コーヒー粕で豆を焙煎、廃棄とCO2排出を解決する資源循環型焙煎所

Ergana Design(東京都中央区)は5月13日、カフェショップ「COVE COFFEE ROASTERS」(同・品川区)と共同で、コーヒー粕を100%再利用してコーヒー豆を焙煎する、資源循環型コーヒー焙煎所「ATARAO」を設立し、焙煎事業を開始したと発表した。

ATARAOでは、近隣カフェから回収したコーヒーかすを接着剤など使用せずに固形化させ、独自に開発した焙煎機の燃料として活用する。

コーヒー粕の廃棄問題と焙煎時のCO2排出を同時解決

小規模のコーヒー焙煎所(年間1t焙煎)で、都市ガスを使用する焙煎機を用いた場合、焙煎時のガスの燃焼によって約1tのCO2を排出する。今回設立したATARAOのシステムでは、従来廃棄されていたコーヒーかすを燃料として活用することで、焙煎時に排出される年間約1tのCO2を削減(杉の木92本分のCO2吸収効果に相当)する。

コーヒー粕は、カーボンニュートラルの特性をもち、コーヒーの木が育つ上でCO2を吸収しており、燃焼時に排出するCO2は実質的なゼロとみなされる。また、1tの豆焙煎時に500kg以上のコーヒーかすを再利用できる。

深刻化するコーヒー粕の廃棄問題に対する実効性の高いソリューションとして、また、カーボンオフセットの実践例として、コーヒー業界全体の持続可能性向上とカーボンニュートラルに向けた取り組みとして期待される。

(出所:Ergana Design)

(出所:Ergana Design)

6段階の資源循環システムを実現

ATARAOの焙煎事業の特徴は以下の通り。

  • コーヒー粕100%燃料による焙煎という革新的手法
  • 再生型農業で栽培された高品質コーヒー豆の厳選使用
  • 焙煎方法による独自の風味プロファイル開発
  • 循環型の製造プロセスによる環境負荷の最小化

具体的には、以下の6段階のシステムを構築し、資源循環型コーヒー焙煎を実現した。

  1. 固形化技術
    コーヒー粕を接着剤不使用で固形化。水分低減と容積圧縮により保管・輸送効率を大幅に向上させる。
  2. 高効率燃焼システム
    固形化したコーヒー粕を高効率で燃焼させる焙煎機を独自に開発し、効率的に燃焼が継続する環境を構築。近隣カフェから回収したコーヒー粕を燃料とすることで、エネルギーの地産地消を実現する。
  3. 持続的焙煎プロセス
    従来の主流であるガス焙煎から脱却し、固形化したコーヒー粕を熱源とした焙煎ノウハウを開発。独自の風味プロファイルを生み出すとともに、環境負荷を最小化する。
  4. クローズドループシステム
    コーヒーかすの排出から再利用するまでの間に、コーヒー粕が他産業に流出することがなく、自己完結できるため、長距離輸送等で無駄なエネルギーを使用することなく継続性のある再利用を実現した。
  5. 無添加プロセス設計
    固形化の際に接着剤などの添加物を一切使用しないため、燃焼後の灰にも不純物が含まれず、二次利用の幅が広がる。
  6. 副産物の有効活用
    焙煎後に発生する灰は土壌改良剤や病虫害予防材料、陶芸用釉薬原料として再利用。廃棄物ゼロの循環を実現する。

パートナーシップを拡大、循環型モデルを構築へ

ATARAOでは、今後、資源循環型焙煎によるスペシャルティコーヒー豆の販売(小売・卸売)、出張コーヒー・出張焙煎サービス、コーヒー粕100%で作られたコーヒーブロックの販売(小売・卸売)を順次展開していく。

また、コーヒー専門店や企業オフィス、ホテル・レストラン・イベント会社などとのパートナーシップを拡大し、コーヒー粕の回収・再資源化ネットワークを構築し、焙煎所を増やすことによってコーヒー粕の廃棄量削減と未利用資源の利活用を促進する。

この革新的な循環型モデルの認知度を向上させ、「コーヒー粕=ごみ」という既成概念を刷新し、環境負荷の低減とコーヒー文化の新たな可能性を同時に追求していく。

新製品開発支援を手掛けるErgana Design

今回、ATARAOを設立したErgana Designは、デザイン提案や3Dデータ作成など新製品開発支援事業を手がける。また、未利用資源アップサイクル事業として、資源循環型コーヒー焙煎所「ATARAO」に取り組む。COVE COFFEE ROASTERSは、スペシャルティコーヒーを提供するカフェで、荏原町店と旗の台店の2店舗を展開している。

