バイオ炭の2030年国内市場は138億円に、J-クレジット活用で伸長予測

富士経済(東京都中央区)は9月25日、農業分野のカーボンクレジットビジネスや、J-クレジット制度の方法論「バイオ炭の農地施用」により新たな用途でも注目度が高まるバイオ炭などの国内市場について調査した結果を発表した。

この調査サポートでは、農業分野のカーボンクレジットビジネスの2024年見込は1億円で、2030年は15億円となると予測する。ベンチャーに加え大手企業の展開進む方法論「水稲栽培における中干し期間の延長」を軸に需要が増加すると予想する。

また、現状は環境意識の高い先進的な生産者による取り組みが中心であるが、今後は農産物生産・販売以外での収益向上を目的とした生産者の取り組みも増えるとみている。2026年度のGXリーグの排出量取引制度「GX-ETS」の本格稼働も追い風となる。

2024年見込みは26億円のバイオ炭市場

注目市場のバイオ炭については、2024年見込は26億円(2023年比4%増)で、2030年は2023年比5.5倍の138億円になると予測する。土地改良材としての需要の増加に加えて、J-クレジットの「バイオ炭の農地施用」での活用で伸長すると見ている。

バイオ炭は、木や竹など生物由来の資源(バイオマス)を高温加熱した炭化物をいう。バイオ炭は、農地へ施用すると炭素が土壌中に貯留するとともに、土壌の透水性、保水性、通気性の改善などに効果があると言われ、土壌改良資材として使用されてきた。また、2020年に、J-クレジット制度において、「バイオ炭の農地施用」に関する方法論が策定され、農地にバイオ炭を施用し、難分解性の炭素を土壌に貯留する活動による炭素貯留量をクレジットとして認証できるようになった。

「水稲栽培による中干し期間の延長」は2023年に、J-クレジット制度において新たな方法論として承認された。水稲の栽培期間中に水田の水を抜いて田面を乾かす「中干し」の実施期間を従来よりも延長することにより、土壌からのメタンガス排出量を抑制する活動を対象としている。

農業分野のカーボンクレジットビジネス
2024年見込 2023年比 2030年予測 2023年比
バイオ炭施用 僅少 3億円
中干し期間延長 1億円 12億円
合計 1億円 15億円

同調査では、農業分野のカーボンクレジットビジネスとして、経済産業省・環境省・農林水産省による「J-クレジット」における「バイオ炭の農地施用」と「水稲栽培における中干し期間の延長」の方法論で創出された取引金額を対象としている。

バイオ炭の農地施用

バイオ炭施用は、2022年6月に日本クルベジ協会のプロジェクトが初めてクレジット認証を取得し、その後もいくつかの認証取得が進んでいる。しかし、バイオ炭のコストなどにより、クレジット販売価格が他の吸収系J-クレジットに比べ高額なため、実際の取引量は限定的である。現状は高額なクレジット販売価格がネックとなっているが、バイオ炭のコストダウン、土壌改良につながる点や、地域の未利用バイオマスの有効活用がクレジット創出につながる点を訴求することにより、取引量は徐々に増えるとみている。

2024年見込 2023年比 2030年予測 2023年比
バイオ炭 26億円 104.0% 138億円 5.5倍

J-クレジットでの実績は現状ではまだ小さいものの、今後は拡大が期待される。また、「宙炭」(TOWING)のような微生物や有機肥料を付加した高機能バイオ炭の登場により、土壌改良資材としても改めて注目されている。農林水産省の「みどりの食料システム戦略」で掲げられる化学肥料の削減や有機農業の推進、木材残渣やもみ殻など未利用バイオマスの有効利用につながることも追い風となり活用が増えるため、中長期的には大幅な市場拡大が予想される。

稲栽培における中干し期間の延長

中干し期間延長は、2024年初頭にGreen Carbonやフェイガー、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズが初めてクレジット認証を取得し、以降もクボタや三菱商事など複数社で取得が続いている。ベンチャー企業から大手企業まで認証を受けており、付加価値の高い 「自然系クレジット」として今後の市場活性化が期待される。

農業・水産養殖関連の注目市場を調査

今回の調査では、カーボンクレジットビジネスやバイオ炭のほか、、サスティナブルな養殖システムとして期待される循環式陸上養殖システムなど、注目の農業関連20品目、水産養殖関連12品目の国内市場について、現状を捉え、今後の動向を予想している。

人工光型植物工場や養液栽培プラントなどの施設/プラント、また、それらを構成する制御・管理装置などの施設園芸構成機器/システム市場は、建設や運営コストの高騰により設備投資に消極的な事業者も多かったことから、2023年は縮小となった。しかし、農業従事者の高齢化や離農による就農人口の減少などが進む中、栽培施設の集約化や企業による農業参入に伴う大規模栽培施設の増加が期待されるため、2024年以降は市場回復に向かうとみている。

生物農薬やバイオスティミュラント、下水汚泥肥料、バイオ炭、農業分野のカーボンクレジットビジネスなどの環境配慮型資材/ビジネスは、生産者や消費者の環境配慮・脱炭素化やSDGsへの社会的意識が徐々に高まっている。農林水産省が推進する「みどりの食料システム戦略」などの追い風も受け、堅調な伸びが予想されている。

2024年見込 2023年比 2030年予測 2023年比
施設/プラント 377億円 105.3% 485億円 135.5%
施設園芸構成機器/システム 81億円 103.8% 120億円 153.8%
スマート化関連機器/システム 201億円 113.6% 539億円 3.0倍
環境配慮型資材/ビジネス 613億円 102.8% 742億円 124.5%
合 計 1,271億円 105.0% 1,885億円 155.8%

注目農業関連20品目の国内市場

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/709972eb-a68f-4c9a-8cdf-c417d02ca0e3

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