東亜建設工業(東京都新宿区)と中国木材(広島県呉市)は10月9日、中国木材が所有する2カ所の社有林(熊本県五木村・奈良県上北山村)での森林由来J-クレジットの創出と販売に向けて連携を開始すると発表した。クレジットの取り扱い量は年間1700トンで、収益は森林整備に充当する。
今後9年間、生物多様性保全など実施
具体的には、この2カ所の社有林を対象に、共同で森林クレジット発行のための調査、モニタリングを実施する。また、創出された森林クレジットの26%を東亜建設工業が購入・取得し、資金循環による森林整備促進に協力するとともに、カーボン・オフセットに活用する。両社はこの共同作業を実施することで合意した。実施期間は、2024年8月から2033年3月まで。
この取り組みにより、初年度で年間1700トンのCO2を吸収する効果が見込まれている。この森林クレジットの創出・販売により得られる収益は、地域の森林整備に充てることでさらなる森林再生につながり、地球温暖化防止に資することが期待される。また、今後9年間で、熊本県五木村と奈良県北山村の森林を育成し、多様な生物の生息地の保護、地域林業の活性化、森林環境の保全にも貢献していく。
熊本県五木村の対象森林は約262ヘクタール。森林クレジット初年度創出量は、年間1700トン程度を見込む。2025年1月にクレジット発行を開始する予定。奈良県北山村の対象森林は約185ヘクタール。森林クレジット初年度創出量、年間1200トン程度を見込む。2025年12月にクレジット発行を開始する予定。
山から海に至る生態系保全に寄与
東亜建設工業は、海洋土木で培ってきた技術・知見を生かし、藻場造成など海洋環境の改善、ブルーカーボン(海洋生態系によって取り込まれた炭素)の創出に早くから取り組んできた。
たとえば、ブルーカーボン生態系の拡大に向けて直立の護岸などの港湾構造物への海藻着生に関する技術検討を進め、関東地方整備局「実海域実験場提供システム」を活用した実海域実験を実施している。森林の豊かさは川を通じて海の豊かさにもつながる。森林クレジット事業の共同実施により山から海に至る生態系保全に寄与する。
中国木材はこれまでも、宮崎モデルとして、社有林経営から製材加工販売、樹皮や木端を燃料にしたバイオマス発電につながる、木質資源循環の取り組みを行っている。今回の共同事業による販売収益を活用して、全国各地約1万ヘクタールに及ぶ自社所有林における適切な森林管理をさらに推進していく。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/c070ab4f-2415-46e8-a26b-b08a82c15b1d