森ビル(東京都港区)は11月20日、管理・運営する都心部の物件に再エネ電力を供給するため、「蓄電池併設型太陽光発電所」3施設を栃木県と茨城県で開発したと発表した。2026年1月から順次運転を開始し、発電した再エネ電力は、東京電力エナジーパートナー(東京都中央区)のオフサイトコーポレートPPAを活用した供給プランを用いて、東京都港区の「虎ノ門ヒルズ森タワー」などの施設に供給する。
年間約1000万kWhの再エネ電力を都心部に供給
今回運転を開始する栃木県栃木市1施設と茨城県日立市2施設の合計発電容量は約7200kW、蓄電池容量は約1万1000kWhで、年間想定発電量は一般家庭約2500世帯に相当する約1000万kWhを見込んでいる。これは国内で運転中の蓄電池併設型太陽光発電所の中でも大規模なものとなる。
この森ビルが新設した太陽光発電所による再エネ電力は、東京電力エナジーパートナーのオフサイトコーポレートPPAにより、非化石証書とトラッキングによる実質再エネ電力を用いて、100%再エネ電力として、森ビルが運営・管理する都心の物件に供給される。

スキーム図(出所:森ビル)
電力系統への負荷増大と出力抑制の課題に対応
再エネの導入拡大を背景にした太陽光発電所や風力発電所の増加に伴い、電力系統(送電線)への負荷の増大と、出力抑制による再エネ電力の損失が課題となっている。蓄電池併設型太陽光発電は、出力抑制時の余剰電力を蓄電し、電力が求められる際に送電することができる。発電能力の有効活用、需要家のニーズに合わせた再エネ電力の供給、送電線の負荷の軽減を同時に実現する。
長期安定的な需給へ森ビルのアセットとして開発・所有
森ビルは、2022年5月に脱炭素化に向けた温室効果ガス排出量削減目標を設定した。以降、2025年3月末時点で国内需要の8割以上の再エネ電力への切り替えを完了するなど、目標達成に向けた取り組みを推進している。
森ビルグループでは、自ら使用する電力とテナントに供給する電力の再エネ化において、再エネ電力・環境価値を他社や市場から調達するだけでなく、一部森ビルのアセットとして開発・所有することで、長期安定的な需給の形を目指している。
2023年10月には、農業と太陽光発電を同時に行う「営農型太陽光発電所(メガソーラー)」の開発・運営を開始することを発表。茨城県筑西市を皮切りに「営農型太陽光発電所」3施設計5haの開発・運営を展開する。発電した電力はオフサイトPPAの形で同社が管理・運営する物件に供給され、太陽光パネルの下では営農が継続されている。
地域に貢献する発電所、栃木県栃木市とは防災協定を締結
今回開発した発電所の持つ災害時対応能力(電力系統が寸断された災害時、夜間や悪天候時においても安定的に電力を供給できる能力)を活かし、森ビルと栃木県栃木市は11月20日、「災害時等における太陽光発電設備等の活用に係る協定書」を締結した。
この協定に基づき、災害発生時や長期停電の際、森ビルは、発電所内に保管・充電された森ビル所有の災害用小型ポータブル蓄電池(約2kWh×10台)を栃木市に提供する。

栃木市との協定締結の様子(出所:森ビル)
また、茨城県日立市においては、発電所近隣の子どもたちを対象とした環境教育の実施を検討しているという。

「筑西市桑山営農型太陽光発電所」(出所:森ビル)
【参考】
栃木市―災害時等における太陽光発電設備等の活用に係る協定を締結
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/654046d6-2bbb-4dae-8235-c289ad190935