コーヒー産業が直面する環境課題の解決に挑戦

Ergana Designによると、世界では年間約900万t、日本国内では約40万tのコーヒー豆が輸入され消費する一方で、抽出後のコーヒー粕は大量に廃棄されている。コーヒー粕は一部で飼料や肥料として再利用されているものの、その量はごくわずかで、大部分は廃棄処分されている。

コーヒー粕のリサイクルが広まらない主な要因として、廃棄量に見合ったリサイクル方法の欠如(用途が限定的)、水分を多く含みカビやすいため保管が困難(保管リスク)、容積が大きく重量もあるため、収集・運搬コストが高い(運搬回収のコスト高)の3つをあげている。

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/5315ac23-4487-4c9c-b179-1589f89761fc

最新情報

最新情報
関連用語
関連動画
  1. 微生物の生存性改変で土壌からのGHG排出削減へ 基盤技術確立 NTTなど

  2. Carbon EXとベトナム最大手のIT企業のFPT が、Carbon EXを通じたカーボンクレジットの供給・販売に向けたパートナーシップに関する覚書を締結

  3. 神宮球場でのプロ野球ナイター戦でCO2排出実質ゼロを実現 ヤクルト本社

  4. 総合資源エネルギー調査会と産業構造審議会、CCS事業のビジネスモデルと支援制度の具体化に向けた中間取りまとめを発表

  5. Biocharfunding.com: バイオ炭スタートアップとシード資金を結びつける新しいプラットフォーム

  6. 改正温対法に基づくJCM指定実施機関、申請意向で調査開始 環境省など

  7. THEMIX GreenとGreen Carbon、カーボンクレジット共同創出で業務提携

  8. アルボニクスとツリーブラ、スウェーデンの森林所有者に300億ドルの炭素収入をもたらすことを目指す

  9. ヤマトHD、再エネ供給の新会社設立 事業者の脱炭素化支援を強化

  10. 三井物産ら国内4社、米Heirloom社に出資 DAC技術開発に強み

  11. NEDO、GX分野ディープテック・スタートアップ4社に約38.5億円支援

  12. 製鉄所排出のCO2からグリシン製造 日本製鉄・レゾナックなど4者

  1. 森林再生 (Afforestation/Reforestation, A/R)|用語集・意味

  2. 再生可能エネルギーとは|用語集・意味

  3. ボランタリークレジットマーケット(VCM)とは|用語集・意味

  4. 炭素予算 (Carbon Budget)|用語集・意味

  5. カーボンプライシング (Carbon Pricing)|用語集・意味

  6. CCUSとは(Carbon Capture Utilization and Storage)二酸化炭素回収・利用・貯留|用語集・意味

  7. J-クレジット (Japan Credit)|用語集・意味

  8. 【気候変動と脱炭素ビジネス①】日本人が知らない環境危機と地球に配慮したクリーンなビジネスとは?

  9. グリーントランスフォーメーション(GX)|用語集・意味

  10. クリーンエネルギー|用語集・意味

  11. 炭素隔離 (Carbon Sequestration)|用語集・意味

  12. 合成燃料(e-fuel)とは|用語集・意味

  1. ICE グローバル・カーボン・インデックスとは(Global Carbon Index)

  2. コンプライアンス市場 (Compliance Carbon Market)|用語集・意味

  3. 炭素市場インフラ (Carbon Market Infrastructure)|用語集・意味

  4. グリーントランスフォーメーション(GX)とは|用語集・意味

  5. ゴールドスタンダード認証温室効果ガス削減プロジェクト(Gold Standard Voluntary Emission Reduction, GS VER)|用語集・意味

  6. 天然ガスを原料に1日1.7トンの水素を製造可能 カーボンニュートラル実現に向けて製造プラントが完成

  7. グリーン電力証書とは|用語集・意味

  8. 京都議定書|用語集・意味

  9. グリーン成長戦略とは|用語集・意味

  10. カーボンレジストリ (Carbon Registry)|用語集・意味

  11. 炭素隔離 (Carbon Sequestration)|用語集・意味

  12. ボランタリー市場(Voluntary Carbon Market, VCM)|用語集・意味