。また、需要面においては、デマンドレスポンスなどにより住民や事業者などに対する供給に合わせた需要シフトの促進が必須である。
(3)国と連携した系統整備
データセンターなどにより今後大幅な電力需要が見込まれている。こうした中、発電した再エネを無駄なく最大限利用できるよう、国と連携し、地域間連系線や都内の電力系統、島嶼部をはじめ東京エリアの再エネポテンシャルに対応可能な系統の増強等を早期に進めなければならない。
(4)無電柱化の推進
都市防災機能の強化に向けた無電柱化をさらに加速させて進める必要がある。
あらゆる機会を通じて東京電力HDに働きかけ
東京都は、これまでも東京電力HDに対して、同様の定款一部変更について株主提案を実施している。2022年5月には、ウクライナ・ロシア情勢の影響により、電力需給が厳しいとされる夏に向けて株主提案を行っている。
今回は、2024年の提案をベースに、電力価格の高騰抑制に向けた取り組みとして「DXの活用による電力供給コストの低減」が、電力需給の安定化に向けた取り組みとして、都市防災機能の強化に向けた無電柱化の推進」が追加されている。
東京都は、各種エネルギー価格の高騰による経済への影響や、データセンターの新設などに伴う大幅な電力需要の増加など、エネルギー安定供給をとりまく課題に対処していくためには、化石燃料への依存から脱却し、エネルギー安全保障の確立と脱炭素化を両立させる取り組みを進めることが極めて重要だと考えている。
そこで、東京都は、事業所における省エネ対策・エネルギーマネジメントの推進、再エネの導入など、ゼロエミッション東京の実現に向けた取り組みを加速させている。一方、電力の価格や需給の問題は、都民・事業者の生活・業務に直結する。そのため、脱炭素化の視点も踏まえつつ、価格の高騰を抑制するとともに、電力の安定供給の確保していくため、あらゆる機会を通じて、東京電力HDに対して働きかけていく必要があるとして、株主提案を行っている。
【参考】
東京都-東京電力ホールディングス株式会社へ株主提案
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/d58d9156-5edc-4519-a51b-582b94c7b95d