日本製紙(東京都千代田区)は1月21日、石巻工場(宮城県石巻市)における温室効果ガス(GHG)排出量の大幅削減によるバイオマス製品競争力強化事業が、GX経済移行債を活用した経済産業省による支援事業に採択されたと発表した。投資規模は555億円で、うち政府支援上限額は183億円。2028年度第4四半期の稼働開始を目指す。
石炭からバイオマス燃料に燃料転換
石巻工場では、木材から化学パルプを製造する時に副生される黒液(バイオマス燃料)を「黒液回収ボイラー」で燃焼し、エネルギーとして利用しているが、紙の乾燥には多量の蒸気を必要とするため、石炭ボイラーも使用している。今回、この支援事業を活用した投資によって、高効率な黒液回収ボイラーを設置して石炭ボイラー1台を停機し、石炭から黒液に燃料を転換することで、GHG排出量を大幅に削減する。
投資規模555億円のうち政府支援上限額は183億円。高効率黒液回収ボイラーの蒸発量は375~390t/hで、蒸気タービン・発電機の発電量は56~58MW。これにより、GHG排出量が79万4千t-CO2eから29万4千t-CO2eになり、50万t-CO2eを削減する。これは、同社の製品製造に関わるScope1・Scope2排出量の10%に相当する。
燃料転換投資を機に既存紙製品のグリーン化を推進
また、すでに石巻工場には、国内最大規模の木質パルプを原料としたセルロースナノファイバーの製造設備を設置しているが、今回の燃料転換投資を契機にグリーン製品の製造拠点として、既存紙製品のグリーン化を積極的に進めるとともに、バイオリファイナリー事業の拡大を目指していく。
具体的には、新しいバイオマス素材だけでなく、既存製品である紙、家庭紙においても、さらなるライフサイクルGHG排出量(LC-GHG)の低減や、最終製品メーカーであるブランドオーナーと協働でLC-GHGの「見える化」を実行する。グリーン製品をBtoB、BtoCの両面において訴求し、市場獲得に積極的に取り組んでいく。
現在、様々な市場で機能、品質に加え、LC-GHGの少ない製品・サービスが求められている。大王製紙もブランドオーナーとの共同開発や新規顧客開拓における重要な評価軸として、LC-GHGを採用し、その低減に取り組んでいる。
新規事業での売上高650億円達成に向けた柱へ
石巻工場での成果を他の国内工場や海外拠点にも展開することで、国際競争力を強化し、今後のグリーン製品市場における確固たる地位を築き、2030ビジョンで掲げる新規事業での売上高650億円達成に向けた柱の1つとしていく。
経済産業省による支援事業名は、「排出削減が困難な産業におけるエネルギー・製造プロセス転換支援事業(事業II(化学・紙パルプ・セメント等))」。なお、事業I(鉄鋼)では、JFEスチール(東京都千代田区)の「革新電炉へのプロセス転換」が採択されている。
「バイオリファイナリー構想」で事業構造を転換へ
日本製紙は、木材を原材料とした化学パルプから紙・板紙などの生活必需品を社会に提供している。同社は、2030ビジョンにおいて、エネルギー事業分野を除く製品製造に関わるGHG排出量について、2013年度比54%削減を掲げ、燃料転換、省エネルギー、生産体制再編成の推進などによるGHG排出量削減に取り組んでいる。
また、2050年カーボンニュートラルに向けて、脱炭素と経済成長を同時実現するために、化学パルプから新たなバイオマス素材を生み出す「バイオリファイナリー構想」を掲げ、事業構造転換を進めている。

(出所:日本製紙)
幅広い分野でバイオマス素材を供給、さらに強化
大王製紙では、すでに幅広い分野で木材由来のバイオマス素材を供給している。レーヨンなどの原料である溶解パルプ、食品添加物や車載用リチウムイオンバッテリー部材に使用される機能性セルロース、コンクリート用混和剤、飼料・有機質肥料に使用される高蛋白質含有のトルラ酵母など、食品、化粧品、土木など各種工業用原料分野でのバイオマス素材の売上高は約200億円に達している。
これらに加え、バイオエタノール、セルロースナノファイバー、バイオコンポジットなど、新しいバイオマス素材の開発・事業化を進めていく。
このうち、セルロースナノファイバーについては、国内2か所の製造拠点を設置し、サンプルワークを進めてきたことで販売量は着実に増加している。海外市場においても、衛生材料、化粧品分野での販売を開始しており、国内外でバイオリファイナリー構想の実現を進めている。
また持続可能な航空燃料(SAF)や自動車燃料、グリーンケミカル原料として需要拡大が見込まれるバイオエタノールについては、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「バイオものづくり革命推進事業」の実施予定先として採択されており、製造技術を確立した上で、事業環境を見極めながら年産数万KLでのスケール化を目指している。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/9821a00e-2867-4a6c-9e87-2b2b796d1ff3