東京海上、カーボンクレジット価値毀損時の損害を補償 新保険開発

東京海上日動火災保険(東京都千代田区)は2月26日、企業が所有するカーボンクレジットが、創出元のプロジェクトにおいて自然災害や事業撤退などの事故が発生し、その価値が毀損した場合に、被る損害を補償する「カーボンクレジット対応費用保険」を開発したと発表した。

カーボンクレジットの価値が毀損した場合、企業対策として必要となる危機管理コンサルティング費用や企業価値毀損に発展しうるリスクの調査費用を補償する。

代替カーボンクレジット調達費などを補填

具体的には、GHG排出をオフセットするためのカーボンクレジットの所有者(被保険者)に、代替のカーボンクレジットを調達するために支出した費用や逸失する利益に対して契約条件で定められた保険金を支払う。

保険の対象となる事故は、

  • 対象プロジェクトの火災、自然災害、その他人為的なミスなどの原因による損壊
  • 対象プロジェクトの開発者の倒産または事業撤退
  • 対象プロジェクトの開発者・出資者などによる詐欺または横領 など

なお、特定の第三者機関が認証したプロジェクトが対象となる。

プロジェクトの認証が取り消されるリスクに対応

2024年11月に開催されたCOP29において、パリ協定第6条に基づき、GHG排出削減や、吸収・除去の量を国際的に分配する運用を実施することが決定した。また、国際航空業界では、2024年より国際航空のGHG排出削減を管理するための制度「CORSIA」加盟国の国際航空会社に対して、排出量を基準以下に抑制することが義務付けているが、カーボンクレジットで排出をオフセットすることが認められている。

こうした背景もあり、カーボンクレジットの国際的な需要は加速していくことが見込まれている。一方で、カーボンクレジットによる排出オフセットについては、その開示情報が外部から厳しく監視・評価されるようになりつつあり、グリーンウォッシング(環境保全への配慮を実態以上に見せかける行為)批判に晒されるリスクを抱えている。

カーボンクレジットの創出を目的とするプロジェクトは、認証機関による審査を経て認証を受けることで、その創出を行うことができる。しかし、プロジェクトの認証が取り消された場合は、企業が所有するカーボンクレジットが価値を失い、脱炭素目標の達成のために代替品の購入を要したり、基準排出量の未達に伴い事業活動が制限されたりする、というおそれがある。そこで、こうしたリスクに対応する、カーボンクレジット所有者向け保険「カーボンクレジット対応費用保険」を開発した。

グリーンウォッシュ対策の保険も提供

東京海上日動火災保険は、2024年7月より、カーボンクレジットを購入した企業向けに、グリーンウォッシュ対策保険「カーボンクレジット・レピュテーション費用保険」の提供を開始した。同保険は、カーボンクレジットを創出するプロジェクトに対するグリーンウォッシング批判などが起きた際に、企業対策として必要となる危機管理コンサルティング費用や企業価値毀損に発展しうるリスクの調査費用を補償する。

同社は今後も、カーボンクレジット取引市場関連の保険商品・サービスの開発を進め、脱炭素社会の実現に貢献していく。

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/03a32060-cd18-4efe-8cde-476de2650040

最新情報

最新情報
関連用語
関連動画
  1. 「GreenCarbon」が受賞、第9回サステナブルファイナンス大賞で稲作クレジットが注目

  2. 京都「祇園祭」で脱炭素化、長刀鉾の提灯屋台に蓄電できる太陽光パネルを搭載

  3. 炭素市場はベトナムに数億ドルをもたらす可能性がある

  4. 1PointFive と Trafigura が Direct Air Capture 二酸化炭素除去クレジット契約を発表

  5. 2023年のカーボンプライシング収益、15兆円に到達 – 世界銀行の年次報告

  6. シンガポール、電力部門の炭素回収・貯留研究に助成金を提供

  7. マイクロソフト、700 万トンの CDR を新たに提供し、Chestnut との連携を拡大

  8. 都、グリーン水素の市場取引開始 東京商品取引所と

  9. Google、ブラジルのスタートアップMombakから5万トンのカーボンクレジットを購入へ

  10. 大気メタン濃度の急上昇 アジア低緯度域からの放出増加が要因 国環研分析

  11. みずほ銀行とバイウィル、カーボンクレジットでの提携開始

  12. ASEAN報告書は、地域に3兆ドルの炭素市場の機会があると予測

  1. 持続可能なファイナンス (Sustainable Finance)|用語集・意味

  2. 天然ガスを原料に1日1.7トンの水素を製造可能 カーボンニュートラル実現に向けて製造プラントが完成

  3. グリーン電力証書とは|用語集・意味

  4. カーボンリムーバル(Carbon Removal)|用語集・意味

  5. 炭素回収・貯留 (Carbon Capture and Storage, CCS)|用語集・意味

  6. 炭素予算 (Carbon Budget)|用語集・意味

  7. 森林再生 (Afforestation/Reforestation, A/R)|用語集・意味

  8. 来月、閉鎖されるENEOSの和歌山製油所の跡地が、脱炭素社会のモデル地区として再整備されることになりました。

  9. 【脱炭素】ディズニーも施策を加速中

  10. トレーディングプラットフォーム (Trading Platform)|用語集・意味

  11. J-クレジット (Japan Credit)|用語集・意味

  12. 排出削減単位 (Emission Reduction Unit, ERU)|用語集・意味

  1. Verra(ヴェラ/ベラ)とは|用語集・意味

  2. 炭素予算 (Carbon Budget)|用語集・意味

  3. ブルーカーボンとは|用語集・意味

  4. 炭素市場とは|用語集・意味

  5. 温室効果ガス排出量 (GHG Emissions)|用語集・意味

  6. コンプライアンス市場 (Compliance Carbon Market)|用語集・意味

  7. 認証排出削減量 (Certified Emission Reductions, CER)|用語集・意味

  8. CCUSとは(Carbon Capture Utilization and Storage)二酸化炭素回収・利用・貯留|用語集・意味

  9. 再生可能エネルギー証書 (Renewable Energy Certificate, REC)|用語集・意味

  10. 温室効果ガス (Greenhouse Gas, GHG)|用語集・意味

  11. ゴールドスタンダード認証温室効果ガス削減プロジェクト(Gold Standard Voluntary Emission Reduction, GS VER)|用語集・意味

  12. 脱炭素への取り組みを評価する世界基準となる「ACT」=低炭素移行評価の導入を支援する企業が、福岡市に設立されました。