日本総合研究所(東京都品川区)は7月2日、生活者の脱炭素行動変容を促す2025年度「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」を、大阪府、兵庫県、奈良県、京都府、神奈川県横浜市と連携して開始すると発表した。
同自治体内の全小学校などに通う4~6年生約53万人と、その保護者を中心とした生活者に対して、メーカーや小売流通など15社で構成する「チャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム(CCNC)」の協力を得て行う。
2023年度から実施の「ゲンコツ」プロジェクト、全国小学4~6年生の17%へ拡大
「みんなで減CO2プロジェクト」は、日本総研が2023年度に立ち上げた協創型実証実験で、生活者の脱炭素行動変容を促すことを目指して「教育啓発」と「販促購買」に一気通貫で取り組んでいる。2024年度は、環境省デコ活推進事業の補助も受けて、大阪府を中心に展開した。
これまでの実証を踏まえ、2025年度プロジェクトでは、連携する自治体を増やし、教育啓発の対象も「環境をテーマとした学習を履修する、全国の小学4~6年生の約1/6に相当する約17%に拡大することで、社会的なムーブメント形成の推進を目指す。
2025年度の3つの注力施策
2025年度は3つの注力施策を実施する。1つ目として、エコラベルやカーボンフットプリント(CFP)について学べる学習キットの配布と自由研究コンテスト「エコラベルハンター2025」を実施し、児童が家庭や店舗でのエコラベル・CFPの探索を通じて、楽しみながら環境配慮商品について学ぶ機会を提供する。これに伴い、7月2日に「エコラベルハンター2025」特設ウェブサイトを公開した。
特設ウェブサイトでは、児童たちが見つけたエコラベル・CFPを記録し、自身の探索成果として可視化できる。そして、夏休みの自由研究課題としてより多くのエコラベル・CFPを見つけた児童を自治体別に表彰する応募コンテンストの開催を通じて、脱炭素学習を促す。

学習キット&夏休み自由研究コンテスト「エコラベルハンター2025」(出所:日本総合研究所)
2つの目の主力施策として、奈良県と連携し、「みんなで減CO2プロジェクト」の学習コンテンツを1年間にわたり児童に提供する「モデル校」を設定し、児童の意識や行動変容を追跡検証する。
また、3つ目の主力施策として、プロジェクトの取り組みに参加した人を、生活者の脱炭素行動変容の追跡調査が可能な「減CO2モニター」を組成して施策の効果検証サイクルを加速させる。アンケート・1対1のデプスインタビュー・ID-POSデータ分析を統合的に追跡調査・分析できる体制を構築し、施策検証の精緻化を図る。
CCNC参画企業も協力、キャンペーンを展開
「エコラベルハンター2025」の取り組みと連動する形で、CCNCの参画企業が協力してCFP算定商品やエコラベル表示商品を対象としたキャンペーンも展開する。具体的には、万代(大阪府東大阪市)が展開するスーパーマーケット全169店舗でのマストバイキャンペーンと、スギ薬局(愛知県大府市)が運営するアプリを用いたクイズキャンペーンを実施する。カンロ(東京都新宿区)は、「カンロ飴」など3商品において、CFP算定マークとエコラベル商品を展開する。
学習キットなどで学んだことを日常的に実践できる場を用意することで、生活者の脱炭素対応商品を「目利き」できる力を養い、購買行動の定着を図る。

2025年度のプロジェクトの全体像(出所:日本総研)
2024年度の実証結果
2024年度に、大阪府を中心に実施した「みんなで減CO2プロジェクト」では、エコラベルやCFPに関する学習キットの制作・配布や小学校での出前授業などを通じた教育啓発活動と、小売流通の実店舗やアプリを活用した脱炭素学習を含む販促購買キャンペーンを生活者に向けて展開した。
日本総研は、そこでの生活者アンケートやインタビューと、ID-POSデータを組み合わせることで得た結果や示唆を、次のように紹介している。
- エコラベルやCFPを本人の学習、または子供を通じて学んだ生活者の環境配慮商品の購買意欲は、平均より15~20ポイント高まった
- 子供が楽しみながら学習行動をする中で、保護者の意識も触発され、購買行動が変容する
- 学習と実践を通じた意識・行動変容の効果は一定期間持続する
- 脱炭素をテーマにしたキャンペーンであっても、ポイント還元などインセンティブの強いキャンペーンと同程度の集客ができ、学習を実践する場として店舗が機能している
- 店舗内外での学習・説明機会が、環境配慮商品の販売増加に寄与する
自治体とCCNCの参画企業の役割
このプロジェクトでは、日本総研が全体の企画を担い、コンテンツの開発と運営、アンケートやインタビュー、ID-POSデータを絡めた効果検証を行う。連携する自治体は、教育委員会・学校などとの調整や有効なコンテンツ開発への協力・助言、催事の主催、活動の周知・集客を担う。また、CCNCの参画企業は、コンテンツ開発への協力と運営、効果検証の企画と支援、商品や売場の提供、キャンペーンの実施、企業・製品の脱炭素化・見える化の推進、生活者とのコミュニケーション施策の展開などで協力する。
たとえば、TOPPAN(東京都文京区)は、CCNCにおいて、環境に配慮した素材の使用と購買につながるパッケージの開発、脱炭素の価値を生活者に正しく伝えるコミュニケーションの領域で貢献している。
このプロジェクトでは、公民連携で「教育啓発」と「販促購買」を一気通貫で実施することで、脱炭素行動変容の具体施策をパッケージ化し、連携する自治体やCCNCの参画企業とともに社会実装の輪を広げていくことを目指している。
また、2030年のGHG46%削減の達成に向けて注目が集まるCFPやエコラベルなどの表示と訴求のあり方や、バリューチェーン全体の脱炭素化の動きに関する課題と示唆を生活者起点でまとめ、脱炭素社会構築のための制度設計などについて政策提言を行っていく。

「みんなで減CO2プロジェクト2025」の実施体制(出所:日本総合研究所)
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/42e212ab-31c5-4b70-90e3-c791b80f163a