三井不動産(東京都中央区)は9月29日、同社が開発した「東京ミッドタウン日比谷」における生物多様性の取り組みが、企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB/神奈川県横浜市)運営の「いきもの共生事業所認証(ABINC認証)」を取得したと発表した。また、「東京ミッドタウン六本木」のミッドタウン・ガーデンが環境省の「自然共生サイト」に認定された。
「経年優化」の街づくりを推進

「東京ミッドタウン日比谷」パークビューガーデン(出所:三井不動産)
同社は、東京ミッドダウン日比谷(東京都千代田区)にて、経年優化の街づくりに取り組んでおり、「ABINC認証」を取得した。
具体的な取り組みでは、ハード対策として、都心部にありながら約2000m2(緑化率約40%)の緑地を創出し、隣接する日比谷公園と同種の樹木を取り入れるとともに生きものに配慮した植栽計画を取り入れている。加えて地域全体の生物多様性の向上に寄与するため、巣箱、石積み蛇篭、エコスタックとバードバスを設置した。
ソフト対策では、2025年度より、東京都市大学 北村 亘准教授を「東京ミッドタウン日比谷 生物多様性アドバイザー」に迎え、定期的な実地調査、調査結果を踏まえた中長期的な生物多様性施策の検証・実装など、監修による生きもの共生施策のさらなる推進に取り組む。
さらに来街する人へ向けた新たな体験の提供するため、ハイラブル(東京都豊島区)の生きもの音声分析技術「KoeTurri」を活用した環境可視化システムの導入や、生きもの生息状況を館内サイネージにて発信している。さらに、地域・テナント・来街者を巻き込んだ観察・啓蒙イベントを2026年3月頃実施する予定。

来街した鳥を紹介する館内サイネージ(イメージ)(出所:三井不動産)
都心の街づくりで人も生き物も豊かに暮らせる場を提供
東京ミッドタウン六本木(東京都港区)における「ミッドタウン・ガーデン」は自然共生サイトに認定された。同エリアには、約1.38haの広大な緑地があり、クスノキやケヤキ、エノキなど旧防衛庁時代からの保存木が15mを超える高木となって林冠を形成し、多くの人々が集まり憩う場を提供する。

東京ミッドタウン「ミッドタウン・ガーデン」の樹木(出所:三井不動産)
このエリアの樹林や草地には220種を超す植物が生育。動物では鳥類26種、爬虫類3種、両生類1種、昆虫類40種が生息しており、ヒガシニホントカゲやニホンカナヘビ、ヤマトタマムシなどの東京都レッドリスト区部における絶滅危惧種が確認された。
「ミッドタウン・ガーデン」では、ガーデンに飛来する鳥たちを紹介する「THE BIRD handbook」をインフォメーションカウンターで配布するなど、訪れる人に自然との共生をより身近に感じてもらう工夫にも取り組んでいる。

飛来する鳥を紹介するハンドブック(出所:三井不動産)
街づくりにおける環境との共生を宣言
三井不動産は4月に、街づくりにおける環境との共生宣言「& EARTH for Nature」を策定し、豊かな「環境」を広げ、未来の世代へつなぐ街づくりを推進している。この宣言における重点課題として、「緑を守り育む」「水の魅力を生かす」「生態系を豊かにする」「地域の想いをつなぐ」「自然資源を循環させる」の5つを定め、今回の取り組みは、この重点課題の3つに貢献する。
生物多様性の取り組みを評価する「ABINC認証」と「自然共生サイト」
「ABINC(エイビンク)認証」は、生物多様性イニシアティブが作成したガイドラインなどを基準として、企業における生物多様性に配慮した緑地づくりや管理利用などの取り組みを評価・認証するもの。8月には第19回認証が実施され、9施設が認証された。
自然共生サイトは、「民間の取り組みなどによって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する制度。2025年度より「地域生物多様性増進法」に基づく法制度として運用が始まり、9月に同法に基づき、201カ所を自然共生サイトに初認定している。
【参考】
環境省―地域生物多様性増進法に基づく「自然共生サイト」の認定(令和7年度第1回)について
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/1e43e888-2433-422f-ac63-61a86dcec9ab