東京都、中小企業のCO2削減効果をまとめてカーボンクレジット創出へ

東京都は7月14日、都内中小企業の小規模なCO2削減活動をとりまとめてカーボンクレジット化する新事業を開始すると発表した。J-クレジット制度の「プログラム型プロジェクト」を活用するもので、同プロジェクトを運営する事業者の取り組みに対し、成果連動型の協定金により最大5600万円を支援する。金融機関・経済団体・地方自治体などを対象に同プロジェクトの運営事業者を募集し、5件程度採択する予定だ。

2028年1月までに1回以上のクレジット認証達成へ

プロジェクトが採択された事業者は、都と協定を締結し、採択プロジェクトに関して、都内中小企業などのプロジェクトへの誘引を進め、2028年1月までに1回以上のクレジット認証を達成する。都内中小企業などとの幅広いネットワークを有する経済団体や金融機関などと連携して事業に取り組む。

プログラム型クレジットイメージ(出所:東京都)

プログラム型クレジットイメージ(出所:東京都)

東京都は採択されたプロジェクト1件につき、2025年度は最大1600万円、2026・2027年度は成果連動型で最大2000万円の協定金を支払う。

支援内容(出所:東京都)

支援内容(出所:東京都)

プログラム型プロジェクトとは

事業名は「プログラム型プロジェクトを活用したカーボンクレジット創出支援事業」。

「プログラム型プロジェクト」とは、複数の中小企業などによるクレジット創出活動をまとめてカーボンクレジットにすることが可能なJ-クレジットのスキームをいう。単独では収益化が困難な小さな削減活動でもクレジット化が可能となる。

クレジット創出活動の一例としては、太陽光パネル設置やLED照明の導入、高効率ボイラーの導入、燃料の転換、中干期間の延長などがある。J-クレジット制度に登録されたすべての方法論のほか、この事業への応募を機に、新たにJ-クレジットのプロジェクトとして登録する場合も対象となる。

企業が脱炭素化を進める上では、省エネ設備の導入などによる排出削減に加え、その削減量を認証して企業等の間で取引できるカーボンクレジットの仕組みを活用することが効果的である。一方、カーボンクレジットの創出にはさまざまな手続きや費用を要することから、小規模な事業所などが単独で取り組むことが難しい状況にある。

そこで、都は、都内中小企業などの削減・吸収活動のクレジット化を支援する事業を開始する。事業詳細や応募方法は募集要項を確認のこと。

応募対象となる事業者とプロジェクトの主な要件など、概要は以下の通り。

応募対象となる事業者の主な要件

  • カーボンクレジットの創出または創出の支援に関する実績を有する事業者であること。
  • 応募するプログラム型プロジェクトの運営に当たり、都内中小企業などとの幅広いネットワークを有する支援機関などとの業務提携体制を構築している、または支援機関などに該当する事業者であること。

なお、支援機関などとは、金融機関・経済団体・業界団体・地方自治体・そのほかの都が認める機関を指す。

応募対象となるプロジェクトの主な要件

  • 国が認証するJ-クレジット制度に登録された、または登録を予定しているプログラム型プロジェクトであり、プロジェクトの実施場所に東京都を含むこと
  • 申請時点で登録済みのプロジェクトである場合、申請に当たって新たに支援機関などとの提携を行うなど、この事業への応募に当たって都内中小企業などの誘引に向けた新規の取り組みを行っていること
  • 2028年1月までに1回以上のクレジット認証が可能であること。
  • 東京都との協定の終了後も、プロジェクト運営を中長期的に継続する意思・計画があること

協定金は、プロジェクト運営に係る経費(基準額)と事業成果に応じたインセンティブ(成果報酬)により決定する。基準額とインセンティブ決定の考え方などは募集要項で確認できる。

協力金

種別 2025年度 2026年度 2027年度
基準額 最大1600万円 最大1600万円 最大1600万円
インセンティブ マイナス160万円~プラス400万円 マイナス160万円~プラス400万円
協力金 最大1600万円 最大2000万円 最大2000万円

申請受付は、2025年7月14日から9月19日まで。その後、審査・採択を経て、2025年11月から2027年2月まで事業を実施する。2028年2月頃には、最終成果報告が行われる。

【参考】
東京都―新規事業 都内の中小企業等を対象に「プログラム型プロジェクト」を運営する事業者を募集します!小規模な排出削減活動を取りまとめてカーボンクレジットを創出

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/9ee3b4e9-171b-4e5e-a4a7-980fd284e2ee

最新情報

最新情報
関連用語
関連動画
  1. ゴールドスタンダード、マングローブプロジェクト向けの革新的な方法論を発表

  2. 岩谷産業、カーボンオフセットカセットガスを3月から全国で販売開始

  3. 環境省、省エネ機器導入費用を助成 企業間連携でスコープ3削減へ

  4. 日本、10万トン以上のCO2を排出する全企業に排出量取引を義務化へ

  5. 北ガス、南富良野町の森林由来J-クレジット創出 環境価値の地産地消支援

  6. 環境省、行動変容でネイチャーポジティブ経済実現へ WGで公開討論

  7. 東京証券取引所、大企業による炭素クレジット取引の拡大を検討

  8. アスエネ、三井住友銀のGHG排出量見える化クラウドの事業承継・M&A完了

  9. 再エネで自給可能な市町村が2割超え、千葉大ら「電力永続地帯」報告

  10. ベトナムの炭素市場:グリーン成長を推進し、持続可能な投資を解放する

  11. LINEヤフーと田島山業、10年間の森林由来J-クレジット取引契約を締結

  12. 米国企業が再生可能エネルギーを強化、アマゾンが先頭に立つ

  1. 【FAEGER】未来の農業に挑む!脱炭素農業とカーボンクレジットの可能性!

  2. 脱炭素社会実現へ、公明がポイント還元制度など首相に提言

  3. カーボンクレジット市場の包括ガイド~基本概念から投資戦略まで~

  4. Verra(ヴェラ/ベラ)とは|用語集・意味

  5. グリーンエネルギー (Green Energy)|用語集・意味

  6. ゴールドスタンダード認証温室効果ガス削減プロジェクト(Gold Standard Voluntary Emission Reduction, GS VER)|用語集・意味

  7. カーボンオフセット (Carbon Offset)|用語集・意味

  8. カーボンフットプリントとは|用語集・意味

  9. ブルーカーボンとは|用語集・意味

  10. クリーン開発メカニズム (Clean Development Mechanism, CDM)|用語集・意味

  11. CCU(Carbon Dioxide Capture and Utilization)とは|用語集・意味

  12. 合成燃料(e-fuel)とは|用語集・意味

  1. 生物炭 (Biochar)|用語集・意味

  2. 脱炭素社会で「カーボンクレジット」が注目されています。

  3. Verra(ヴェラ/ベラ)とは|用語集・意味

  4. カーボンクレジット (Carbon Credit)|用語集・意味

  5. ボランタリークレジットマーケット(VCM)とは|用語集・意味

  6. クリーン開発メカニズム (Clean Development Mechanism, CDM)|用語集・意味

  7. カーボンニュートラルとは|用語集・意味

  8. ネットゼロ (Net Zero)|用語集・意味

  9. カーボンレジストリ (Carbon Registry)|用語集・意味

  10. 脱炭素への取り組みを評価する世界基準となる「ACT」=低炭素移行評価の導入を支援する企業が、福岡市に設立されました。

  11. 【財務省】新国債「GX経済移行債」の入札実施 世界初の政府による「移行債」

  12. 直接空気回収技術(DAC)とは|用語集・意味