木材製品のCO2排出量を供給網で可視化へ 岐阜県白川流域の木材関連事業者

東濃ひのき製品流通協同組合(岐阜県白川町)は4月30日、「白川ローカルサプライチェーン(白川LSC)」を構築する木材関連事業者と連携し、岐阜県白川流域における木材生産全体のCO2排出量を可視化する取り組みを開始すると発表した。木材の含水率や曲げ強度を測定し表示する「性能表示」に、CO2排出量と固定量を明記する「環境性能」を加えることで、地球環境に配慮した素材としての木材利用を推進していく。

木材の安定需給と持続可能な林・木材業の確立を目指す「白川LSC」

白川LSCは、白川流域の木材の安定需給と持続可能な林業、木材業の確立を目指して、川上・川中・川下の木材関連事業者が協定を締結し、2021年に、岐阜県内初のサプライチェーンとして構築された。

締結以降、樹種・規格・品質・量・価格・期間の取り決めをして木材の流通を行う需給調整会議や情報交換を3カ月に1回行っている。

白川LSCは、これまでも木材の含水率や曲げ強度を測定し表示する「性能表示」に取り組んできたが、CO2排出量と固定量を明記する「環境性能」を加えることで、安心安全で地球環境にも優しい素材として木材利用を推進していく。

白川LSCシステム(出所:東濃ひのき製品流通協同組合)

白川LSCシステム(出所:東濃ひのき製品流通協同組合)

「e-dash」のCO2排出量の可視化・削減サービスを活用

今回、白川LSCではe-dash(東京都港区)が提供するCO2排出量の可視化・削減サービスプラットフォームである「e-dash」を利用してサプライチェーン全体のCO2排出量を算出する。

以前はCO2排出量をモニタリングするのには多くの費用と手間がかかっていたため、小規模零細企業には導入することが困難だった。しかし現在は比較的安価にモニタリングできるサービスが誕生してきたことで、それを活用してCO2排出量を明記することが可能となった。

「e-dash」では、電気やガスなどのエネルギーの請求書をアップロードするだけで、事業を通じたCO2排出量(スコープ1・2)を自動で簡単に算出するなど、計算の手間を削減しながら正確なデータを蓄積できる仕組みとなっている。サプライチェーン排出量(スコープ3)についても、ソフトウェア上で手軽に算出・可視化が可能である。

白川流域産材でCO<sub>2</sub>排出量を算定する場合の業種内訳(出所:東濃ひのき製品流通協同組合)

白川流域産材でCO2排出量を算定する場合の業種内訳(出所:東濃ひのき製品流通協同組合)

納品書などにCO2排出量を明記

今後、白川LSCに参画する事業者は納品書などに、それに至るまでのCO2排出量を明記する。明記に関しては各社開始時期が異なる。また、将来的な取り組みとして以下の展望を持っている。

  • 白川LSCへの参画事業者を増やし、環境性能を明記することを標準化していく。
  • 1社ごとのCO2排出量の精度を向上させるとともに、サプライチェーン全体で排出量削減を行う。
  • 環境貢献に取り組む企業などとの連携を模索する。
  • 環境貢献に寄与したいと考える消費者(企業含む)に適切な木材製品を届ける。
  • 第三者による認定など、取り組みのスキームを補完する。

「木材は環境に良い」は本当か?

東濃ひのき製品流通協同組合は、地域材をはじめとした岐阜県産の建築資材を生産・配送できる体制を整え、白川町周辺の木材流通の拠点を担っている。白川LSCに参画しており、同組合の代表理事が、今回のプロジェクトリーダーを務める。

今回のプロジェクトでは、白川LSCを構築する川上・川中の事業体と連携を取りながら、CO2排出量の把握に努めていく。CO2排出量から環境問題へのアプローチを白川LSCに賛同する川下事業体も含め実践していくこととしている。

取り組みに賛同する事業体

今回の取り組みには、川中・木材加工の東濃ひのき製品流通協同組合のほか、次の事業体が賛同している(2025年4月時点)。

(1)川上・素材生産/原木市場

  • 加子母森林組合(中津川市)
  • 東白川村森林組合(加茂郡東白川村)
  • 南ひだ森林組合(加茂郡白川町)
  • 東濃ヒノキ白川市場協同組合(加茂郡白川町)

(2)川中・製材

  • 東桧(加茂郡白川村)
  • 東白川製材協同組合(加茂郡東白川村)
  • 山共(加茂郡東白川村)

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/eceb4c44-9fc5-4aef-9a25-f01fb2a1c573

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