双日(東京都千代田区)、Carbon Xtract(同)、清水建設(同・中央区)の3社は10月17日、東京都の支援事業の採択を受けて、建物内などで、CO2を大気から直接回収し活用するシステムの都市実装に向けた実証を開始すると発表した。
小型・分散型システムでCO2を回収・利活用
Carbon Xtractが保有する、九州大学発のナノ分離膜を用いて空気中のCO2を直接回収するDAC技術「m-DAC®」は、大規模な設備を必要とせずに装置を小型化して分散して設置できることを特徴としている。今後、都市部のさまざまな場所に設置してCO2の回収に役立てられると期待されている。
今回の取り組みでは、2024年度から2028年度にわたって、東京都江東区にある清水建設のイノベーション拠点「温故創新の森NOVARE(ノヴァーレ)」に同システムを設置し、日常生活で排出されるCO2を回収してさまざまな用途に活用する実証実験を行う。
実証実験は、段階的に進めていく。まずは、回収したCO2を施設内に設置予定の植物栽培プラントで活用し、植物の光合成を促進することを計画している。さらに、その後、複数の事業での利活用を検討している。双日の広範な事業分野と企業ネットワークに基づいた新たなパートナーとの事業創出も含めて多様な可能性を検証していく予定。
将来的には、技術動向や社会ニーズなどを踏まえながら、都市部のさまざまな場所に「m-DAC」を設置してCO2を回収し、セメントやコンクリートへ固定化したり、炭酸水や炭酸シャワーの原料にしたりするなどのさまざまな方法で活用を進めていく。
3社はこの事業を通じて、小型・分散型のCO2回収システムを用いたネガティブエミッション技術を都市実装するとともに、回収したCO2を利活用することで炭素の循環利用が可能な都市づくりを目指す。
GX関連の新技術・サービスの社会実装を支援
3社による「分離膜を用いた分散的DAC技術の開発と都市実装」の取り組みは、東京都の「GX関連産業創出へ向けた早期社会実装化支援事業」に採択された。この支援事業は、CO2などの温室効果ガスの排出削減やクリーンなエネルギーを活用する経済・社会システムへの変革に資するGX関連の新たな技術やサービスの社会実装の支援を目的としている。
この支援事業は、このほか、東京ガス(東京都港区)による「AIを活用した熱源機器の最適制御」、NTTデータ(同・江東区)による「建物全体のエネルギー効率の最適制御」など、5つの事業が採択されている。
DAC技術で回収CO2の利活用の社会実装を目指すCarbon Xtract
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、大気中のCO2を回収・吸収し、貯留・固定化することで大気中のCO2を除去するネガティブエミッション技術の普及拡大が進められている。
Carbon Xtractは、「空の二酸化炭素」を「いつでもどこでも」、そして「誰でも」取り出せる、ガス分離膜を用いたDAC技術「m-DAC」と、回収したCO2の利活用技術の早期社会実装に向けた取り組みを推進している。
たとえば、Carbon Xtractは7月、西日本旅客鉄道(JR西日本/大阪府大阪市)、スパイスキューブ(大阪府大阪市)と、DAC技術を活用して、駅の空気中からCO2を回収し植物を栽培する実証事業を実施することを発表している。
なお、Carbon Xtractには、双日と九州大学、ナノメンブレン(福岡県福岡市)が出資している。ナノメンブレンは、理化学研究所での研究成果である巨大ナノ膜をベースとするエネルギーデバイス・高機能分離膜を開発している。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/2370bdb2-29cc-4797-bcc1-f5911d354509