サントリーら、熊本で水循環保全活動 地下水涵養価値のクレジット化も

サントリーホールディングス(大阪府大阪市)は2月27日、熊本県立大学、熊本大学、肥後銀行(熊本県熊本市)、日本政策投資銀行(DBJ/東京都千代田区)およびMS&ADインシュアランス グループ ホールディングス(同・中央区)とともに、産学金協働による「熊本ウォーターポジティブ・アクション」を始動したと発表した。

これまで地下水保全に取り組んできた実績に基づき、金融的手法を活用して、熊本地域でのグリーンインフラ導入による水循環保全メカニズムを推進する。

雨庭や緑をなど活用し、水循環の最適化を図る

今回の6者協業では、雨庭などのグリーンインフラを用いて、開発が進む地域における水循環の保全を図る。緑を活用した水循環の保全は、地下水の涵養とともに内水・外水氾濫の軽減、ヒートアイランド対策、景観の向上や生物多様性の向上など多面的な効果が期待できる。

また、自然クレジットの原則に基づき、グリーンインフラが持つ地下水涵養量などの価値をクレジット化する革新的な金融手法の研究開発を進める。金融手法を活用した官民連携の資金メカニズムにより、グリーンインフラのさらなる導入を目指す。

サントリーHDは、サントリー九州熊本工場を操業し、20年以上にわたり、サントリー 天然水の森や冬水田んぼの活動を通じて、熊本エリアの地下水保全に取り組んできた。近年は地下水シミュレーションモデルを活用した地下水量の将来予測の共同研究を、くまもと地下財団と共同で実施している。今回のアクションでは、これらに基づく経験やデータを基に、地下水保全効果の科学的検証を行う。

肥後銀行は現在、取引先へのグリーンインフラ導入提案を積極的に進めており、今後もこの活動を継続するとともに、同アクションと地域をつなぐ役割を担う。また、新たな資金調達手法の研究開発と地域への展開を図る。

そのほか各者の役割は以下の通り。

  • 熊本県立大学・熊本大学:地下水涵養をはじめ、地域に還元される多面的なインパクトの評価手法を開発する
  • DBJ:多様なステークホルダーとの接点を生かし、新たな資金調達手法の研究開発を進める
  • MS&ADHD:ネイチャーポジティブの国際的な枠組みを踏まえ同アクションを設計し、その成果を国際的に発信する

2013年に、国連「生命の水」で最優秀賞を受賞した熊本エリア

熊本エリアによる地下水の保全と活用に向けた取り組みは、世界的にも評価され、2013年には国連「生命の水」(水管理部門)最優秀賞を受賞した。一方で近年は、大規模な都市開発や工場進出に伴う田畑等の土地改変による地下水涵養量の減少や水災リスクの高まりなどが懸念されている。

こうした状況を受け、6者は熊本県・熊本市・公益財団法人くまもと地下水財団をオブザーバーに、2024年3月から検討を進めてきたが、活動の本格化として今回、同アクションを始動した。今後は、6組織だけでなく、多くの主体が参加できる仕組みを構築し、「水の国くまもと」のさらなる発展につなげるとしている。

【参考】
熊本大学―グリーンインフラ普及による「熊本ウォーターポジティブ・アクション」始動イベントを開催します

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/9f565214-1a69-4feb-aee2-763417c67f08

最新情報

最新情報
関連用語
関連動画
  1. 都、グリーン水素の市場取引開始 東京商品取引所と

  2. 「第5回脱炭素先行地域」発表、9件追加 地域資源活用など先進性を評価

  3. ニューフォレスト、オーストラリア・ニュージーランド基金のために3億7500万ドルを調達

  4. 東京ガスと関西電、ガーナで森林再生・クレジット創出 3T社のノウハウ活用

  5. 炭素除去クレジットを発行する最初のエタノール施設

  6. 住友商事 再エネ分野に1.5兆円規模の投資計画

  7. みずほとロンドン証券取引所グループが炭素クレジット市場の成長促進に向け提携

  8. カーボンクレジット品質評価が数十秒で完了 大阪ガスが新システム開発

  9. JCCL、世界初・家庭用給湯器からCO2回収 自社開発装置活用

  10. 東京ガスと東京都、カーボンニュートラル実現に向け連携協定を締結

  11. 環境省、ネイチャーポジティブ経済移行へ 2030年に向けた戦略マップ策定

  12. 環境省、カーボンフットプリント表示ガイド発行 他社比較表示NGなど

  1. パリ協定 (Paris Agreement)|用語集・意味

  2. グリーン成長戦略とは|用語集・意味

  3. カーボンフットプリント (Carbon Footprint)|用語集・意味

  4. クリーンエネルギー|用語集・意味

  5. 来月、閉鎖されるENEOSの和歌山製油所の跡地が、脱炭素社会のモデル地区として再整備されることになりました。

  6. コンプライアンス市場 (Compliance Carbon Market)|用語集・意味

  7. カーボンファイナンス (Carbon Finance)|用語集・意味

  8. 森林再生 (Afforestation/Reforestation, A/R)|用語集・意味

  9. 【財務省】新国債「GX経済移行債」の入札実施 世界初の政府による「移行債」

  10. 脱炭素への取り組みを評価する世界基準となる「ACT」=低炭素移行評価の導入を支援する企業が、福岡市に設立されました。

  11. 植林とは|用語集・意味

  12. ボランタリー市場(Voluntary Carbon Market, VCM)|用語集・意味

  1. 削減ポテンシャル (Reduction Potential)|用語集・意味

  2. 植林とは|用語集・意味

  3. 削減プロジェクト (Reduction Project)|用語集・意味

  4. REDD+(Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation)|用語集・意味

  5. Verra(ヴェラ/ベラ)とは|用語集・意味

  6. 脱炭素に向けて、二酸化炭素の排出量を売買できる「カーボン・クレジット市場」が11日、開設されました。

  7. 脱炭素社会実現へ、公明がポイント還元制度など首相に提言

  8. 天然ガスを原料に1日1.7トンの水素を製造可能 カーボンニュートラル実現に向けて製造プラントが完成

  9. 追加性 (Additionality)|用語集・意味

  10. 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)とは|用語集・意味

  11. 【政府】2040年に向け脱炭素化など国家戦略策定へ

  12. 生物炭 (Biochar)|用語集・意味