再エネで自給可能な市町村が2割超え、千葉大ら「電力永続地帯」報告

千葉大学とNPO法人環境エネルギー政策研究所(東京都新宿区)は7月10日、日本国内の市町村別の再生可能エネルギーの供給実態などを把握する「永続地帯」研究の2024年度版報告書を公表した。

域内の民生・農水用電力需要を上回る量の再エネ電力を生み出している「電力永続地帯」の市町村は、2023年度に364に増加し、全自治体の20.9%となった。

風力発電が再エネ導入をけん引するも、電力永続地帯伸び率鈍化

風力発電の伸び率が好調で、引き続き太陽光発電の伸び率を上回っており、再エネの導入を牽引した。一方、電力永続地帯市町村数の伸びが、鈍化してきた。

エネルギー永続地帯と電力永続地帯の市町村数の推移(出所:千葉大学)

エネルギー永続地帯と電力永続地帯の市町村数の推移(出所:千葉大学)

日本全体での地域的な再エネ供給は、2011年度に民生・農水用エネルギー需要の3.8%だったが、2023年度には20.9%まで増加した。2023年度に、半数以上の都道府県(24県)が地域的エネルギー需要の3割以上を地域的な再エネで計算上供給していた。また、秋田県など5県では、半分以上を再エネで供給している。

「エネルギー永続地帯」は234、「永続地帯市町村数」は134に

地域エネルギー自給率が100%を越え、域内の民生・農林水産業用エネルギー需要を上回る地域的な再エネを生み出している市町村(エネルギー永続地帯)の数は、2023年度に234になった。2011年度の50に対して、2023年度は4.7倍となった。

エネルギー永続地帯市町村のうち、食料自給率も100%を超えた市町村(永続地帯)は、2023年度に134になった。

この報告書は、千葉大学大学院社会科学研究院の倉阪秀史教授がNPO法人環境エネルギー政策研究所とともに毎年公表しているもので、今回は19年目となる。最新の2024年度版報告書は、2024年3月末時点で稼働している再エネ設備を把握し、その設備が年間にわたって稼働した場合のエネルギー供給量を推計した。なお、一部は実績値を採用している。

このほかの今回の試算の結果の概要は以下の通り。

風力発電が牽引、再エネ電力は対前年度で7.8%増加

2023年度は前年度に引き続き風力発電の伸び率(12.6%増)が太陽光発電の伸び率(9.0%増)を上回った。これらに牽引され再エネ電力は対前年度で7.8%増加した。固定価格買取制度の対象外である、再エネ熱供給は1.4%の増加にとどまった。再エネの供給量は2011年度に比べて2023年度は約4.5倍になった。

再生可能エネルギー供給の推移(全国)(出所:千葉大学)

再生可能エネルギー供給の推移(全国)(出所:千葉大学)

秋田県を含む5県が地域的エネ自給率50%以上に

地域的エネルギー自給率(地域の再エネ供給が民生・農林水産業用エネルギー需要に占める割合)の都道府県別ランクで秋田県が前年度に続いて1位となり、5県が自給率50%を超えた。

地域的エネルギー自給率の都道府県別ランキング
順位 都道府県 自給率
1 秋田県 54.3%
2 大分県 54.0%
3 福島県 53.1%
4 群馬県 52.6%
5 三重県 50.5%
6 宮崎県 49.8%
7 鹿児島県 49.4%
8 栃木県 49.3%
9 茨城県 47.4%
10 熊本県 43.1%

【参考】
千葉大学-風力発電の伸びが引き続き太陽光発電の伸びを上回り、2割を超える自治体が電力永続地帯に「永続地帯2024年度版報告書」の公表

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/f35d9275-27f3-47da-8bfa-29a73e857e83

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