太平洋セメント(東京都文京区)は5月13日、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みとして、低炭素型混合セメント「高炉セメントC種」の販売を開始すると発表した。
この高炉セメントC種を使用することによるCO2削減率は、対ポルトランドセメントで約65%、対高炉セメントB種で約40%。 首都圏・関東エリアでは9月より製造・販売を開始し、他の地域への供給・販売については、引き続き検討していく。
日鉄スラグ製品とデイ・シイで製造・出荷
今回販売を開始した高炉セメントC種は、日本製鉄グループで鉄鋼スラグ製品を製造・販売する日鉄スラグ製品(東京都中央区)の君津工場(千葉県君津市)と、太平洋セメントからセメント生産を受託するデイ・シイ(神奈川県川崎市)の川崎工場(同)を製造・出荷拠点する。

CO2排出量の比較(出所:太平洋セメント)
高炉セメントとは
高炉セメントは、最も広く使われているセメントであるポルトランドセメントに、製鉄の副産物である高炉スラグの微粉末を混合して製造される。
セメント製造工程において、高炉スラグ微粉末を混合することで、石灰石の焼成時に発生するCO2を削減することができる。高炉セメントは、高炉スラグ微粉末の混合量により、A種(5%を超え30%以下)、B種(30%を超え60%以下)、C種(30%を超え60%以下)の3種類に分類される。国内で販売されている高炉セメントの多くはB種である。
環境配慮型コンクリートの吸収量を算定・報告
日本政府は、毎年国内の温室効果ガスの排出・吸収量を算定し公表、また、国連に報告している。環境省は4月、2023年度の国内の温室効果ガス排出・吸収量が、CO2換算で前年度比4.2%減の約10億1700万tとなったと発表した。
2022年度は、世界で初めて、「製造時CO2固定型コンクリート」「バイオ炭使用型コンクリート」「CO2由来材料使用型コンクリート」の3類型(4種類)の環境配慮型コンクリートを対象とした吸収量(CO2固定量)を算定された。2023年度は製造時CO2固定型コンクリートとして、新たに太平洋セメントのCO2吸収・硬化セメント系材料「カーボフィクス®セメント」を使用したコンクリートが追加された。
2023年度における環境配慮型コンクリートの吸収量として、カーボフィクスセメントを使用したILブロックによるCO2固定量0.2t(施工面積25m3、ILブロック1344個)を含む合計121tと算定され、国連に報告されている。
同社のカーボフィクスセメントを使用したILブロックは、同社熊谷工場のキルン排ガスから分離・回収したCO2を使用し、太平洋プレコン(東京都新宿区)埼玉工場で炭酸化養生(コンクリートにCO2を強制的に吸収・反応、 硬化させる技術)したものだ。
環境配慮型コンクリートの取り組みが拡大
大成建設(東京都新宿区)、東海旅客鉄道(JR東海/愛知県名古屋市)、神奈川県相模原市は3月、新たな環境配慮コンクリートを共同開発し、道路用建材の試作品を作成したと発表した。大林組(東京都港区)は4月、太平洋マテリアル(同)と共同で、低炭素型の高性能セメント複合材料「ユニバーサルクリートGX」を開発したと発表した。また、鹿島建設(東京都港区)は大阪・関西万博会場にカーボンネガティブコンクリを活用した舗装ブロックを適用すると発表している。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/f256c6ae-d47c-4582-86f2-5bc6245881d9