東北大学は1月29日、モニタリング研究により、通称「ナラ枯れ」と呼ばれるブナ科樹木萎凋病が、枯死木の木材分解を遅らせていることを解明したと発表した。
森林のCO2放出量を評価するうえで、これまで十分に考慮されてなかった新たな視点で、コナラ枯死木の分解過程への長期的な影響が明らかになれば、ナラ枯れが森林からのCO2放出に与える影響に関する予測精度の向上が期待できる。
全国で発生する大量の「ナラ枯れ」 枯れた木の分解でCO2が放出される
ナラ枯れは、カシノナガキクイムシが媒介する病原菌(Raffaeleaquercivora)によって引き起こされる通水阻害により、コナラ属樹種が枯死してしまう現象のこと。日本中でコナラやミズナラなどのブナ科の優占樹種の大量枯死をもたらしている。
枯死木からは分解に伴いCO2が放出されるため、樹木の大量枯死は森林からのCO2放出量を増やすと予想されているが、樹病による枯死が枯死木の分解に与える影響はよくわかっていない。
健全な木と、ナラ枯れ発生の木 分解過程と菌類群集の変化を比較
同研究では、ナラ枯れが発生している宮城、京都、宮崎の3カ所で、ナラ枯れで枯死した直後のコナラと、外見状健全なコナラをそれぞれ伐倒して丸太にしたものを森林に配置。これらの丸太(幹)の分解に関わる菌類群集(丸太内部に棲む菌類たち)の変遷を1年半にわたって比較するというモニタリングを行った。

ナラ枯れを引き起こすカシノナガキクイムシ(左上)本研究の調査地(出所:東北大学)
枯死木内部の菌類群集を低下させることで、材分解を遅らせている可能性を示唆
実験開始後、1年半で得られた1200点のデータから、ナラ枯れで枯死したコナラ丸太は、健全なうちに伐倒したコナラ丸太より、内部の菌類群集の多様性が低く、分解が阻害されていることが新たに判明した。
枯死木の分解には時間がかかるため、現在も、コナラ丸太の分解過程を継続して観察している。同研究では、コナラ枯死木の分解過程とナラ枯れの長期的な影響が明らかになれば、ナラ枯れが森林からのCO2放出に与える影響に関する予測や予測精度の向上が期待できるとしており、森林のCO2放出量を評価するうえでの新たな視点が加わることになる。
なお同研究は、同大大学院農学研究科の深澤遊准教授を代表とする研究グループが行った。
研究成果は2025年1月8日に国際誌「EnvironmentalMicrobiology」で公開された。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/247ab425-6ffd-43f7-8ed1-43066510f148