「グリーンスローモビリティ」導入に補助金 地域の脱炭素化と課題解決へ

環境省は6月19日、グリーンスローモビリティの車両の導入を支援する補助金の公募を開始した。地域における交通の脱炭素化と、高齢者の移動手段の確保や観光振興など課題の同時解決を目指す。補助事業の対象者は、民間企業や地方公共団体、一般社団法人・一般財団法人など。募集期間は7月22日(17時必着)まで。

車両本体に300万円、充電設備、システム設備など1/2を補助

グリーンスローモビリティは、時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービスをいう。このモビリティは、環境への負荷が少なく、運転が簡易で高齢者も運転しやすく、軽量・コンパクトで狭い路地も通行可能なため、今まで公共交通機関を整備できなかった地域の足になることも期待されている。

この事業の補助対象設備は、グリーンスローモビリティの車両、充電設備、サービス構築に必要なシステム・設備など。補助率は1/2。ただし、車両本体の購入に係る補助金交付額は1台当たり300万円を上限とする。補助事業の実施期間は、原則として2年度以内。

審査に当たっては、グリーンスローモビリティの車両の充電において再生可能エネルギー由来の電力を使用するものについては、その電力使用率に応じた加点を行う。加えて、再エネ由来電力の全量を自己保有、PPA、リース契約により設置した太陽光発電設備などからの自家消費により調達する場合は、さらに加点を行う。また、2050年のカーボンニュートラル達成を目標として設定している場合、内容に応じて加点を行う。

グリーンスローモビリティ導入促進事業

事業名は、2025年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(地域の公共交通×脱炭素化移行促進事業)のうち、グリーンスローモビリティ導入促進事業。執行団体は、地域循環共生社会連携協会。事業の詳細は、公募要領を確認のこと。補助対象設備や補助事業期間などの概要は以下の通り。

補助対象設備

必要最低限で、この事業にのみ利用する設備で実用段階にあるものに限る。

補助対象設備 要件・適用
グリーンスローモビリティの車両 補助事業の対象とするグリーンスローモビリティの車 両の要件を満たしたものとして執行団体が登録・公開している車両。
エンクロージャー、レインガード、レインカバーなど 雨や風をしのぐことができるもの。
充電設備 コンセントと配電盤の改修などを含む(車両とセットで導入する場合に限る)
脱炭素型地域交通モデル構築に必要なシステム・設備 たとえば、オンデマンドサービスを行うための呼出・予約システム、運行状況把握・表示システム、乗降場などの整備に係る設備、有償運送事業に係る計器類、安全運行確保のために必要なもの。

執行団体が登録・公開している車両のサプライヤーは以下の通り。

  • タジマモーターコーポレーション
  • エナジーシステムサービスジャパン
  • シンクトゥギャザー
  • モビリティワークス

補助対象車両の例(モビリティワークス(左上)、エナジーシステムサービスジャパン(右上)、タジマモーターコーポレーション(下)/出所:地域循環共生社会連携協会)

補助対象車両の例(モビリティワークス(左上)、エナジーシステムサービスジャパン(右上)、タジマモーターコーポレーション(下)/出所:地域循環共生社会連携協会)

補助事業期間

原則として2年度以内。ただし、応募時に年度ごとの事業経費を明確に区分した経費内訳書と実施計画書が提出されることを前提とする。この場合、補助金の交付申請などは、年度ごとに行う必要がある。また、2025年度事業については、交付決定日から2026年2月28日までに完了する必要がある。

主な補助事業の要件

補助事業の主な要件は以下の通り。

  • エネルギー起源CO2の排出の削減効果が定量的に示されており、かつ算出根拠が明確かつ妥当性が認められること
  • 地域交通の脱炭素化だけでなく地域交通の維持・確保、高齢化対策、観光振興などの他の地域課題を同時解決する事業であること
  • 走行経路に公道が含まれること など

公募説明会動画を公開

公募全般に対する問い合わせは、原則、電子メールにて、7月15日17時まで受け付ける。
公募説明会は開催しない。執行団体が公募説明動画をウェブサイトにて公開している。

