三菱重工業(東京都千代田区)は5月14日、関西電力(大阪府大阪市)の姫路第2発電所(兵庫県姫路市)に新設したCO2回収パイロットプラントが本格稼働開始したと発表した。
アミンなどの溶剤を用いて化学的にCO2を吸収液に吸収・分離する「液体アミン型CO2分離・回収システム」のパイロットプラントで、発電所のガスタービンからの排ガスを用いてCO2を回収する技術の研究開発を行う。回収能力は1日約5t 。
CCUS事業の競争力強化へ
三菱重工業は、1990年から関西電力と共同でCO2回収技術の研究開発に取り組んでいる。このプラントでは、三菱重工業が実施する実証試験に対して、関西電力は助言と試験設備の運転に必要となるエネルギーなどの供給を行う。
三菱重工業は、次世代に向けた革新的なCO2回収技術の実証を通じて、CCUS(CO2回収・有効利用・貯留)事業の競争力強化につなげていく。また、環境規制対策といった温室効果ガス排出削減にとどまらない多様な顧客ニーズに、より高度に対応していく。
エクソンモービルと開発中のCO2回収技術を実証
さらに三菱重工業は、2022年に米国エクソンモービル(ExxonMobil)と提携しており、エクソンモービルと共同開発中の次世代CO2回収技術を、このパイロットプラントで実証し、環境負荷低減とコスト削減に向けた研究開発を加速させる。さらに、三菱重工のデジタルイノベーションブランドである「ΣSynX(シグマシンクス) Supervision」の遠隔監視システムを実装する。
CO2回収技術は多種多様な分野で活用
両社は、1991年から南港発電所(大阪府大阪市)内に液体アミン型CO2分離・回収システムのパイロットスケール試験設備(2t-CO2/日 規模)を設置し、排ガス中のCO2を効率的に分離・回収するアミン吸収液やCO2回収プロセスを共同開発してきた。
また、両社は2024年1月、近年火力発電設備の主流になっている、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電方式に適応したCO2回収プロセスや、さらに高性能なCO2吸収液の開発を目指して、パイロットスケール試験設備(5t-CO2/日 規模)の設置することで合意、建設を進めてきた。
両社が共同開発したアミン吸収液の「KS-1TM」と、それを改良した「KS-21TM」は一般的なアミン吸収液と比べ、CO2の分離に必要なエネルギー消費量を大幅に抑えることができる。2025年5月現在、これらの技術を用いたプラントを18基納入しており、発電所や化学プラントなど、多種多様な分野で活用されている。

CO2回収プロセス(出所:関西電力)
CCUSバリューチェーンを構築へ
三菱重工グループは、2040年のカーボンニュートラル達成を宣言し、エネルギー需要側・供給側双方の脱炭素化に向け戦略的に取り組んでいる。このうちエネルギー供給側の脱炭素戦略である「エナジートランジション」における柱の一つとして、多種多様なCO2排出源と貯留・利活用をつなげるCCUSバリューチェーンの構築を掲げている。
独自のCO2回収技術を活用したCCUS事業を強力に推進するとともに、ソリューションプロバイダーとして温室効果ガス排出削減に地球規模で貢献し、環境保護に寄与するソリューションの開発をさらに進めていく考えだ。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/784e5922-ad1f-446d-8569-57c81bb7f26b