みずほ銀、トランジション・クレジット普及へ 脱石炭火力を促進

みずほ銀行(東京都千代田区)は2月20日、脱炭素に特化した投資プラットフォーム企業であるシンガポールのGenZeroと、アジアにおける石炭火力のクリーンエネルギーへの転換(トランジション)を推進するため、トランジション・クレジットの普及に向けて提携すると発表した。

戦略的パートナーシップの構築へ

GenZeroはシンガポール政府系ファンドTemasekが設立、トランジション・クレジットの開発・普及に取り組んでいる。みずほ銀行とGenZeroは、石炭火力発電所の早期廃止を促進するために開発中のトランジション・クレジットに関する戦略的パートナーシップの構築を目的とする覚書を締結した。

今回の提携により、両社の金融知見と地域に根差したネットワークなどを活用し、カーボンクレジットを用いた資金調達メカニズムの共同開発、トランジション・クレジットの制度設計への働きかけなどを行っていく。

みずほグループは、この提携を通して、カーボンクレジットを活用した新規のファイナンス手法の確立に向けて検討を加速させる。また、GenZeroと協働し、トランジション・クレジットの認知度向上に向けた日本企業への情報提供なども行っていく。

トランジション・クレジットとは

トランジション・クレジットとは、石炭火力発電所を早期廃止し、再生可能エネルギーなどによる代替電源に転換する際に、石炭火力発電所を継続稼働した場合のCO2排出量と廃止による削減量を定量評価、環境価値化(カーボンクレジットを創出)し、そのカーボンクレジットの販売益を早期廃止に伴う費用や、代替電源の確保に充当し、石炭火力の早期廃止を促す金融メカニズムをいう。

カーボンクレジットを組み込んだ金融手法を確立へ

みずほ銀行を擁する、みずほフィナンシャルグループ(東京都千代田区)は、2024年に環境・社会に配慮した投融資の取り組み方針を改定しており、既存の石炭火力発電所の早期廃止を可能にするための投融資などについては、脱炭素化の進展に向け信頼性・実効性などを検証した上で対応する可能性があるとしている。

みずほグループは、脱炭素化に向けた産業構造の転換を後押しするため、ファイナンス手法としてのカーボンクレジットの拡張性とメカニズムの高度化を模索していく。カーボンクレジットを組み込んだ大規模なファイナンス手法を確立することにより、脱炭素化が難しい領域のカーボンニュートラルの実現に大きく貢献できると考えている。

みずほ銀行 執行役員 サステナブルビジネス部長の角田 真一氏は、「アジアの脱炭素化には、基幹電源である石炭火力のトランジションが重要である。大きな課題は、そのトランジションコストを誰がどのように負担するかである。トランジション・クレジットは、脱炭素への取り組みを正当に評価し、そのコストを地域を超えて公平に負担することで、経済性 を毀損せずに石炭火力の早期退出を実現する仕組みである」と説明、この領域におけるトップランナーであるGenZeroと提携することは、みずほグループにとって大きな一歩だと述べている。

脱炭素化を加速に向けた投資プラットフォーム

GenZero CEOのFrederick Teo氏は、今回の提携について、「双方の専門知識と地域ネットワークを活かして、エネルギー転換の機会を共に探り、トランジション・クレジットの認知度を高め、石炭からクリーンエネルギーへの移行を支援する機会を創出していく」と述べている。

GenZeroは、世界規模での脱炭素化を加速することに焦点を当てた投資プラットフォーム企業である。インパクトのある拡張可能なソリューションへと育成できる可能性を持つ機会に投資することで、長期的に持続可能な財務リターンと共に、気候変動へのプラスの影響を実現することを目指している。

同社は、気候変動へのインパクトを推進するため、以下の3つの重点分野にわたり柔軟な投資アプローチを採用している。

(1)地域社会と生物多様性に恩恵をもたらしながら、自然の生態系を保護・回復する自然を基盤とするソリューション
(2)大規模な脱炭素化効果をもたらす技術を基盤とするソリューション
(3)カーボン市場の拡大を支援し、より広範な産業の脱炭素化を可能にするカーボンエコシステムをサポート

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/7dc77acf-2bca-4682-9dd1-3f517dc9e876

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