気候変動による経済損失、2035年までに年間最大93兆円 WEFが警鐘

世界経済フォーラム(WEF)は12月11日、気候変動リスクに関する2つのレポートを公開した。気候変動対策で遅れをとった企業は、2035年までに年間収益の最大7%消失する可能性があると警鐘を鳴らす。

2023年までに年間収益の7%が焼失する可能性も

同団体は今回、アクセンチュアおよびボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の協力の下、「Business on the Edge: Building Industry Resilience to Climate Hazards(絶体絶命のビジネス:産業における気候災害レジリエンスの構築)」と「The Cost of Inaction: A CEO Guide to Navigating Climate Risk(無行動のコスト:気候リスクをナビゲートするCEOのためのガイド)」を作成し、気候リスクを乗り越え長期的な価値を引き出す企業のためのロードマップを提示した。

レポートの中では、猛暑をはじめとする気候変動による上場企業の固定資産損失は、2035年までに年間5600億~6100億ドル(約85兆円〜約93兆円)に上ると推測している。遅れをとった企業は、2035年までに年間収益の最大7%が消失するという。この数字は、新型コロナウイルス感染症レベルの混乱が1年おきに発生した場合と同様のインパクトだと解説している。

業界別では、電気通信・公益事業・エネルギー関連企業への影響が大きく、仮にエネルギー集約型セクターの企業が脱炭素化に失敗した場合、移行リスクの高まりに直面し、2030年までにカーボンプライシングのみで収益の最大50%が消失する可能性があると分析する。

一方、世界のCEO131人が参加する「CEO気候リーダー・アライアンス」の調査では、気候への適応とレジリエンスに1ドル投資するごとに最大19ドル(約2900円)の損失回避につながるという試算結果がある。これは、急速な移行を実施した場合に、ほとんどの産業が排出コストの50%以上を経済的に削減できるということを示すものであり、CEOや企業がリスクを回避し機会を捉えるための青写真だとしている。

グリーン市場、2030年には約2130兆円規模に拡大

また、レポートでは、進化する気候関連市場は大きな成長機会ももたらすとし、グリーン市場は2024年の5兆ドル(約762兆円)から2030年には14兆ドル(約2130兆円)規模に拡大すると予想する。

いち早く市場に参入した企業はさまざまなセクターやバリューチェーンにまたがっており、最大のセグメントでは代替エネルギー(49%)、持続可能な輸送(16%)、持続可能な消費財(13%)と、いずれもGDPを大きく上回る成長を遂げていると報告した。

世界経済フォーラム取締役のギム・フエイ・ネオ氏は、気候変動対策を積極的に推進する企業の先進的な取り組みは、環境を改善し地域社会を支援すると同時に、企業がどのように価値を創造できるかを示すものだとしている。

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/6d26d4af-7807-4922-aff8-072cea9479de

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