八千代エンジニヤリング(東京都台東区)は4月24日、環境省が推進する「令和の里海づくり」において、藻場・干潟の保全・再生評価に貢献したことを明かした。環境省から「令和6年度閉鎖性海域における藻場・干潟のブルーカーボン機能把握調査業務」を請け負い、ブルーカーボンの算定方法を含む藻場・干潟の調査や評価方法の検討を実施。藻場・干潟の多面的な機能の調査・評価手法をまとめた「手引書」の作成を支援した。
ブルーカーボンの活用に向けた課題
近年、国内外において、藻場・干潟を含む沿岸・海洋生態系に貯蓄されるカーボン(ブルーカーボン)機能への期待が高まっている。国内では、温室効果ガス排出・吸収量への算入や、ブルーカーボンを定量化してクレジット化する「Jブルークレジット制度」など、その活用に向けた情報発信や制度整備が進められている。
一方、ブルーカーボン機能の評価方法が高度に専門的であることや、ブルーカーボンの活用方法や効果が不透明であることなどから、活動資金や人的資源に余力のない活動団体にとって、ブルーカーボンは活用しづらい状況にある。そこで、この事業では、活動団体が藻場・干潟のブルーカーボン機能を効率的に調査・評価できるような手法を検証し、その評価結果の活用方法や効果を提示することを目的として、モデル的な海域を対象とした現地調査と検討を実施した。
4つのモデル海域で現地調査、調査・評価方法を検討
八千代エンジニヤリングは、藻場・干潟などのブルーカーボン生態系の保全・創出によるCO2吸収源対策や、ブルーカーボンオフセットクレジットの算定・創出などを通じた、地域課題の解決、地域活性化の支援などを行っている。たとえば、3月、複合型マリーナリゾート「横浜ベイサイドマリーナ」(神奈川県横浜市)において、ワカメを育成、ブルーカーボン創出プロジェクトを開始することを発表している。
今回の事業における同社の支援内容は以下の通り。
- 現地調査の実施とブルーカーボンの算出ブルーカーボン量の算出と藻場・干潟が有する多面的な価値などを評価することを目的に、4つのモデル海域(大阪府岸和田沖、兵庫県相生湾、山口県椹野川河口、愛媛県八幡浜沖)で、UAV(無人航空機)や水中ドローン、潜水などによる調査を実施した。
- ブルーカーボン機能の活用方法と効果の検討藻場・干潟の保全活動におけるさまざまな課題を解決する方法を検討することを目的に、Jブルークレジット制度や、自然共生サイトといった認定制度への調査・評価結果の活用やその留意点など、藻場・干潟の多面的な価値の活用方法について情報収集・整理を行った。
- 調査・評価方法の検証モデル地域の調査結果と評価の活用方法の検討結果を基に、地域の活動団体が無理なく効率的に調査ができるか、また、活用効果が最大化されているかという観点から、調査項目やプロセス、ブルーカーボンの算出方法などについて検証した。
- ワーキンググループの開催学識経験者を含むワーキンググループを開催し、モデル海域での調査結果を踏まえて、藻場・干潟の調査・評価方法の改善に向けた検討と、手引きの内容を検討した。
- 手引き書の作成ブルーカーボンの算定方法を含む藻場・干潟の調査・評価方法の手引きとなる「令和の里海づくりに向けた藻場・干潟の保全・再生の評価の手引き」の作成を支援した。

「令和の里海づくりに向けた藻場・干潟の保全・再生の評価の手引き」(出所:八千代エンジニヤリング)
「30by30」目標達成やブルーカーボンで注目
藻場・干潟は、生物の生息・生育の場として、「30by30」目標の達成に向けたOECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)としての登録や、「自然共生サイト」への認定でも注目されている。また、前述の通り、藻場・干潟のブルーカーボン機能への期待も高まっている。
こうした中、環境省は、沿岸域の豊かな自然と人の暮らしがともにある「里海」の考え方を取り入れた藻場・干潟の保全・再生・創出と、地域資源の利活用の好循環、多様な主体との連携を通じた「令和の里海づくり」を推進している。八千代エンジニヤリングは、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(東京都港区)との連携業務も含め、2021年よりこの活動を支援している。
【参考】
環境省-「ブルーカーボンを活用!令和の里海づくりに向けた藻場・干潟の保全・再生の評価の手引き」の公表について
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/4033962b-30c6-436a-84c9-c9ef780b49f2