商工組合中央金庫(商工中金/東京都中央区)は10月31日、「中小企業のカーボンニュートラルに関する意識調査」の結果を公表した。
カーボンニュートラルの影響を受けていると実感する企業は75.6%。過去調査と比較すると「好影響」を挙げる割合が増加している傾向が見られた。カーボンニュートラルの影響への方策と、生物多様性・自然資本保護への方策を実施・検討している企業は、どちらも4割超だった。
カーボンニュートラルの影響を75.6%が実感
今回の「中小企業のカーボンニュートラルに関する意識調査」は、「中小企業設備投資動向調査」の付帯調査として7月に実施したもの。カーボンニュートラルに関する項目のほか、生物多様性・自然資本保護についても取り組み状況を調査した。
カーボンニュートラルに関しては、「省エネルギー化」「電気自動車の普及」「化石燃料の削減」「環境税導入などエネルギーコスト増加」「消費者の環境負荷への配慮の高まり」「環境に配慮した投資や融資の進展」の計6つの想定事象を設定し、それぞれについて影響(好影響、悪影響、影響なし)を聞いた。
1つ以上の事象で影響がある(6つの想定事象のうち、1事象以上で、好影響・悪影響 いずれかの影響がある)と回答した割合は75.6%だった。

カーボンニュートラルに関する各想定事象の影響の有無(出所:商工組合中央金庫)
「好影響」の割合は増加、「悪影響」の割合は減少傾向
カーボンニュートラルに関する事象について、それぞれの影響を見ると、すべての項目で「悪影響がある」の割合が前回調査から減少し、「好影響がある」の割合は増加または横ばいとなった。

各想定事象への影響(出所:商工組合中央金庫)
カーボンニュートラルの影響への方策、「実施・検討」は44.1%
カーボンニュートラルの影響への方策について、15.3%が「すでに実施している」、28.8%が「検討している」と回答し、実施・検討を合わせると44.1%となった。
前回調査と比べて、「すでに実施している」の割合は減少し、「検討している」の割合は増加した。実施・検討の割合を合わせてみると、全体では前回調査から横ばいとなった。製造業では前進したが、非製造業ではやや後退した。

カーボンニュートラルの影響への方策の実施・検討状況(出所:商工組合中央金庫)
実施・検討する方策トップは「CO2排出量の測定」
実施・検討している具体的な方策についてみると、最も多かったのは「自社のCO2排出量の測定」(15.3%)、続いて「太陽光などの自家発電設備の導入」(14.8%)、「業務プロセスの改善を通じた省エネ」(14.8%)だった。「自社のCO2排出量の測定」は2023年7月の前回調査と比較しても大きく増加した。

実施・検討している具体的な方策(出所:商工組合中央金庫)
方策を実施する動機は「法制化」と「コストメリット」
方策を実施・検討している企業では、その動機として「企業イメージの向上」や「エネルギーコストの削減」の割合が高かった。一方、方策を実施も検討もしていない企業では、動機になり得るものとして「規制強化、法制化の動き」が最も高かった。それに続いて「補助金・税制の優遇」「エネルギーコストの削減」の割合も高く、コストメリットが重要視されていることが伺えた。

実施・検討の動機-方策の実施・検討状況別(出所:商工組合中央金庫)
実施・検討の課題トップは「規制やルールが決まっていない」
これまで実施・検討の課題の上位であった「規制やルールが決まっていない」「対応方法や他社の取り組み事例などに関する情報が乏しい」に関しては、徐々に解消が進んでいる様子が傾向が見られた。「対応コストが高い」「社内に対応に必要な人材がいない」「現有の設備では対応が難しい」「技術的に対応が難しい」といった割合が高まっている。

実施・検討の課題や実施しない理由-過去回答との比較(出所:商工組合中央金庫)
約45%が生物多様性・自然資本保護の方策を実施・検討
生物多様性・自然資本保護について、方策の実施・検討状況を聞いたところ、約45%の企業は何かしらの方策を実施・検討していると回答し、カーボンニュートラルへの対応状況に並ぶ4割超となった。実施・検討された方策として最も多かったのは「業務プロセスの改善を通じた環境負荷の低減」だった。

生物多様性・自然資本保護について実施・検討している方策(出所:商工組合中央金庫)
カーボンニュートラルと生物多様性・自然資本保護の対応に関連
カーボンニュートラルへの方策の実施・検討状況と合わせてみると、カーボンニュートラルへの対応が進んでいる企業ほど、生物多様性・自然資本保護についての対応も進んでいる。カーボンニュートラルへの方策は特段実施・検討していないが、生物多様性・自然資本保護については対応している企業も25.9%存在した。事業ごみの低減や未利用食材の付加価値付けなど、本業と関連した取り組みが見られた。

生物多様性・自然資本保護についての方策の実施・検討状況-カーボンニュートラルへの方策の対応状況別(出所:商工組合中央金庫)
「中小企業設備投資動向調査」は中小企業の国内設備投資動向を調べるため、夏・冬の2回に分けて実施している。対象企業は商工中金の取引先中小企業。7月の調査はウェブサイトで実施し、4139社から回答を得た。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/92cc7a49-1028-4e4e-8501-f84c19c89e19