環境省・外務省・経済産業省は5月28日、日本とタンザニアが二国間クレジット制度(JCM)の構築に合意したと発表した。日本政府は2025年を目途にJCMパートナー国を30カ国まで増やすことを目指し関係国と協議を進めてきており、タンザニアは30カ国目のパートナー国となった。
タンザニア国内でのGHG削減へ貢献
今後JCMを通じて、タンザニア国内での温室効果ガス(GHG)の排出削減などに関する事業を実施し、両国のNDC(国が決定する貢献)の達成に貢献していく。また、パリ協定第6条の市場メカニズムとしてJCMを実施し、地球規模での温室効果ガス排出削減・吸収、持続可能な開発を促進することにより、世界の脱炭素化に向けた取り組みに貢献していく。
同合意は、同日、東京において、浅尾 慶一郎環境大臣とハマド・マサウニ・タンザニア副大統領府付国務大臣との間で、JCMに関する協力覚書の署名が行われた。覚書には、三上 陽一駐タンザニア特命全権大使が連署している。
協力覚書の概要
日本とタンザニアで交わした協力覚書の概要は、以下のとおり。
- パリ協定の2度目標と1.5度努力目標を追求し、気候変動への対処における二国間協力を強化するため、日本政府とタンザニア政府はJCMを創設する。
- 両政府は、JCMを実施するために、それぞれの政府の代表者から構成される合同委員会を設置する。この合同委員会は、プロジェクトサイクルの手続、方法論、プロジェクト設計書、モニタリング、第三者機関の指定、妥当性の確認と検証、JCMに関連するその他の事項に関し、JCMの実施に必要な規則とガイドラインを策定する。
- 両政府は、パリ協定6条2で言及される協力的な取り組みに関する指針に適合して、JCMの下での排出削減・吸収から発行されるJCMクレジットの一部を、国際的に移転される緩和成果として、日本のNDCの達成に利用できること、また、そのJCMクレジットの残余がタンザニアのNDCの達成に寄与することができることを相互に確認する。
- 両政府は、JCMの透明性と環境十全性を確保し、JCMを簡素かつ実用的なものに維持する。
- 日本政府は、JCM実施のためにタンザニア政府によるJCMの運営に必要となる技術的なかつ能力向上のための支援を促進する。
地球温暖化対策計画でJCMの目標などを明示
JCMは、途上国等への優れた脱炭素技術等の普及や対策実施を通じ、実現したGHG排出削減・吸収への日本の貢献を定量的に評価するとともに、日本のNDCの達成に活用する仕組みをいう。NDCは、パリ協定において、すべての締約国が5年毎に提出・更新する義務を負う温室効果ガスの排出削減目標をいう。
2025年2月に閣議決定された地球温暖化対策計画で、グローバルサウス諸国などにおいて、JCMを構築・実施し、このような取り組みを通じ、官民連携で2030年度までの累積で、1億t-CO2程度、2040年度までの累積で、2億t-CO2程度の国際的な排出削減・吸収量の確保する目標が掲げられている。
また、JCMを活用した緩和対策促進に向けて、第1に、プロジェクト開発ソーシングの領域・規模・ルートなどの拡大、第2に、担い手となる政府関係者・事業者などの能力向上、第3に、事業運営の効率性の向上や必要な体制・インフラの整備に取り組むこととしている。
第1の分野・領域の拡大では、制度開始以来多数の案件を稼働させている省エネルギー・再生可能エネルギー・廃棄物分野に加え、農業・泥炭地管理などの非エネルギー分野の排出削減、CCS、さらに、削減のみならず温室効果ガス除去など幅広い分野・領域へと拡大を図るとともに、特に、削減ポテンシャルの大きい案件の発掘・形成に優先的に取り組む方針が示されている。そのため、政府資金によるプロジェクト支援と併せて、民間資金を中心とするJCMプロジェクトについても拡大・加速させることとしている。
第3の体制・インフラの整備では、具体的な取り組みとして、事務のワンストップ化でJCMを促進するため、改正地球温暖化対策推進法に基づき、4月にJCMに関する指定実施機関「JCM Agency(JCMA)」を発足している。
JCMパートナーの30カ国
日本政府は、2011年からJCMに関する協議を行ってきており2025年を目途にパートナー国を30カ国まで増やすことを目指して関係国と協議を続けてきた。
JCMパートナー30カ国は以下の通り。
モンゴル国、バングラデシュ人民共和国、エチオピア連邦民主共和国、ケニア共和国、モルディブ共和国、ベトナム社会主義共和公、ラオス人民民主共和国、インドネシア共和国、コスタリカ共和国、パラオ共和国、カンボジア王国、メキシコ合衆国、サウジアラビア王国、チリ共和国、ミャンマー連邦共和国、タイ王国、フィリピン共和国、セネガル共和国、チュニジア共和国、アゼルバイジャン共和国、モルドバ共和国、ジョージア、スリランカ民主社会主義共和国、ウズベキスタン共和国、パプアニューギニア独立国、アラブ首長国連邦、キルギス共和国、カザフスタン共和国、ウクライナ、タンザニア連合共和国。
【参考】
環境省-二国間クレジット制度(JCM)の構築に関する日・タンザニア間の協力覚書に署名しました
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/2ad739b8-8840-47ce-bce1-bf5040b3a481