2026年度から排出量取引制度実施へ 改正GX推進法案などを閣議決定

政府は2月25日、脱炭素と経済成長を両立するGX実現に向けて、排出量取引制度や資源循環強化のための制度を新設するため、GX推進法と資源有効利用促進法の改正案を閣議決定した。現在開会中である第217回通常国会(会期は6月22日まで)に提出する予定。

排出量取引への参加義務化や再生材利用の義務化などを法制化

改正案には、2026年度からCO2の直接排出量が一定規模以上の事業者に対して、排出量取引制度への参加を義務付ける排出量取引制度の法定化のほか、製造事業者などに対して再生材の利用義務を課す制度や優れた環境配慮設計を認定する制度の新設などを盛り込んだ。

脱炭素成長型の経済構造への円滑な移行を推進

日本では、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)」に基づき、GXを実現するための施策として、「成長志向型カーボンプライシング構想」の具体化を進めている。この構想では、GX投資を前倒しで取り組むインセンティブを付与する仕組みとして、「GX経済移行債」を活用した先行投資支援(今後10年間に20兆円規模)、企業などの排出するCO2に価格を付けるカーボンプライシング(CP、排出量取引制度)によるGX投資インセンティブ、新たな金融手法の活用、の措置を講ずることとしている。

今回閣議決定したGX推進法と「資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)」の一部を改正する法案では、この構想を具体化するためのCPと、GXを推進する柱の一つとなるサーキュラーエコノミーの実現に向けた制度の基盤を整備している。

具体的には、排出量取引制度の法定化、資源循環強化のための制度の新設、化石燃料賦課金の徴収に係る措置の具体化、GX分野への財政支援の整備を行う。法案の概要は以下の通り。

排出量取引制度の法定化(GX推進法)

  • 一定の排出規模以上の事業者の参加義務付け:2026年度から、CO2の直接排出量が一定規模(10万トン)以上の事業者に対して、排出量取引制度に参加することを義務付ける。
  • 排出枠の無償割当て(全量無償割当):トランジション期にある事業者の状況を踏まえ、業種特性も考慮した政府指針に基づき排出枠を無償で割り当てる。割当てに当たっては、製造拠点の国外移転リスク、GX関連の研究開発の実施状況、設備の新増設・廃止などの事項も一定の範囲で勘案する。割り当てられた排出枠を実際の排出量が超過した事業者は排出枠の調達が必要。排出削減が進み余剰が生まれた事業者は排出枠の売却・繰越しを可能とする。
  • 排出枠取引市場:排出枠取引の円滑化と適正な価格形成のため、GX推進機構が排出枠取引市場を運営する。金融機関・商社などの制度対象者以外の事業者も一定の基準を満たせば取引市場への参加を可能とする。
  • 価格安定化措置:事業者の投資判断のための予見可能性の向上と国民経済への過度な影響の防止などのため、排出枠の上下限価格を設定。価格高騰時には、事業者が一定価格を支払うことで償却したものとみなす措置を導入する。価格低迷時には、GX推進機構による排出枠の買支えなどで対応する。
  • 移行計画の策定:対象事業者に対して、中長期の排出削減目標や、その達成のための取り組みを記載した計画の策定・提出を求める。排出量取引制度を基礎として、2033年度より特定事業者負担金の徴収を開始する。

資源循環強化のための制度の新設(資源有効利用促進法・GX推進法)

  • 再生資源の利用義務化:脱炭素化の促進のため、再生材の利用義務を課す製品を特定し、当該製品の製造事業者などに対して、再生材の利用に関する計画の提出と定期報告を義務付ける。GX推進機構は、当該計画の作成に関し、必要な助言を実施する。
  • 環境配慮設計の促進:資源有効利用・脱炭素化の促進の観点から、特に優れた環境配慮設計(解体・分別しやすい設計、長寿命化につながる設計)の認定制度を創設する。認定製品はその旨の表示、リサイクル設備投資への金融支援など、認定事業者に対する特例を措置する。
  • GXに必要な原材料などの再資源化の促進:事業者による回収・再資源化が義務付けられている製品について、高い回収目標などを掲げて認定を受けた事業者に対し、廃棄物処理法の特例措置(適正処理の遵守を前提として業許可不要)を講じ、回収・再資源化のインセンティブを付与する
  • サーキュラーエコノミーコマースの促進:シェアリングなどのサーキュラーエコノミーコマース事業者の類型を新たに位置付け、当該事業者に対し、資源の有効利用などの観点から満たすべき基準を設定する。

