静岡県静岡市の農業生産法人「鈴生」と、東京都台東区のクミアイ化学工業は、9月2日、静岡県内の水田で中干し期間の延長を活用したカーボンクレジットの創出および売買を支援するプロジェクトを開始したと発表しました。この取り組みは、農業由来の温室効果ガス(GHG)排出量削減を目指すものです。
農業の持続可能性とカーボンクレジットの融合
水田における中干し期間延長は、GHG削減に効果があるとされていますが、収穫量の減少や品質低下といったリスクが農家に懸念されていました。鈴生とクミアイ化学は、このリスクを軽減しながら、中干し延長による持続可能な農業を普及させることを目指しています。
今回の取り組みでは、静岡県掛川市の水稲農家が、中干し期間を延長しつつも収穫量を維持し、美味しいお米の生産を継続できるよう、クミアイ化学が技術的な支援を行います。鈴生はこの技術を全国の農家に共有し、勉強会の開催やJ-クレジットの認証・販売を支援します。
地域内クレジット取引モデルの普及
このプロジェクトは、鈴生が設立した「顔が見えるクレジット協会」を通じて、信頼性の高いクレジットを地域企業が購入できる仕組みを構築します。これにより、地域で生まれたカーボンクレジットを地元企業が購入する「地産地消型のクレジット取引モデル」の普及・拡大を目指しています。
農林中金との連携と全国展開の可能性
この取り組みは農林中央金庫のコンサルティング支援を受け、J-クレジット制度を活用しています。8月22日に開催されたJ-クレジット制度認証委員会でプロジェクトが承認され、今後は全国の水稲農家や企業との連携を通じて取り組みの拡大を図る予定です。
水田の中干し延長による環境貢献
J-クレジット運営委員会は2023年3月に、水田の中干し期間延長によるメタン排出量削減の評価方法を策定。この方法に基づき、延長前と比較したGHG排出量の削減分をクレジット化することが可能となりました。中干し期間の延長は、土壌からのメタンガス排出量を抑える効果があり、持続可能な農業の実践に貢献します。
NTTコミュニケーションズやバイウィルなど、他企業もこの方法を取り入れ、カーボンクレジット創出に取り組んでおり、今後さらに普及が期待されています。
今回の鈴生とクミアイ化学の協力は、地域農業の持続可能性を向上させつつ、環境への配慮を高める重要なステップとなります。
【引用】
kankyo-business.jp. 鈴生とクミアイ化学、水田中干し延長によるカーボンクレジットを創出・売買