環境省は6月9日、昨今の環境の状況、施策などを交えて概説した2025年版「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」を公表した。
今回の特集テーマは「『新たな成長』を導く持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築」。1月の米国によるパリ協定からの脱退表明を受け、日本としては脱炭素と経済成長の同時実現を目指し、2050年炭素中立(ネット・ゼロ)の実現に向け着実に取り組む方向性を示した。
地球温暖化対策の目指す方向を提示
地球規模の環境問題においては、先進国・途上国の区分を超えて、分断ではなく、ともに取り組む「協働」が重要だとした。AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)を始め、国際社会に対して、日本から訴えかけていく。
また、「環境価値を活用した経済全体の高付加価値化」を進めるため、環境価値の見える化・情報提供を通じ、消費者の意識・行動変革を促していく。「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への移行や、生物多様性の損失を止め、反転させる「自然再興(ネイチャーポジティブ)」も重要な政策課題と位置付ける。
自然再興・炭素中立・循環経済の各分野と統合的推進のために、さまざまな技術的課題などを解決するイノベーションの創出と社会実装を行うスタートアップの支援に力を入れていく。
さらに、「ウェルビーイング/高い生活の質」を実現するため、環境・経済・社会の統合的向上の実践・実装の場として位置づけた「地域循環共生圏」をさらに発展させていく。
2024年5月に閣議決定した第六次環境基本計画では、環境政策が目指すべき社会の姿として、「循環共生型社会」の構築を掲げ、現在のみならず、将来にわたって「ウェルビーイング/高い生活の質」をもたらす「新たな成長」の実現を目指すことを打ち出した。
人類の活動は、気候変動や生物多様性の損失、深刻な環境汚染など様々な環境問題を生じさせている。こうした複合する環境危機を克服し、環境のもたらす恵みを将来世代まで引き継いでいくためには、現在の経済社会をネット・ゼロで、循環型で、ネイチャーポジティブが統合されたものへと大胆に変革していくことが必要不可欠だと捉えている。
特集テーマ各章の概要
今回の第1部(4章構成)では特集テーマについて、第2部では2024年度に講じた環境施策について分野ごとに解説する。このほか、2025年度に講じようとする施策についても解説している。
第1部各章の概要は、以下の通り。
第1章 「市場」 ~環境とビジネス~
国内外の気象災害、環境問題による経済的影響を考察し、日本の地球温暖化対策の目指す方向性を示すと共に、近年拡大するサステナブルファイナンス、環境情報開示等の「新たな成長」を導いていく経済活動の取組、環境とビジネスの動向について解説している。
第2章 「政府」 ~循環経済・自然再興・炭素中立の統合に向けた取り組み~
気候変動、生物多様性の損失と汚染という相互に関係する3つの世界的危機に対し、最新の動向や施策を紹介すると共に、課題の相互依存性を認識して循環経済・自然再興・炭素中立などの政策の統合、シナジーを図ることの重要性を紹介している。
第3章 「国民」 ~地域・暮らしでの環境・経済・社会の統合的向上の実践・実装~
第6次環境基本計画において、環境・経済・社会の統合的向上の実践・実装の場として位置付けた「地域循環共生圏」のさらなる発展を図ると共に、人々の暮らしを、環境をきっかけとして豊かさやウェルビーイングにつなげ得る取り組みについて紹介している。
第4章 東日本大震災・能登半島地震からの復興・創生
東日本大震災や原発事故、能登半島地震の被災地の環境再生の取り組みの進捗や復興の新たなステージに向けた未来志向の取り組みを紹介している。
「白書を読む会」を開催
環境省は、地方環境事務所などと共同で、白書のテーマや狙いなどを解説する「環境白書を読む会」を開催する。
開催日程(予定)は以下の通り。
日時 | 定員 | 問合せ先 |
6月13日 | 100名程度 | 四国地方ESD活動支援センター(四国ESDセンター) |
9月中旬以降 | 未定 | 中部地方環境事務所 環境対策課 |
9月下旬 | オンライン100名程度 | 中国四国地方環境事務所 環境対策課 |
白書の閲覧と冊子の入手方法
白書は、環境省ウェブサイトにてPDFデータで閲覧できる。HTML形式データは7月上旬以降掲載する予定。また、英語版は秋頃をめどに掲載する予定。
単行本は政府刊行物センターや政府刊行物取扱書店などで購入できる。6月中下旬の発売を予定している。このほか、電子書籍版を7月中下旬をめどに、1年間限定で無料配信する予定。
環境白書、循環型社会白書、生物多様性白書の3つの白書は、法律に基づき国会に提出する年次報告書。環境問題の全体像を分かりやすく示すために3つの白書を合わせて編集し、1つの白書としてまとめている。なお、印刷工程の電力使用に伴い発生するCO2は、「オフセット・クレジット制度(「J-クレジット制度」「JーVER制度」など)」に基づき発行された東日本大震災における被災地のクレジットを購入し相殺している。
【参考】
・環境省―令和7年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の公表について
・環境省―令和7年度「環境白書を読む会」の開催について | 報道発表資料 | 環境省
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/22a52511-98a5-437f-98f6-4afede35ce48