中国電力(広島県広島市)とエア・ウォーター(大阪府大阪市)は9月10日、中国電力グループのバイオマス混焼発電所から回収したCO2を、エア・ウォーターが利活用する取り組みについて共同検討を開始すると発表した。
回収したCO2を原料とした「液化炭酸ガス」と「ドライアイス」の製造を検討。将来的には、低炭素水素との合成によるe-メタン製造などについても検討する。
BECCS設備からのCO2を利活用
中国電力グループのエネルギア・パワー山口(山口県防府市)が運営する防府バイオマス発電所では、中国電力など4社が、CCS(CO2の回収・貯留)設備の導入に向けた設計・検討を進めている。これはバイオマスの燃焼により発生したCO2を回収・貯留し、大気中のCO2を削減するネガティブエミッション技術である「BECCS」の大規模な商用実装に向けた取り組みとなる。
今回の共同検討では、防府バイオマス発電所に導入するBECCS設備で回収したCO2の一部について、エア・ウォーターが液化炭酸ガスとドライアイス、さらにはe-メタンの製造などに利活用することを目指す。

BECCS設備からのCO2利活用のイメージ(出所:中国電力)
現在、液化炭酸ガスやドライアイスの大半は、化石燃料を使用する製油所や化学コンビナートなどで発生したCO2から製造されており、バイオマス燃料から発生したCO2を利活用することで、環境負荷のさらなる低減が期待できる。さらに、需給がひっ迫する液化炭酸ガス・ドライアイスの安定供給にもつながることから、カーボンリサイクル環境の醸成を通じて地域の発展に寄与する。
ネガティブエミッション実現へ
防府バイオマス発電所の定格出力は11.2万kW。使用する燃料は、約45%が石炭、残りの約55%がカーボンニュートラル燃料である木質系バイオマスを使用する。「BECCS」設備の導入では、同発電所で排出するCO2の80%に相当する約50万t-CO2/年を回収できる設備の設計を進めている。これにより、石炭由来のCO2に加え、バイオマスの燃焼によるCO2も回収・貯留することとなり、実質的にCO2排出量をマイナスにするネガティブエミッションが可能となる。
エア・ウォーター、低炭素水素製造拠点を新設
エア・ウォーターグループでは、多種多様な産業ガスやケミカル、医療、エネルギーなど様な事業を展開している。7月には、エア・ウォーターの子会社が合弁会社を設立し、千葉県茂原市に低炭素水素の製造拠点を建設することを発表した。千葉県産の天然ガスとクリーン電力(非化石証書を活用)を使用し、水素製造時に発生するCO2を回収することにより、低炭素水素製造を実現。水素エネルギー社会の実現に向けて増加が見込まれる水素需要に対応するとともに、水素を利用する顧客のCO2排出量削減に貢献する。また、回収したCO2はドライアイスの原料として活用する。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/1aed7f41-f847-4ddf-accc-9f0d1a7fbf36