日本製鉄(東京都千代田区)は12月20日、水素による高炉でのCO2削減技術、いわゆる「高炉水素還元」に関して、試験炉において世界初となるCO2削減40%超(実績値43%)を記録し、試験炉での開発目標を前倒しで達成したと発表した。
高炉内の熱バランスを改善し、水素利用を効率化
同社は現在、「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を掲げ、国の支援の下、3つの超革新的技術の開発を進めている。「高炉水素還元」はその一つで、高炉での鉄鉱石の還元を石炭の代わりに水素を用いることで、CO2排出を削減する技術だ。
同社は2022年5月から、東日本製鉄所君津地区の水素還元試験炉(内容積12m2)で、加熱した水素を使用してCO2を削減する技術(Super COURSE50技術)の試験を実施。2022年には22%、2023年には33%のCO2削減を確認するなど、これまでの世界最高水準を毎年更新している。
今回の試験では、水素還元を増やす際に、加熱した水素利用時の高炉内の熱バランスを改善することで、これまで課題とされてきた還元反応の進行の遅さを克服し、最高水準をさらに更新した。
同社によると、世界には現在、約800基の高炉(日本国内は20基)があり、各国高炉メーカーは高炉の脱炭素化技術開発で凌ぎを削っているという。今回のCO2削減43%という実績は、国内外で開示されている実績値を大きく上回る成果であり、同社が脱炭素技術開発において世界のトップランナーであることを示すものだ、としている。
今後は、CO2排出量50%以上の削減に向けて、取り組みを加速させていく。
日本製鉄が取り組む、3つの超革新的技術
同社は、「高炉水素還元」のほか、以下2つの超革新的技術の開発・実機化に取り組んでいる。
- 水素による還元鉄製造:直接還元炉での水素による還元により固体還元鉄を製造する技術
- 大型電炉での高級鋼製造:電炉の生産性向上と合わせ、現状、直接還元鉄・鉄スクラップ原料では製造できない高級鋼を製造する技術