積水化学工業(東京都港区)と五洋建設(同・文京区)は8月18日、桟橋などのコンクリート構造物の劣化を防ぐ表面被覆シートを開発したと発表した。コンクリートの劣化防止とともに、シートがCO2を吸収する。
CO2吸収能力低下などの課題に対応
コンクリートは、CO2や塩化物イオン、水分、酵素などの浸入が原因で劣化する。建設業界では、これまで塗装による施工方法を採用していたが、桟橋下面に適用する場合、大規模な足場の設置や潮位による作業時間の制約、塗装後に一定の乾燥時間が必要になるなどの課題があった。また、環境面においては、コンクリートのCO2吸収能力が低下するという問題もある。
両社は今回、積水化学工業が有する粘着配合・塗工・シート加工に関する技術や、五洋建設の専門知識を組み合わせ、コンクリートの状態が見た目でわかるCO2吸収シートを開発した。
同シートは、耐候性フィルム・特殊粘着層・離型フィルムの3層で構成される。特殊粘着層は厚膜で柔軟な設計とした。これにより、粗面への接着性を高め、下地なしでも実用に耐え得る性能を発揮する。最外層には耐候性フィルムを配置することで、過酷な屋外環境でも長期間使用できる。

耐候性試験前後における外観比較(出所:積水化学工業)
CO2吸収効果は最長20年間継続
また、特殊粘着層には、被覆によるコンクリートのCO2吸収体としての機能低下を抑制するため、CO2吸収材を添加した。粘着層単位体積当たりの吸収量は、20時間余り経過時において、1m3当たり18~20キログラムであることを確認。これは、施工後10~20年程度にわたり吸収効果が継続できる能力だという。

被覆シート設置下におけるCO2濃度の変化(出所:積水化学工業)
2025年度中に、試験販売を開始
開発したシートは、五洋建設技術研究所内の守衛室の壁面に全面施工し、性能や施工性を確認した。今後は、土木・建築のコンクリート構造物に適用し、長寿命化を図る。2025年度中には、試験販売を開始する予定だ。

被覆シート有無での視認性比較(出所:積水化学工業)
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/224ee879-fa79-4306-a0be-310f053db571