九州大学発のスタートアップ企業であるJCCL(福岡県福岡市)は6月5日、世界で初めて家庭用給湯器からCO2を回収し高濃度に濃縮する実証に成功したと発表した。この取り組みでは、同社が開発したCO2回収装置を活用した。
CO2濃度5.7%の排ガスから、99%まで濃縮したCO2を回収
使用した「VPSA1」は、「減圧蒸気スイング型CO2回収装置」と呼ばれるもので、地域に分散する小規模なCO2排出源から直接CO2を回収する。1日2キロ程度のCO2を97%以上に濃縮・回収できる。
同社は今回、福岡市が実施する研究開発型スタートアップ成長支援事業補助金の支援を受け、「VPSA1」を使って家庭用のガス焚き給湯器の排気ガス(CO2濃度5.7%)から実際にCO2を回収し、99%以上の高濃度まで濃縮する実証に成功した。

実証結果(出所:JCCL)
企業の事務所や家庭などから安全かつ低コストにCO2回収が可能に
同社によると、同装置を使用することで、学校や自治体、企業の事務所、家庭などのCO2排出源から安全かつ低コストにCO2を回収できるという。回収したCO2は純度が非常に高いため、ドライアイスや都市ガスなどへの転換も見込まれる。今後は、ガスヒートポンプや空調設備、ボイラー、自動車などさまざまな小型CO2排出源からの回収ニーズに対応していく考えだ。
なお同社は、科学技術振興機構(JST)・宇宙航空研究開発機構(JAXA)・福岡市の支援を得て、「VPSA1」とともに、CO2分離膜の性能を評価する装置「VSS1」も開発している。
小規模装置によるCO2回収は進んでいない
カーボンニュートラル社会の実現に向け、化石燃料の燃焼によって発生するCO2を分離回収する技術への注目度が高まっており、火力発電所や製鉄所など大規模なCO2排出源からCO2を回収するプロジェクト(CCS)が国内のさまざまな場所で実施されている。一方で、冷暖房装置や家庭用の湯沸かし器など小規模な燃焼装置からCO2を回収する装置はこれまで上市されていない。
現在は、燃焼装置から空気中に放出されたCO2を空気から回収するDAC技術の検討が進められているが、一度空気中に放出されたCO2は濃度が400ppmまで希釈されるため、回収にかかるコストの経済的負担が課題となっている。
【参考】
九州大学―九州大学×福岡市×株式会社JCCL CO2分離・回収のための装置及び材料の製品化に成功!
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/595701bc-362b-4582-8f91-1582e699fcd3