環境省は9月27日、第5回「脱炭素先行地域」選考で、9件(2県14市町)を選定したと発表した。
今後の横展開を考慮し、先進性・モデル性に重点
第5回選考では、先進性・モデル性で際立った特徴のあるものが選出された。特に、脱炭素と地方創生の同時実現を果たすためのストーリーと、今後の地域脱炭素の取り組みにつながる地域脱炭素の基盤の明確さが重視されたという。
風力発電に適した地域特性を最大限活用
北海道厚沢部町は今後、風力発電を利用しやすいという地域特性を生かし、国産メーカーの中型風力発電(6000kW)を町有地に設置するとともに、メーカーや北海道庁などと連携し、風力発電運営に関する地元事業者・人材育成の拠点化を進める。
設備の建設工事から維持管理まで一貫して地元事業者が担うことで、地域内の雇用拡大と地域経済の活性化に寄与する風力発電事業モデルの構築に取り組む。
都市部に国産ペロブスカイト太陽電池を設置
福岡市は、再エネ導入が困難な都心部において、国産ペロブスカイト太陽電池を活用する。
公共施設、商業ビル、病院施設、マンション施設などの壁面などの垂直面や屋根などに導入し、再エネ導入促進を図る。このほか、新たな取り組みとして、「みずほPayPayドーム福岡」のドーム形状という特殊形状のへの設置も行う。
農地回復が難しい津波被災跡地で再エネ活用
岩手県陸前高田市は、農地回復が難しい津波被災跡地を有効活用し、ポット式根域制限栽培を採用した果樹栽培と、太陽光発電事業を組み合わせた、強化型・営農太陽光発電(ソーラーシェアリング)を導入するともに、電気保安人材確保に向けて、地域新電力などによる資格取得支援を行う。
さらに、岩手県など近隣県と連携し、取り組みの横展開を図る。
9提案は先進性・モデル性の観点で特出
今回の選考では、事前のアナウンス(2024年7月9日公開記事)通り、「先進性・モデル性」(地域課題解決、地域脱炭素の基盤創出、需要家・エリア設定、創出する再エネの種類・導入技術など)、「地域経済循環への貢献」、「事業性」の要件を他の要件より相対的に高く設定するとともに、先進性・モデル性をより高く評価するよう、審査フローを見直した。
同省によると、今回選定に至らなかった提案の中には、着想は良いものの、先進性・モデル性や実現可能性がネックとなり、落選した提案が複数あったという。今後は、「脱炭素先行地域づくりガイドブック」などを参考に、要件の熟度を高め、引き続き挑戦してほしいと期待を寄せている。
第5回までに82件を選定
今回の選出により、選定提案は38道府県・82件となった。第5回では、これまで脱炭素先行地域がなかった11都県のうち、2県で選出された。
同省は「地域脱炭素ロードマップ」に基づき、2025年度までに少なくとも100カ所の脱炭素先行地域を選定し、脱炭素に向かう地域特性などに応じた先行的な取り組み実施の道筋をつけ、2030年度までに実行することとしている。なお、第6回選考については現状、未定。