東京都は8月5日、都内の自然資源を活用し、CO2を吸収・除去することで生まれるカーボンクレジットの創出に向けた実証事業を行うスタートアップ支援事業について、3社を決定し公表した。都は3社に対して、最大4000万円の経費負担と、事業プロモーター(事務局)による伴走支援を行う。今後3社は、2026年12月まで、それぞれの実証事業を行う。
海藻・地下水・バイオ炭によるCO2長期固定を支援
採択が決定したのは、、BLUABLE(兵庫県宝塚市)、ステラーグリーン(東京都中央区)、TOWING(愛知県名古屋市)。
BLUABLEは、海藻を深海へ沈降させCO2を長期固定する、深海ブルーカーボンによるクレジット創出に、ステラーグリーンは、森林が蓄積する地下水の可視化を通じたクレジットの高付加価値化に、高機能バイオ炭によるカーボンクレジットを活用した農作物の高付加価値化などに取り組む。
3社の具体的な取り組みは以下の通り。
BLUABLE、海藻を深海へ沈降させCO2を長期固定
BLUABLEは、東京都島しょ海域にて、「海藻を深海へ沈降させ、CO2を長期固定する」新たなブルーカーボン技術の社会実装に向けた実証事業を開始する。
同社は、富士通(神奈川県川崎市)の事業の一部を独立させ(カーブアウト)設立されたスタートアップ企業で、ブルーカーボン創出において課題となる藻場造成コストや、炭素吸収量の計測コストを大幅に削減する技術開発を行っている。
これまで、独自に開発する「藻場創生キット」を用いた安価で再現性の高い藻場創生手法の研究・開発に取り組んできた。今回の実証事業は、増殖した海藻を成長後に分解させず深海に沈設することで、炭素を100年以上固定するという新しいアプローチなる。ブルーカーボン創出量の大幅な拡大を目指し、海藻の沈設による炭素固定量、生態系への影響の評価とブルーカーボンクレジットの創出を実証する。
東京都の島しょ地域は、大陸棚が狭く、沿岸からすぐに深海に到達できるという地理的特性を持つ。そのため、移動時間も少ないことから効率的で優位なCO2除去技術の確立できると見込んでいる。
ステラグリーン、地下水の可視化で森林クレジットを高付加価値化
ステラーグリーン(東京都中央区)は、森林カーボンクレジットの生成から販売まで、多角的にサポートする成功報酬型のワンストップサービスを提供している。今回の実証事業では、衛星データの活用・AI補正による森林クレジットの創出コストの削減と工数短縮を実証するとともに、森林が蓄積する地下水の可視化を通じたクレジットの高付加価値化を実証する。
TOWING、環境再生農業によるクレジットで農作物を高付加価値化
TOWINGは名古屋大学発のスタートアップで、通常畑で3〜5年かかる土づくりをわずか約1カ月で可能にする、高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」を開発・販売する。「宙炭」の普及によって、農地への炭素貯留や化学肥料の削減・有機転換を含むリジェネラティブ(環境再生)農業の実現・拡大に取り組んでいる。
実証事業では、「宙炭」の農地への施用による栽培効果の確認と、カーボンクレジット活用による農作物の高付加価値化・販売単価向上を実証するとともに、消費者向けの環境価値の効果的な訴求・販売方法を実証する。
農林水産分野でのカーボンクレジット創出を支援
事業名は「吸収・除去系カーボンクレジット創出促進事業」。農林水産分野でのCO2の吸収・除去に関する優れたアイデアや技術などを有するスタートアップを公募・選定し、都内での吸収・除去系カーボンクレジットの創出に向けた実証事業に対し、経費負担などの支援を行うもの。
事業の実施期間は2025年度~2026年度(2カ年事業)。2027年2月に最終報告会を開催する。

事業スキーム図(出所:東京都)
【参考】
東京都―「吸収・除去系カーボンクレジット創出促進事業」 実証事業に取り組むスタートアップを決定しました!
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/67235d43-eb5d-4d5f-ae40-e94dcd633989