政府は12月26日、第14回GX実行会議を開催し、2040年を見据えた新国家戦略「GX2040ビジョン」の案をとりまとめた。この中では、2040年に目指す産業構造や産業立地を示すとともに、自動車や航空、鉄鋼など産業別の投資方針を盛り込んだ。
ビジョンでは、産業構造や産業立地、政策の見直しなどに言及
「GX2040ビジョン」では、将来の見通しに対する不確実性が高まる中、GXに向けた投資の予見可能性を高めるため、より長期的な方向性を示すとともに、現実的かつ雇用に配慮した公正な移行を進めながら、アジアを中心に世界の脱炭素に貢献していくことを重要なテーマに位置付けている。
構成は、
- はじめに
- GX産業構造
- GX産業立地
- 現実的なトランジションの重要性と世界の脱炭素化への貢献
- GXを加速させるためのエネルギーをはじめとする個別分野の取り組み
- 成長志向型カーボンプライシング構想
- 公正な移行
- GXに関する政策の実行状況の進捗と見直しについて の全8パートとなる。
産業構造改革に向けては、スピード感のある商業化が図られていないことや、市場メカニズムのみではGX需要の顕在化が難しく不確実性が高いことを踏まえ、企業の成長投資を後押しする企業経営・資本市場の制度改善や大企業からの積極的なカーブアウト、GX産業につながる市場創造、中堅・中小企業のGX促進などを進める。
今後の産業構造の転換に合わせたGX産業立地政策では、脱炭素電力などのクリーンエネルギーの供給拠点には地域偏在性があることから、「エネルギー供給に合わせた需要の集積」という発想の下、GX産業への転換が求められるタイミングにおいて迅速かつ効率的に、新たな産業用地の整備と脱炭素電源の整備を推進し、今後の地方創生と経済成長につなげていく。
ペロブスカイトや原子力など脱炭素電源を最大限活用
個別分野では、徹底した省エネ、製造業の燃料転換などに加え、再エネか原子力かといった二項対立的な議論から脱却し、脱炭素電源を最大限活用する方針を示した。
再エネでは、ペロブスカイト太陽電池(2040年までに約20GWの導入目標) や浮体式を含む洋上風力(2040年までに30GW~45GWの案件形成目標)などに注力する。原子力については、安全性の確保を大前提に、再稼働加速や「廃炉を決定した事業者が有する原発サイト内」における次世代革新炉への建て替えを具体化するとしている。
主要産業の一つである次世代自動車に関しては、多様な選択肢の追求を基本方針とし、電動車の開発・性能向上や導入を促しつつ、クリーンエネルギー自動車や商用電動車、電動建機の導入を支援する。
このほか、ビジョンでは、欧米の情勢に基づく現実的なトランジションの必要性やアジアの視点も加えたルール形成および世界の脱炭素化への貢献に関する取り組みも盛り込まれる。
「30年間の日本経済の停滞を打破する契機とする」
GX実行会議の中で、石破首相は、「GXの取り組みは、脱炭素技術への投資を促進し、30年間の日本経済の停滞を打破する大きな好機になる」と述べた上で、「産業構造が変わることで、新産業が日本各地に誕生し集積する可能性がある」と期待感を示した。
同ビジョンは今後、パブリックコメントを経て、2024年度中の閣議決定を目指す。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/47834f21-e73c-405f-8739-b64f710893f4