化石燃料賦課金の徴収に係る措置の具体化(GX推進法)

2028年度から開始する化石燃料賦課金の執行のために必要な支払期限・滞納処分・国内で使用しない燃料への減免などの技術的事項を整備する。

GX分野への財政支援の整備(GX推進法)

脱炭素成長型経済構造移行債の発行収入により、戦略分野国内生産促進税制のうち、GX分野の物資に係る税額控除に伴う一般会計の減収を補填することができるものとする。

【参考】
経済産業省―「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/40c786e9-1ba4-4e47-a272-deb9fd72e0d7

最新情報

最新情報
関連用語
関連動画
  1. 九電系、再エネ活用の新施策 太陽光併設蓄電池&大型潮流発電機の運用開始

  2. 三菱重工系、東京都大田区の汚泥焼却所に「カーボンマイナス焼却炉」初導入

  3. CPCC、排ガスから回収したCO2をコンクリートに固定 日鉄系と連携

  4. カーボンクレジット生成スタートアップVaraha、東南アジアやサブサハラアフリカでの地理的プレゼンスの拡大と技術・科学能力の強化を目指し、シリーズA870万ドル資金調達

  5. バイエル クロップサイエンスとGreen Carbon、新パートナーシップでカーボンクレジット創出へ

  6. Xpansiv が S&P Global および CME と提携し、オーストラリアの炭素クレジット市場を強化

  7. 「林業×金融」で伐採跡地の造林再生を加速、住友林業と三井住友信託銀

  8. ウェルダン財団、AXAの支援を受けて保険付き炭素クレジットを開始

  9. 道内5空港、脱炭素化推進 太陽光活用・車両EV化 国交省が認定

  10. TotalEnergies、米国の森林保護に1億ドルを投資し、気候変動対策を強化

  11. 急成長するカーボンクレジット市場が生むベトナムの投資機会:供給不足と国際的需要がもたらす高利益の可能性

  12. 世界最大級、洋上風力用ケーブル敷設船建造へ 五洋建設

  1. CCUSとは(Carbon Capture Utilization and Storage)二酸化炭素回収・利用・貯留|用語集・意味

  2. カーボンフットプリントとは|用語集・意味

  3. 【脱炭素】ディズニーも施策を加速中

  4. カーボンファーミングとは|用語集・意味

  5. グリーン電力証書とは|用語集・意味

  6. 削減クレジット (Reduction Credit)|用語集・意味

  7. バイオマスとは|用語集・意味

  8. トレーディングプラットフォーム (Trading Platform)|用語集・意味

  9. 地球温暖化防止 (Climate Mitigation)|用語集・意味

  10. 排出削減単位 (Emission Reduction Unit, ERU)|用語集・意味

  11. 炭素市場とは|用語集・意味

  12. 温室効果ガスとは|用語集・意味

  1. 再生可能エネルギー証書(REC)とは|用語集・意味

  2. 来月、閉鎖されるENEOSの和歌山製油所の跡地が、脱炭素社会のモデル地区として再整備されることになりました。

  3. グリーンエネルギー (Green Energy)|用語集・意味

  4. REDD+(Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation)|用語集・意味

  5. カーボンクレジット (Carbon Credit)|用語集・意味

  6. 【脱炭素】ディズニーも施策を加速中

  7. カーボンプライシングとは|用語集・意味

  8. コンプライアンス市場 (Compliance Carbon Market)|用語集・意味

  9. 地球温暖化防止 (Climate Mitigation)|用語集・意味

  10. クリーン開発メカニズム (Clean Development Mechanism, CDM)|用語集・意味

  11. ベースライン (Baseline)|用語集・意味

  12. 炭素予算 (Carbon Budget)|用語集・意味