日本自然保護協会(NACSーJ/東京都中央区)は4月23日、三重県尾鷲市ならびにパナソニックホールディングス(大阪府門真市)など民間8社と連携して、尾鷲市全域においてネイチャーポジティブを推進するためのコンソーシアムを発足したと発表した。今後、自然環境整備・環境負荷低減・教育の3つの柱を軸に活動していく。
3本柱でサステナブルシティを目指す
このコンソーシアムは、「地域と地球の生態系に資するゆたかな自然」「ゆたかな自然と人が共生する地域」及び「1次産業の担い手と移住者の増加」を軸とした尾鷲市ゼロカーボンシティ宣言並びにネイチャーポジティブ宣言における22世紀のサステナブルシティを目指して設立した。
今後、(1)自然環境整備(2)環境負荷低減(3)教育の3つの柱を軸に活動する。
具体的には、自然環境の整備では、尾鷲市全域の森林の評価(ゾーニング)と生物多様性の指標づくりといった基盤整備に加え、森林整備や藻場再生を推進する。
環境負荷の低減に向けては、再エネ・省エネの促進のほか、人と自然が共生するまちづくりのためのガイドラインづくりなどを推進する。
教育では、新しい一次産業の担い手向けの教育プログラムの設立や、気候変動を生き延びるための学び場の創立を目指していく。

今後の活動内容(出所:日本自然保護協会)
新たな気候変動問題解決プロジェクトにも着手
このコンソーシアムには、NACS-J、尾鷲市、パナソニックホールディングスのほか、三ッ輪ホールディングス(東京都新宿区)、paramita(同)、フードサービス事業を展開するFOOD & LIFE COMPANIES(大阪府吹田市)、ディップ(東京都港区)、サカイ引越センター(大阪府堺市)、日揮グループのコンサルティング会社の日本エヌ・ユー・エス(東京都新宿区)、八千代エンジニヤリング(東京都台東区)の10者が参加している。
paramitaは、三ッ輪ホールディングスらが地球規模の問題と地域課題を同時に解決する事業を行うため、2023年に設立した。尾鷲市では、2023年9月より、森林が持つ価値の可視化し、Jクレジットの創出に寄与する「Regenerative NFT」の販売を開始している。
コンソーシアム発足の背景
尾鷲市では、カーボンニュートラルを図りながら、第1次産業のフィールドにカーボンクレジットや生物多様性活動の推進など、企業などに対する新たな環境価値を見出し、新たな資金循環の仕組みを目指している。また、これら宣言に共感・賛同した企業・団体と連携し、取り組みを推進していくこととしている。
NACS-Jは、2024年11月30日・12月1日の2日間にわたり、尾鷲市と「尾鷲ネイチャーポジティブアクション会議」を共催した。これをきっかけに、協賛した7社、共催したparamita、尾鷲市と共にコンソーシアムを発足するに至った。
この会議では、1日目は実際に森林整備活動を体験することで生物多様性の森づくりの学びを深め、2日目は多様な参加者とのディスカッションを経て今後の具体的なアクション宣言を行った。また、この会議において、市長によるネイチャーポジティブ宣言が行われた。
市町村と企業向けに支援プログラムを展開
NACS-Jは、生物多様性の損失を止め、自然を回復させる「ネイチャーポジティブ」の実現に取り組んでいる。また、「ネイチャーポジティブは地域から始めるべき」だと提言している。
生物多様性は、地域の自然的・社会的条件によって異なるため、ネイチャーポジティブは、地域の生物多様性の特性と、保全のための行政施策の必要性の二つの側面から、地域(市町村)ごとに進めていくランドスケープアプローチが重要となる。
そこで、NACS-Jは、自治体と企業・市民等とのパートナーシップ構築を通じて市町村を基にしたネイチャーポジティブの実現を目指す「日本版ネイチャーポジティブアプローチ」を全国各地で進めている。この取り組みに参加を表明した市町村と企業向けに4つのステップで取り組みを支援する「ネイチャーポジティブ支援プログラム」を提供している。
なお、ランドスケープアプローチとは、一定の広がりのある地域において、土地・空間計画をベースに多様な人間活動と自然環境を総合的に取り扱い、課題解決を導き出す手法をいう。
【参考】
三重県尾鷲市―尾鷲ネイチャーポジティブアクション会議を開催しました
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/3aaf84e6-1410-4205-82a6-a94a983b42e0