東芝(東京都港区)と東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS/神奈川県川崎市)は6月24日、年間150トンの一酸化炭素(CO)を生成できるCO2電解装置「C2One」のプロトタイプ機を開発したと発表した。工場などから排出されるCO2を電気分解してCOに変換。水素に頼ることなく、合成燃料や化学品など価値ある資源に再生する。
CO2を気体状態のままCOに直接電解
東芝は、人工光合成技術を用いて、常温常圧に近い条件下では水に溶けにくいCO2を気体状態のままCOに直接電解できる三相界面制御触媒技術を有する。2019年には世界最高水準の変換速度でCO2からCOを生成することに成功した。
一般的なCO2還元技術では、還元材料に大量の水素が必要な上、CO生成に850℃程度の高温条件が必要となるが、東芝のCO2電解技術は、100℃未満・低圧(0.2MPa)という低温・低圧条件での反応が可能。水素も不要で、より安全かつ低コストでCOを生成する。また、CO2電解装置の中核部品であるセルスタックは、東芝ESSが製造してきた純水素燃料電池システム向けスタックと構造が似ており、既存の製造技術と製造ラインの一部を活用できるという。
開発した「C2One」のプロトタイプ機は年間約250トンのCO2を処理できる。これは、SAF換算で、1BPD(年間150トンのCOを全量SAFに変換した場合、1日1バレル相当のSAFを生成)程度を製造できるCO量に相当する。
2024年11月からは、神奈川県川崎市の東芝ESS「浜川崎工場」でプロトタイプ機を用いた実証運転を開始し、CO2電解装置としての安全な動作に加え、CO生成や負荷変動が伴う運転への対応などを検証した。社会実装に向けて必要となるデータが得られたことから、東芝グループは今後、同規模の「C2One」の早期の社会実装を目指すとともに、さらなる大規模化を図る。
なお、この実証は、環境省が実施する「二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業(人工光合成技術を用いた電解による地域のCO2資源化検討事業)」の一環として実施されたもの。
P2C技術の中でも開発が難しいCO還元技術
再エネの電力を利用してCO2を分解し、化学品などに再生する技術は、「P2C(Power to Chemicals)」と呼ばれている。脱炭素社会の実現に向けては、工場などの産業部門におけるCO2排出量削減が不可欠である。特に、CO2排出量が多い産業における削減は喫緊の課題であり、それに対応できる技術として、P2Cへの期待が高まっている。
P2Cプロセスのうち、CO2の分離回収技術、COと水素を反応させるFT合成技術はすでに実用化されているが、CO2資源化サイクルの完成に必須となるCO2をCOに還元する技術は未だ開発中で、各国が実用化に向け取り組みを強化している。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/11289291-04af-40e6-900b-e8e989a73118