マングローブ植林でカーボンクレジット創出へ フィリピンでFS開始

自然由来のカーボンクレジット創出・販売を手がけるGreen Carbon(東京都港区)は12月3日、LPガス事業者のジクシス(同)と共同で、2国間クレジット制度(JCM)を活用し、フィリピンにおいて、カーボンクレジット創出の事業化調査(FS)を開始すると発表した。

過去の伐採や自然災害等で減少したマングローブ林に最大5000haの植林・保全活動を行い、カーボンクレジットの創出を目指す。

フィリピン大学と連携しJCMクレジット取得を検討

この事業は、フィリピン・ルソン島中部のケソン州を中心に実施する。フィリピン大学と連携し、土壌特性や樹種等の現地調査を行い、具体的な植林候補地や植林規模、適切な種の選定、生物多様性への影響等を評価するとともに、日本・フィリピン間のJCMクレジット取得の可能性も検討する。

Green Carbonは、ジクシスとフィリピンにおけるマングローブ植林によるカーボンクレジット創出を目指すとともに、このプロジェクト実施事例や実績を基に、東南アジアを中心に数十のプロジェクト組成も目指す。

ジクシスは、J-クレジットやボランタリークレジットを活用し、LPガスの生産から消費(燃焼)に至るバリューチェーン全体で発生すると見込まれる温室効果ガス(GHG)をオフセットした「カーボンニュートラルLPG」の普及・拡大を推進している。将来のGHG削減に向けた新たな枠組みや、顧客の環境対策ニーズに対応するため、カーボンクレジットの調達のみならず、新たな取り組みとして、Green Carbonと連携し、クレジット創出事業にも直接関与していく。

生物多様性の保護や自然防波堤としての役割にも期待

マングローブ由来のカーボンクレジットは、ブルーカーボン(海洋生態系によって取り込まれた炭素)とも呼ばれている。陸上の森林に比べて単位面積当たりでより多くの二酸化炭素を取り込み、炭素として蓄積することができるため、気候変動対策に大きく貢献する存在として注目されている。また気候変動対策以外の面でも、マングローブは生物多様性の保護や⽔質浄化機能、高波・津波を防ぐ自然防波堤としての役割など、多くの貢献が期待されている。

自然由来カーボンクレジットの創出・登録・販売をサポート

Green Carbonは、東南アジアを中心に、森林保全、水田、マングローブ植林、牛のゲップ削減、バイオ炭プロジェクトなど自然由来のカーボンクレジットの創出を幅広く展開している。フィリピンでは、フィリピン大学との共同研究や主要企業と連携し、水田、バイオ炭、マングローブ植林、植林活動のプロジェクトを組成している。

国内の水田においては、2023年度日本初・最大級(約6220t)で水田のJ-クレジットの認証を取得しており、2024年度は約4万ha(約10万t)に拡大していく予定。また、クレジット登録・申請・販売までをワンプラットフォームで完結するサービスを提供しており、クレジットの申請登録時にかかる手続きや書類作成などを簡略化し、クレジット創出者の工数を削減している。

Green Carbonは11月、芙蓉総合リース(東京都千代田区)と、森林・農業分野におけるネイチャーベースのカーボンクレジットを共同で創出することを目的に、資本業務したことを発表している。両社は9月に、フィリピンにおける水田由来のカーボンクレジット創出に向けた共同実証プロジェクトを開始したことも発表している。

「カーボンニュートラルLPG」の取り組みを推進

ジクシスは、国内外にてLPガスの製造・貯蔵・輸送・売買・輸出入を展開している。同社は、2022年4月より国際的な第三者認証機関が認定したボランタリー・カーボンクレジットを活用した「カーボンニュートラルLPG」の取り扱いを開始。さらに、2023年10月よりJ-クレジットを活用した「カーボンニュートラルLPG(J-クレジット)」の販売を開始した。またJ-クレジットの調達手段を多様化するため、J-クレジット・プロバイダーとの相対取引に加えて、2023年10月11日に開設されました東京証券取引所におけるカーボンクレジット市場の市場参加者としても登録している。

同社は、これまでに中島商事(滋賀県東近江市)を通じて國友熱工(同・竜王町)などにJ-クレジットを活用したカーボンニュートラルLPGの供給を開始している。

2国間クレジット制度(JCM)は、途上国等への優れた脱炭素技術等の普及や対策実施を通じ、実現した温室効果ガス排出削減・吸収への我が国の貢献を定量的に評価するとともに、日本のNDCの達成に活用する制度を指す。

J-クレジットは国内における省エネルギー機器の導入、再生可能エネルギーへの転換、森林管理等による温室効果ガスの吸収量や削減量を国が認証したクレジットで、自社が排出しているGHGとのオフセットや地球温暖化対策推進法等の報告にも利用することができる。

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/50a810a2-467c-4b15-9a0e-32f31e2d7f7d

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