先行事例と手引きについて

環境省のウェブサイトでは、グリーンスローモビリティ導入の先行事例集を公開している。たとえば、宮城県石巻市は、東日本大震災の防災集団移転地として整備された地区に、グリーンスローモビリティを導入し、地域コミュニティの再生に取り組んでいる。

また、国土交通省は、グリーンスローモビリティの特長、活用方策、導入に向けた流れなどをまとめた「グリーンスローモビリティの導入と活用のための手引き」を公表している。

【参考】
環境省―令和7年度グリーンスローモビリティ導入促進事業の公募について

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/185b8510-9596-4496-bc14-b49c23c8edfb

最新情報

最新情報
関連用語
関連動画
  1. 東京海上アセットマネジメントとサステナクラフト、生物多様性クレジット創出の共同研究を開始

  2. SOMPO系、企業のGHG算定でインボイス社と連携

  3. 花王とキリン、拠点間輸送で協業 トラック300台と15%CO2削減へ

  4. 新たなアバタブル報告書、自主的な炭素市場に数十億ドルが流入していることを明らかに

  5. 大阪府、カーボンニュートラル技術の実装化を支援する拠点開設 全国初

  6. サントリーHD、水素利活用本格化 グリーン水素の製造・販売体制整備

  7. COP29: 炭素市場が最終承認を得る

  8. グリーンカーボン、カンボジアで水田由来カーボンクレジット創出へ

  9. アスエネ、台湾の交通IC会社と脱炭素経営で提携 利用者の通勤データ活用

  10. 環境省、ネイチャーポジティブ情報へのアクセスを容易に ポータルサイト公開

  11. NTT系、宇都宮市の公共施設にオンサイトPPA導入 CO2年間89t削減

  12. 京都府、「非化石証書」共同購入事業を継続 安価・簡易に環境価値調達を支援

  1. 生物炭 (Biochar)|用語集・意味

  2. 温室効果ガス (Greenhouse Gas, GHG)|用語集・意味

  3. 脱炭素社会で「カーボンクレジット」が注目されています。

  4. 【気候変動と脱炭素ビジネス①】日本人が知らない環境危機と地球に配慮したクリーンなビジネスとは?

  5. カーボンリムーバル(Carbon Removal)|用語集・意味

  6. 脱炭素への取り組みを評価する世界基準となる「ACT」=低炭素移行評価の導入を支援する企業が、福岡市に設立されました。

  7. バイオマスとは|用語集・意味

  8. ボランタリー市場(Voluntary Carbon Market, VCM)|用語集・意味

  9. ゴールドスタンダード認証温室効果ガス削減プロジェクト(Gold Standard Voluntary Emission Reduction, GS VER)|用語集・意味

  10. 再生可能エネルギー証書 (Renewable Energy Certificate, REC)|用語集・意味

  11. 温室効果ガスとは|用語集・意味

  12. カーボンクレジット市場の包括ガイド~基本概念から投資戦略まで~

  1. CCUSとは(Carbon Capture Utilization and Storage)二酸化炭素回収・利用・貯留|用語集・意味

  2. パリ協定 (Paris Agreement)|用語集・意味

  3. キャップ・アンド・トレード (Cap-and-Trade)|用語集・意味

  4. カーボンリムーバル(Carbon Removal)|用語集・意味

  5. 脱炭素社会で「カーボンクレジット」が注目されています。

  6. 地球温暖化防止 (Climate Mitigation)|用語集・意味

  7. ボランタリークレジットとは|用語集・意味

  8. “現代のゴールドラッシュ”とも言われる動きを取材しました。また、日本では、空気中の二酸化炭素を取り除く技術の開発が始まっています。

  9. 【FAEGER】未来の農業に挑む!脱炭素農業とカーボンクレジットの可能性!

  10. 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)とは|用語集・意味

  11. 直接空気回収技術(DAC)とは|用語集・意味

  12. カーボンプライシング (Carbon Pricing)|用語集・意味