新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は8月1日、事業化リスクは高いが社会課題の解決につながる革新的な技術を有するGX分野のディープテック・スタートアップの研究開発や事業化を支援する事業に関して、新たに4社を採択したと発表した。今回の採択による助成金の交付予定額は、4件の合計で約38.5億円となる。
採択3社の企業名を公表
NEDOは、現時点で採択条件などの調整が完了した採択者3社の企業名などを公表した。社名と事業内容の概要は以下の通り。
TopoLogic、省電力磁気メモリ技術の実用化を目指す
東京大学発スタートアップで、省電力化を実現する磁気メモリ技術「TL-RAM」の実用化を目指すTopoLogic(東京都文京区)は、「STSフェーズ(実用化研究開発(前期)」の枠組みで採択された。パートナーVCは、SBIインベストメント(同・港区)。
「TLーRAM」は、特殊な物理効果を発生させる新素材「トポロジカル物質」の特性を活用し、磁気メモリの省電力化を実現する技術をいう。次世代半導体の省電力化における革新的なソリューションとして、電力削減を通じて温暖化ガスの排出削減に寄与する。
この技術により、パソコンやスマートフォン、AIに不可欠なデータセンターのメモリ消費電力量を最大90%削減、さらに、データセンターのプロセッサーやメモリチップに使うことで、データセンター全体の消費電力量を約50%削減できると試算している。
3DC、次世代炭素材料「GMS」の量産工場を着工へ
東北大学発スタートアップで次世代電池の素材開発を手がける3DC(宮城県仙台市)は、「PCAフェーズ(実証化研究開発(後期)」で選ばれた。パートナーVCは、ANRI(東京都港区)。
3DCは、シリーズAラウンド 1stクローズと、今回の採択で、合計で24.5億円の資金を調達し、次世代炭素材料である「Graphene MesoSponge®(GMS)」の、世界初となる量産工場の着工を始める。このほか、調達した資金は、GMSの量産プロセスの確立のための各種研究開発や、供給体制の強化、研究開発人材の拡充と海外パートナーシップの深化に活用する。
GMSは主にリチウムイオン電池向けの機能性導電助剤として販売される予定。材料供給規模はリチウムイオン電池の容量換算でおよそ3GWhとなる。GMSはその優れた電子・イオン導電性、化学的・物理的耐久性、構造制御性などを活かし、機能性導電助剤としてリチウムイオン電池の性能を大幅に向上させる有効性が明らかになっている。潜在顧客からの需要が急速に高まりつつあり、同社の生産能力の拡張が喫緊の経営課題となっていた。
エレファンテック、低環境負荷プリント基板製造へ量産実証
エレファンテック(東京都中央区)は、「DMPフェーズ(量産化実証)」での選出となった。最大約23億円の助成を受ける。
同社は金属インクジェット印刷技術を用いたプリント基板の量産に成功しており、この事業では、低環境負荷プリント基板(PCB)「SustainaCircuits」製造ソリューションの供給体制に焦点を当て、実証研究を進める。具体的には、製造装置としてのインクジェット印刷装置と、原材料となるナノ銅インク・プライマーの量産開始に向けた量産実証を行うという。
プリント基板は、エレクトロニクス製品の製造工程において温室効果ガス排出量の大きな割合を占めており、業界全体で脱炭素化を推進する上で重要な課題とされている。同社は、この製造ソリューションをPCBの製造現場に広く提供することで、生産工程の効率化と業界の脱炭素化に貢献していく。
ディープテック分野のスタートアップエコシステムを創出
事業の名称は「GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業(GX事業)」。
「ディープテック・スタートアップ」は、革新的な技術の確立や事業化・社会実装までに長期の研究開発と大規模な資金を要し、日本だけでなく世界全体で対処すべき社会課題の解決につながる革新的な技術などを有する。
NEDOでは、同事業を通じて、民間などからの投資拡大を促し、ディープテック分野におけるスタートアップの革新的な技術の確立や事業化をつなげている。
【参考】
新エネルギー・産業技術総合開発機構―新たにディープテック分野のスタートアップ18社を採択しました
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/fee06a5c-4380-4150-98c9-9ffba67088e3