環境省は10月29日、生物多様性・自然資本に関する情報開示枠組を提供する国際的組織「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」に2年間にわたり約50万ドル(約7600万円)相当を拠出すると発表した。
この拠出を通じて、TNFDとの共同研究を実施し、TNFDデータファシリティの立ち上げに参画。国内外の自然関連財務情報の開示を推進するとともに、開示の国際標準化に向けて日本として貢献していく。
ネイチャーポジティブ実現へTNFDの取り組みが重要に
2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された、生物多様性の世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、2030年までに、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の実現を掲げている。また、この世界目標のターゲットのひとつ「ビジネスの影響評価・開示」で示されたように、ネイチャーポジティブ経済の実現には、民間企業がTNFDの枠組みに沿って自然関連財務情報を開示し、評価されることを通じて、生物多様性保全に積極的な取り組みを行っている企業に資金が流れていく仕組みを構築することが重要となる。こうした中、企業の行動変容を促すTNFDの意義が高まっている。
TNFD Adopterに登録した日本企業は約120社
TNFDは、自然資本などに関する企業のリスク管理と開示枠組みを構築するため、2021年に発足した国際的組織。2023年9月に開示の枠組v1.0を公表した。
この開示の枠組(提言)への賛同を表明し、情報開示に取り組むことを表明した「TNFD Adopter」は、日本企業では約120社と世界最多となっている。
COP16のG7ANPE主催のサイドイベントで発表
環境省は、今回のTNFDに対する拠出について、10月28日(コロンビア現地時間)、生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)におけるG7ネイチャーポジティブ経済アライアンス(G7ANPE)主催のサイドイベントで発表した。
G7ANPEは、2023年G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合において、ネイチャーポジティブ経済に関する知識の共有や情報ネットワークの構築の場として、新たに設立された。現在、G7各国政府、企業などの団体が加盟し、COP16のサイドイベントでは、ネイチャーポジティブ経済の実現に資するG7企業の具体的な活動やソリューションを紹介した。
企業のネイチャーポジティブ経営への移行を支援
2030年までの世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の採択を受けて、日本では、2023年3月に「生物多様性国家戦略2023-2030」が閣議決定された。この戦略における2030年ミッションを達成するための「5つの基本戦略」のうち基本戦略として「ネイチャーポジティブ経済の実現」が掲げている。
企業のネイチャーポジティブ経営への移行を支援するため、環境省は2024年3月に、農林水産省、経済産業省、国土交通省と、「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」を策定・公表。このほか、生物多様性民間参画ガイドライン(第3版)の策定や自然関連財務情報開示のためのワークショップ、気候関連財務情報開示を活かした自然関連財務情報開示支援モデル事業を行っている。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/2a050b3e-2b9a-47fd-9d7e-75b0370208ad