富士経済(東京都中央区)は12月17日、2050年のカーボンニュートラル実現に向け導入が進んでいる農業、水産業、畜産業におけるカーボンクレジット市場の動向調査の結果を発表した。生産者にも取り組みやすい「水稲栽培における中干し期間の延長」の活用は、今後も拡大が見込まれ、2030年には50億円に拡大する見通しだ。
カーボンクレジット参入企業118社などに調査
同社がまとめた「農業・水産業・畜産業におけるカーボンクレジット市場のトレンドと創出・取引拡大に向けた取り組み実態調査」は2024年10月~11月、カーボンクレジット市場に参入した農水畜産業関係の企業118社(農業21社、水産業93社、畜産業4社)やその他の関連企業を対象にヒアリングや文献などに基づく調査を実施した。
2024年の市場は1億円 2030年は50倍に拡大
その結果、2024年時点の農水畜産分野におけるカーボンクレジット市場(見込み)は約1億円だった。2025年には10億円近くに拡大し、2027年には40億円規模、2030年には現在の50倍に相当する50億円規模に達すると予測している。
農業、水稲栽培の中干し期間延長が有望
農業では「バイオ炭の農地施用」と「水稲栽培における中干し期間の延長」に関するクレジットが目立つ。特に水稲栽培の中干し期間延長は生産者に取り組みやすい内容で、現在のカーボンクレジット取引額の5割弱を占める。今後も拡大が期待できる有望市場という。
CO2吸収率高いブルーカーボン、今後の伸び期待
水産業はワカメやコンブ、アマモなどの海中に生息する植物や海藻によってCO2を吸収する「ブルーカーボン」のクレジットが取引される。ブルーカーボンは取引価格が高いものの、CO2の吸収率が高く長期間CO2を貯留できることから、今後の大幅な伸びが期待できる市場という。
畜産業は家畜排せつ物管理方法の変更に関するクレジットがあるものの、まだ市場規模が小さい。今後はアミノ酸バランス改善飼料の給餌などの拡大が見込まれる。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/1b764a53-5449-4470-ae36-708333efe9d5