JAXAなど、温室効果ガス・水循環観測技術衛星の打ち上げに成功

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月29日、鹿児島県種子町のJAXA種子島宇宙センターにおいて、GHG・水循環観測技術衛星「いぶきGW(GOSATーGW)」が所定の軌道に投入し、打ち上げに成功したと発表した。

H-IIAロケット50号機に搭載

衛星を搭載したロケットは打上げ後、計画通り飛行し、GOSATーGWを正常に分離した。その後、GOSATーGWの信号を豪ミンゲニュー局で受信し、太陽電池パドルの展開が正常に行われたことを確認。続いて、南極大陸のトロール局で信号を受け、衛星の太陽捕捉制御が正常に行われたことを見届けたという。これにより、GOSATーGWのミッション機器に関する一連の作業が完了した。

GOSATーGWは、国立環境研究所(NIES)、環境省、JAXAが共同で開発した衛星で、6月29日に三菱重工業(東京都千代田区)によりH-IIAロケット50号機に搭載して打ち上げられた。GOSATーGWの開発担当メーカーは三菱電機(同)。

CO2やメタンの排出量をより精密に推計

GOSATーGWは、温室効果ガス観測ミッション(環境省と国立環境研究所が担当)と水循環変動観測ミッション(JAXAが担当)を担う。

GOSATーGWの特徴として、現在運用中の衛星「GOSAT」「GOSAT-2」と比較して、データ数が大幅に増加し、CO2やメタンの排出量をより精密に推計できるようになることがあげられている。

GOSATーGWは、新たに開発した、地球上のCO2とメタンガスを広範囲・高精度に観測する「GHG観測センサ3型(TANSOー3)」と、高精度に地表・海面や大気中の水の物理量を推定する「高性能マイクロ波放射計3(AMSR3)」の2つのミッション機器を搭載している。

TANSOー3の「広域観測モード」では、地球全体を切れ目なく面的に観測できるため、従来スポット的に観測していた方式と比較して観測可能な地点数が増加する。「精密観測モード」では、各地域の温室効果ガス濃度分布をより詳細に観測する。、AMSR3では、従来よりも観測が可能な周波数帯を増やすことでより正確な水の物理量推定が可能となり、降水量や水蒸気量、海氷観測、海面水温などの観測精度が向上する。高精度な観測データにより、世界各国の気象機関における台風や集中豪雨などの予測精度向上に貢献するとともに、気候変動に伴う水循環変動把握により、社会生活への影響予測や対策立案に貢献する。

国内外の排出削減のための行動を後押し

GOSATシリーズは、気候変動に関する科学の発展への貢献と気候変動政策への貢献をミッションとした衛星シリーズ。2009年に打ち上げた初号機「GOSAT」、2018年に打ち上げた「GOSATー2」、今回打ち上げたGOSATーGWで構成される。現在運用されている衛星の中で唯一、地球全体でCO2とメタンの両方を同時観測できる衛星として、16年間にわたり科学的データを提供している。

GOSATーGWの打上げ成功を受けて、談話を発表した浅尾 慶一郎環境大臣は、「これにより、これまでデータ不足により十分な解析が困難だった、面積が小さい国・地域の排出量推計に加え、企業単位での推計も可能とすることを目指している。環境省としては、GOSATーGWによって得られるデータを、国際機関、各国政府、民間企業などに広く活用いただけるようにすることで、国内外の排出削減のための行動を後押ししていく」と述べた。

衛星搭載機器の機能を確認する期間へ移行

JAXAは7月1日、GOSATーGWが予定した軌道上に投入されたことを受けて、衛星の運用に必須である状態に移行するまでのクリティカル運用期間を終了し、今後、初期機能確認運用期間へ移行すると発表した。初期機能確認運用期間では、約3カ月間をかけ、衛星全体とミッション機器(AMSR3、TANSOー3)などの搭載機器の機能確認などを実施する予定。

【参考】
環境省―温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSATーGW)の打上げ結果について

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/38a3fb5e-df8e-49d0-b477-bb377dad2ef4

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