一般社団法人 Image Nation Green(東京都墨田区)は6月30日、舞台業界に特化した環境ガイドライン「シアター・グリーン・ブック」の日本語訳版を作成したと発表した。舞台作品制作での廃棄をはじめとする環境課題に対する解決方法の一つとして、2021年にイギリスで発行されたガイドラインの日本語訳版で、同法人の公式ウェブサイト上で公開した。
欧州では既に普及、舞台活動で取り組むべき環境ガイドライン
演劇、バレエ、音楽などといった公演終了後には舞台装置や衣裳、チラシや情報誌などの紙媒体など大量の廃棄物が排出されるほか、劇場建物の省エネルギー化など多岐にわたる課題がある。一部の資材はリユースされるなど個別で取り組みは行われているが、業界全体で議論を深めて実践していく段階にはない。また、こうした課題は、映像や美術など他の芸術文化分野でも共通する課題だという。
シアター・グリーン・ブックは、舞台作品制作での廃棄をはじめとする環境課題に対する解決方法の一つとして、2021年にイギリスで発行された。
ロンドンのナショナルシアターをはじめ、英国を代表する劇場や歌劇場などで、作品制作と劇場の運営を幅広く網羅する情報集として活用されている。これまで13カ国語に翻訳され、ヨーロッパ各国の主要劇場のほか、台湾、韓国、オーストラリアなどでも活用されている。
オリジナルのシアター・グリーン・ブックでは、持続可能な取り組みの方針と概要をまとめた「総合編」と、カテゴリーごとの具体的な施策をまとめた「作品制作」「運営」「建物」の詳細ガイドラインで構成されている。
まずは、「総合編」「作品制作」「運営」の3つの日本語版を公開
日本語訳版の概要は以下通り。
- 総合編(全69ページ):持続可能性を高める取り組みを進める上で基本となる考え方と、「持続可能な作品制作」「持続可能な運営」「持続可能な建物」それぞれの分野の目標を、イラストとともに紹介
- 持続可能な作品制作(全32ページ):創作の各段階に沿った具体的な取り組みや、役割別(大道具、小道具、衣裳、照明・音響など)の工夫、さらにツアー公演における環境負荷の軽減策をまとめた情報集
- 持続可能な運営(全23ページ):劇場や上演団体の日常の運営で使用、提供するものを、「紙とデジタル」「飲食・物販」「ビル管理」「再使用とリサイクル」「移動と運搬」「契約と調達」の6つのカテゴリーに分け、各カテゴリーごとの具体的な実践例をまとめた情報集
今後は、詳細ガイドライン「建物」の翻訳を進めると共に、同ガイドラインの認知と利用促進のための勉強会や交流会を実施していくという。

シアター・グリーン・ブック日本サイト(出所:Image Nation Green)
2026年に日本ローカライズ版編集委員会を発足、日本版公開も
さらに、同ガイドブックを実際に舞台制作で活用した際の意見やデータを収集し、日本の舞台芸術での実態を反映した、より実効性の高い日本ローカライズ版の作成・公開を目指す。2026年に日本ローカライズ版編集委員会を発足、2027年の日本版公開を予定している。
なお、Image Nation Greenは日本で唯一、「シアター・グリーン・ブック」翻訳権を持つ。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/a967ff8f-f63d-4eac-9fbb-0c386b8a3fc0