BASFジャパン(東京都中央区)は7月9日、ドイツのBASFと中国の肥料メーカー・雲南雲天化股份(雲天化/雲南省)とが協業し、安定化尿素肥料の使用による温室効果ガス排出削減の検証と登録に成功したと発表した。BASFのウレアーゼ阻害剤「Limus®」と雲天化の安定化尿素肥料を混合した肥料を試験的に導入したところ、未処理肥料と比較してCO2換算で約4万6584tの排出量を削減したという。
肥料の尿素を安定化し、農業の経済的損失や収量低下を防ぐ
ウレアーゼ阻害剤は、尿素を加水分解してアンモニアと二酸化炭素を生成する酵素であるウレアーゼの活性を阻害し、アンモニアの過剰な発生を抑えることができる。
一方、尿素肥料に含まれる窒素の約15%は、アンモニアとして大気中に放出され、大気質や生物多様性に悪影響を及ぼすとされている。また、窒素は一酸化二窒素として温室効果ガスとなり、大気中に放出されるため、環境への悪影響だけでなく、作物が最も必要とする時期に利用可能な窒素が減少することで、農業者は経済的損失や収量・品質の低下といった影響も受ける。
今回、両社の協業による検証で、尿素肥料にウレアーゼ阻害剤を使用することで尿素が安定化し、未処理の標準肥料に比べてアンモニアと一酸化二窒素の放出が抑制されることが実証された。
監査機関が国際規格に基づき検証
この結果は、BASFがカーボンマネジメントとサステナビリティのリーディングカンパニーFirst Climate社と連携し、中国でモニタリングを行い、独立した監査機関が国際規格ISO 14064に基づき検証したもの。公開データベース「GHG CleanProjects® Registry」に登録された。
各社のコメント
BASFは、「雲天化と共に、排出削減を検証するこの気候変動に配慮した農業(クライメート・スマート・アグリカルチャー)の取り組みが実行可能であること、そして気候変動の中で農業が果たすべき重要な役割を証明した」とし、現在、第2回目のモニタリングが進行中であり、フードバリューチェーンのパートナーへの展開に向けた土台を作っていることを公表。
雲天化では、気候変動に配慮した農業の取り組みの一環として、農業者、流通業者、小売業者向けに現地で実証試験を実施し、安定化尿素肥料の利点を紹介している。「BASFとの気候変動に配慮した農業の取り組みを継続することで、農業の近代化と持続可能な農業に向けた革新的な解決策を追求する」とコメントした。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/c5566cda-8d15-4ab0-b56d-a0c4d08cfd98