「エネルギー白書2025」閣議決定 ペロブスカイト利用促進などに言及

政府は6月13日、国内外のカーボンニュートラル実現に向けた動向や施策をまとめた「エネルギー白書2025)を閣議決定した。この中では、ペロブスカイト太陽電池や合成燃料、水素などの次世代エネルギー利用拡大の重要性を指摘した。

近年話題のデータセンターへの対応、次世代エネルギーなどについても解説

今年度の白書は、エネルギーを取り巻く動向を踏まえた分析(第1部)、日本においてエネルギーに関して講じた施策集(第2部)で構成される。第1部では、「福島復興の進捗」「グリーントランスフォーメーション(GX)・2050年カーボンニュートラルの実現に向けた日本の取り組み」「主要10カ国・地域のカーボンニュートラル実現に向けた動向とその背景」の3つのテーマを取り上げ解説している。

国内データセンター開発加速へ

今後は、データセンターを含め、脱炭素電力などのクリーンエネルギーを利用した製品・サービスが付加価値を創出する時代の到来が予想され、需要家自らが脱炭素電力を利活用・確保する動きを加速化させることが求められる。国としては、AIを活用してDXを加速させ、経済成長と脱炭素を同時実現するため、電力需要や脱炭素電源の偏在性、リードタイムなどを考慮し、効率的な電力・通信インフラの整備を通じた電力と通信の効果的な連携(ワット・ビット連携)を推進していく。

次世代エネルギー革新技術

白書では、日本企業が有する次世代エネルギー革新技術として、「光電融合」「ペロブスカイト太陽電池」「浮体式洋上風力」「次世代地熱発電」「次世代革新炉」「水素・アンモニア・合成燃料・合成メタン)」などを挙げ、各技術の動向や今後の展望をまとめた。

「エネルギー白書2025概要」(出所:経済産業省)

「エネルギー白書2025概要」(出所:経済産業省)

DXやGXなどの進展に伴う電力需要増加への対応

世界のエネルギーを取り巻く環境は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵略以降、中東情勢の緊迫化、トランプ政権のパリ協定からの脱退表明など、大きく変化している。今後は、エネルギー安全保障の確保だけでなく、気候変動への現実的な対応やDXやGX進展に伴う電力需要増加への柔軟な対応が不可欠であると、指摘している。

「エネルギー白書2025概要」(出所:経済産業省)

「エネルギー白書2025概要」(出所:経済産業省)

世界全体のGHG排出量増加、過去最高の571億トンに

白書によると、世界全体におけるGHG排出量は増加傾向が続いている。国連環境計画(UNEP)の報告書によると、2023年の世界全体のGHG排出量はCO2換算で前年と比べて約1.3%増加し、過去最高水準となる571億トンに達したという。

世界各国は、2050年〜2070年代のカーボンニュートラル実現に向け取り組みを進めているが、その状況や取り組みの内容には違いがある。日本政府は、主要9カ国・地域(米国・EU・英国・韓国・カナダ・フランス・ドイツ・イタリア・中国)の取り組みを注視していく。

主要10カ国・地域のGHG削減の進捗状況。「エネルギー白書2025」より(出所:経済産業省)

主要10カ国・地域のGHG削減の進捗状況。「エネルギー白書2025」より(出所:経済産業省)

企業の次世代エネルギー革新技術の社会実装を国として後押し

日本は現在、「第7次エネルギー基本計画」に基づき、省エネ・非化石転換や脱炭素電源の拡大、系統整備に加え、次世代エネルギーの確保に向けて、幅広い分野での活用が期待される水素やアンモニア、合成燃料、合成メタンの社会実装を推進し、脱炭素化が困難な分野ではCCSなどを活用する方針を示している。また、エネルギー安定供給・経済成長・脱炭素を同時に実現して2050年カーボンニュートラル達成には、日本企業が有する次世代エネルギー革新技術をビジネスとして確立することが重要であるとしている。

【参考】
経済産業省―「令和6年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2025)が閣議決定されました

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/a8ab6756-05e2-46b1-b4e3-e8e5790a65a6

最新情報

最新情報
関連用語
関連動画
  1. 三菱ガス化学、大阪・関西万博で回収したCO2活用 CCUS実用化など検証

  2. アルヌール、山川町漁協、農林中金が牛のゲップ削減によるクレジット創出を目指すプロジェクトで連携

  3. 経産省、北海道でのGX推進体制を強化—再エネ開発に向けた新組織設立と地域連携を強化

  4. コーヒー粕で豆を焙煎、廃棄とCO2排出を解決する資源循環型焙煎所

  5. 出光興産、燃料輸送車にCO2オフセット燃料を初導入 スコープ3削減に焦点

  6. 愛知県内で「宙炭」活用へ TOWING とJA愛知信連が協定締結

  7. マイクロソフト、Grassroots Carbonから土壌カーボンクレジットを購入

  8. 大分県が脱炭素を目指す「グリーン・コンビナートおおいた」構想の展開

  9. YKK、長期目標もSBTiから認定取得 ネットゼロに向け加速

  10. 二国間クレジット制度(JCM)の構築に係る日・ウクライナ間の協力覚書に署名

  11. 融資でカーボンオフセット りそな銀行が取り扱い開始、大手銀行初

  12. JPモルガン、ESGレポート2023でカーボンクレジットの利用と投資拡大を強調 VCMの発展に寄与目指す

  1. ゴールドスタンダード認証温室効果ガス削減プロジェクト(Gold Standard Voluntary Emission Reduction, GS VER)|用語集・意味

  2. ボランタリークレジットマーケット(VCM)とは|用語集・意味

  3. 炭素証書 (Carbon Certificate)|用語集・意味

  4. 森林再生 (Afforestation/Reforestation, A/R)|用語集・意味

  5. 脱炭素に向けて、二酸化炭素の排出量を売買できる「カーボン・クレジット市場」が11日、開設されました。

  6. グリーン電力証書とは|用語集・意味

  7. 来月、閉鎖されるENEOSの和歌山製油所の跡地が、脱炭素社会のモデル地区として再整備されることになりました。

  8. CCU(Carbon Dioxide Capture and Utilization)とは|用語集・意味

  9. 直接空気回収技術(DAC)とは|用語集・意味

  10. キャップ・アンド・トレード (Cap-and-Trade)|用語集・意味

  11. ベースライン (Baseline)|用語集・意味

  12. カーボンニュートラルとは|用語集・意味

  1. パリ協定 (Paris Agreement)|用語集・意味

  2. 排出削減 (Emission Reduction)|用語集・意味

  3. カーボンフットプリントとは|用語集・意味

  4. 脱炭素に向けて、二酸化炭素の排出量を売買できる「カーボン・クレジット市場」が11日、開設されました。

  5. グリーン成長戦略とは|用語集・意味

  6. 再生可能エネルギー証書(REC)とは|用語集・意味

  7. 京都議定書|用語集・意味

  8. グリーン電力証書とは|用語集・意味

  9. 植林とは|用語集・意味

  10. 合成燃料(e-fuel)とは|用語集・意味

  11. カーボンファイナンス (Carbon Finance)|用語集・意味

  12. 【財務省】新国債「GX経済移行債」の入札実施 世界初の政府による「移行債」