日本電気(NEC/東京都港区)は7月4日、八千代エンジニヤリング(同・台東区)と、インドネシアで適応ファイナンス領域における防災対策の適応価値算出に関する調査業務を開始すると発表した。テクノロジーを応用した適応ファイナンス事業の実証とそのビジネスモデルを検証することで、グローバルでの気候変動の影響低減を目指す。
対象エリアが採用した防災対策の効果を検証する
この取り組みは、国土交通省が推進する「日ASEAN相互協力による海外スマートシティ支援策『Smart JAMP』」に採択されたことを受けて実施するもの。
現地パートナーのSinar Mas Land (シナルマスランド社)と共同で、同社がジャカルタ郊外で開発する6000ヘクタールの都市「BSDシティ」を対象に、適応ファイナンス領域において、洪水リスクに対する防災対策(適応策)の適応価値(適応策導入前後の予測被害額差分)を可視化するソリューションのフィジビリティスタディ(FS)を行う。
具体的には、事業化課題の抽出やビジネスモデルと収支計画、事業化スケジュールを検討するとともに、すでにBSDシティに導入されている「スマート洪水システム」を適応策とし、対象域内の氾濫解析や洪水シミュレーション、被害額シミュレーションを実施し、適応価値を算出する。期間は、2025年6月から2026年3月まで。
同FS調査において、NECは、ビジネスモデルの検討として、被害額シミュレーションや適応価値算出、適応価値の見える化に加え、事業化スケジュールを検討する。八千代エンジニヤリングは、業務報告書作成や事業化課題・収支計画の検討などを担当する。

プロジェクトのスキーム(出所:日本電気)
注目が集まりつつある「適応ファイナンス」
NECによると、気候変動の影響の予測は不確実性が高く、適応策の効果を実感するまで長時間を要することから、適応策への資金が不足するケースがあり、災害の物理リスクや財務影響、適応策の効果を定量的に評価し、投資家や企業に情報提供することで投資を促す「適応ファイナンス」が広まりつつあるという。
NECは2019年に、共同建設コンサルタント(東京都品川区)および京都大学防災研究所と、リアルタイムで全国各地の氾濫予測を行うシステムを開発した。2023年には「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)」で、適応ファイナンスのアイデアを提示し、適応策への民間資金の流入と、適応策の効果を考慮した金融商品の共創・提供を目指したユースケース構築を呼びかけ、翌2024年3月には自然環境の保全に資するマネジメントプロセスの体系化と透明化を目的に、三井住友海上火災保険(東京都千代田区)と「適応ファイナンスコンソーシアム」を設立した。
八千代エンジニヤリングは1976年から、インドネシアにおいて、独立行政法人国際協力機構(JICA)やアジア開発銀行(ADB)、インドネシア政府機関との連携を通じて、広範囲にわたる顧客のためのコンサルティングや関連するサービスを提供している。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/3f5f1cd8-cecd-410f-94f0-a8c4f1bdd238